羽田新ルート周辺の住民はどの程度の航空機騒音の影響を受けるのか。そんな基本的な情報さえ、国交省はこれまでまともに提供してこなかった。
数百万人単位の区民が騒音や不動産価値への影響を受ける可能性があるのだが、残念ながら、このような絶望的な未来を伝えているマスメディアは皆無……。
国交省の騒音データ、一般人には理解不能!?
羽田新ルート周辺の住民はどの程度の航空機騒音の影響を受けるのか。そんな基本的な情報さえ、国交省はこれまでまともに提供してこなかった。
国交省が運営しているサイト「羽田空港のこれから」にはFAQ冊子が掲載されているのだが、当初のFAQ冊子v4.1には、高度別・機種別の騒音データ表しか掲載されていなかった(次図)。
これではどう読み解けばいいのか、一般の人にはほとんど理解不能だろう。
その後18年12月にバージョンアップされたFAQ冊子v5.0(最新版はv5.1.1)で、ようやく飛行高度別の騒音グラフが掲載されるようになった(次図)。
ただ、これでもまだ一般の人には分かりにくい、というかあえて分からないようにしているとしか思えない。
筆者なりに、上図をもう少し分かりやすく1枚にまとめたのが次のグラフだ。
羽田新ルート直下から500mの範囲の騒音レベルは、高度600mでも70dBを超えていることが分かるだろか。70dBといえば、幹線道路周辺(昼間)のレベル。羽田新ルート直下から1km離れてもまだ68dB(高度600m)と高い。
ではどのくらい離れれば安心できるのか?
残念ながら、国交省のグラフは1,500mまでしかないのである。
国交省の騒音データを可視化してみると…
そこで、国交省が公開している高度別・機種別騒音データをもとに、筆者が独自に試算し、大型機(777-300)の騒音影響を可視化したのが次のグラフ。
飛行高度(地域)によって違いはあるものの、羽田新ルート直下から1km離れたくらいでは騒音の影響からは逃れないことが分かるだろうか。
もし、資産価値への影響を排除したいということであれば、少なくとも2kmは離れておきたいところだ。
では、2km離れるとは、どういうことなのか?
騒音の影響範囲を地図に落としてみると…
筆者の独自調査によれば、23区のうち羽田新ルート直下から水平距離500m範囲の人口は約109万人。23区の総人口927万人(15年国勢調査)の12%が騒音の影響を受ける可能性が高い。
影響を受ける人口割合が大きいのは渋谷区54%(12万人)と中野区53%(18万人)。次いで、品川区31%(12万人)、港区30%(7万人)、板橋区30%(17万人)、練馬区30%(21万人)。
南風時(年間4割)15~19時のうち3時間、「A滑走路到着ルート(下図の青線)」は1時間当たり14回(4分17秒ごと)、「C滑走路到着ルート(下図の橙線)」は1時間当たり30回(2分ごと)の頻度で上空から騒音が降り注ぐ。
(※破線は悪天時のルート。紫線は北風時の離陸ルート)
さらに羽田新ルート直下から水平距離500m、1km、2km範囲を可視化したのが次図。
練馬・中野・渋谷・品川区のかなりの多くの区民が騒音の影響を受けることが分かる。
羽田新ルート直下から水平距離500m範囲の人口が約100万人だから、1km範囲で2倍、2km範囲で4倍、3km範囲で……。数百万人単位の区民が騒音や不動産価値への影響を受ける可能性があるのだ。
ただ、残念ながら、このような絶望的な未来を伝えているマスメディアは皆無。統一地方選挙の区長・区議会議員選挙の投票日(4月21日)まであと18日。令和に浮かれているうちに、多くの区民はすぐそこに迫っている騒音問題を容認したかたちとなってしまうのか……。
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