大井競馬場のほぼ真上に羽田新ルートが設定されている。
飛行騒音は人間だけでなく、馬にも影響を与えるのか……。
※投稿19年8月17日(更新23年11月5日)
大井競馬場の馬に耳栓!?
大井競馬場の上を羽田新ルートが通過する旨のツイートが流れてきた。
#大井競馬場 上空はモロに着陸ルートだったような…
しかも、パチンコ屋の騒音レベル。
人間と異なり、馬に耳栓はない。
飛行騒音は人間だけでなく、馬にも影響を与えるのかと思って、調べてみたら、世の中には馬用の耳栓なるものも売られていることが分かった。たとえば、輸入馬具専門店が取り扱っている馬用耳栓は2つで税込み3,240円。
ただし、日本ではパドックや返し馬で耳栓を装着することはできるが、レースでの装着は認められていないらしい。その代わり、競走馬で大きな音を嫌う馬は、「めんこ」(馬の顔を覆っている目出し帽のようなもの)のなかでも耳まで覆うタイプを装着している。
ちなみに、ディープインパクは、耳を覆う「めんこ」どころか、「めんこ」そのものを装着せずに、歓声を力に変えていたという。
それでは、羽田新ルートが大井競馬場に及ぼす騒音の影響を確認してみよう。
大井競馬場の騒音レベルは80dBを超える
南風時A滑走路着陸ルートが大井競馬場のほぼ真上を通過する。
国交省のデータによれば、飛行高度は大井競馬場付近では、240mから150mに降下するとされている。
国交省が公開している「FAQ冊子v5.1.2」P51によれば、高度1,000ft(305m)の着陸時の大型機(B777-300)の騒音レベルは80dBとされている。305mよりも低い高度の騒音レベルは公開されていない。大井競馬場を通過する大型機は80dBをはるかに超える騒音をまき散らすことになるのである。
そもそもJRA日本中央競馬会は、観戦ルールとして、騒音を発生させる器具の持ち込みやみだりに騒音を出す行為を禁止しているのだが、飛行騒音とどう折り合いをつけるのか。
構内へのお持込をお断りしているもの
- 騒音を発生させる器具(ホイッスル・拡声器・楽器等)
観戦時にお断りしている行為
- みだりに騒音を出す行為
競走馬への影響
大井競馬場のレース時間帯は、第1レース14:45から始まって、最終レースが20:50(レースと日程 | 東京シティ競馬)。だから、羽田新ルート(南風時A滑走路着陸ルート)の運用時間帯(15時から19時うち3時間)がレース時間帯にほぼスッポリ入る。
競走馬は、ファンファーレや大歓声に晒されているから、旅客機から降り注ぐ大騒音など問題ないかといえば、そうではないようだ。
馬は環境に順応性のある動物ではあるが、騒音の影響は無視できないことを示す文献がある。
長期化する騒音や環境の変化は馬にとって慣れつつも、ストレスの増加による様々な障害を引き起こす要因となりうる。
音曝露(90~100phon)によりウマの心拍数は著しく増加した。
また、競走馬を対象とはしていないが、農林省が2023年7月26日に制定した「馬の飼養管理に関する技術的な指針」(PDF:1.4MB)では、厩舎においては、絶え間ない騒音や突然の騒音を避けるようことを推奨している。
騒音
馬は、音に敏感な動物であり、過度な騒音は、摂食量の減少や馬が驚くことによる事故を招くおそれがある。また、馬が不安や恐怖を感じ、休息や睡眠が正常にとれずに、ストレス状態に陥る可能性がある。
【実施が推奨される事項】
換気扇を始めとする厩舎内外の設備等は、可能な限り騒音を小さくするよう、設置及び維持・運用する。
絶え間ない騒音や突然の騒音を避ける。(P18-19)
農林省が2011年3月に策定した「アニマルウェルフェアの考え方に対応した馬の飼養管理指針」(←リンク切れ。23年11月5日現在)では、厩舎においては、絶え間ない騒音や突然の騒音を避けるよう努力義務を課していた。
騒音
馬は、音に敏感な動物であり、過度な騒音は、摂食量の減少や馬が驚くことにより生じる事故を招くおそれがおる。また、馬が不安や恐怖を感じ、休息や睡眠が正常に取れずに、ストレス状態に陥る可能性がある。
そのため、厩舎内の設備等による騒音は、可能な限り小さくするとともに、絶え間ない騒音や突然の騒音は避けるよう努める。
羽田新ルートの運用が開始され、国は「努力義務」から「推奨」にトーンダウンさせたのか……。
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