羽田の新飛行ルートにより、ルート直下の多くの住民は騒音の影響を受けることになるのだが、この問題の情報が十分に共有されているようには思えない。
これまで微力ながら「麻布・恵比寿・渋谷付近は「主要幹線道路周辺(昼間)」~「地下鉄車内」並みのうるささ」であることや、「羽田新飛行ルートのフライトシミュレーションの動画」など、具体的な情報を提供してきた。
本日は、飛行ルート直下とその周辺の騒音レベルを独自に試算し、地図化した結果を紹介しよう。
騒音レベルの試算対象(南風時のA滑走路到着ルート)
南風の時に埼玉県上空を通って練馬から新宿、渋谷、品川と高度を下げながら着陸するルート(南風時のA滑走路到着ルート)(次図)について、飛行ルート直下とその周辺エリアの騒音レベルを試算する。
「資料1 羽田空港機能強化に係る第3回協議会以降の取組」P5にルートを追記
試算方法
※試算方法に興味がない方は、読み飛ばしてください。
飛行ルート直下「PN0地点」の騒音レベルをN0(dB)として、その直下地点から水平方向にL0(m)離れた「PN1地点」の騒音レベルをN1(dB)とする(次図)。
「PN1地点」は、飛行ルート直下の「PN0地点」よりも騒音源である旅客機からの直線距離が長いため、距離減衰分だけ騒音レベルが低くなる。
「PN1地点」の騒音レベルを求める概算式は次の通り。
N 1=N0―距離減衰
=N0 ― 20×LOG10(D/H)
飛行ルート直下の騒音レベル(N0)は、高度別・機種別に整理された次表の値を用いる。
「羽田空港のこれから」(PDF:27MB←データが重いことに要注意)P45より
飛行高度300m(1000ft)の場合の計算結果は次図のとおり。
飛行ルート直下からの水平距離が大きくなるにつれて、騒音レベルが下がる(飛行機騒音の影響が少なくなる)ことが分かる。
飛行高度を300m(1000ft)から900m(3000ft)の範囲で、大型機(777-300)について、同様の計算をした結果を整理したのが次図。
飛行ルート直下からの水平距離が2km以内の場合には、飛行高度の違いによる騒音レベルの値の違いが大きいので、飛行機の騒音の影響を慎重に検討する必要がありそうだ。
水平距離が2kmを超えると、飛行高度の違いによる騒音レベルの違いはあまり見られなくなる。また、そのときの騒音レベルは63dB程度(ファミレス店内の騒音程度)なので、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。
以上の試算方法に基づいて、具体的な飛行ルート(南風時のA滑走路到着ルート)に沿って、騒音レベルを算出し、地図に落とした結果を以下に紹介する。
※各地図の下図に利用したのは、「羽田空港のこれから」(PDF:27MB←データが重いことに要注意)に公表されている「羽田空港の国際線増便の実現方策」のうち、南風時の飛行ルート図(P39~40)である。
高度900m~750m地点の騒音レベル
飛行高度750mのルート直下の渋谷駅の騒音レベルは65dB(小型機)~72dB(大型機)。
飛行ルートから約2km離れた新宿駅の騒音レベルは55dB(高度900m・小型機)~63dB(高度750m・大型機)。
高度600m~450m地点の騒音レベル
飛行高度600mのルート直下にある代官山駅の騒音レベルは68dB(小型機)~74dB(大型機)。
飛行ルートから約2km離れている広尾駅になるとあまり気にしなくてもいいレベル(57dB~63dB)。
ただし、「南風時のC滑走路到着ルート」(南風時のA滑走路到着ルートより東側のルート)の場合には(今回は地図化していない)、広尾駅は飛行ルート直下になることに要留意。
高度300m地点の騒音レベル
飛行高度300mのルート直下から約2km離れている大森駅の騒音レベルは59dB(小型機)~63dB(大型機)。
なお、騒音レベルの目安は、環境省の「一般環境騒音について」のページの「騒音の目安について」に掲載されている次図でイメージしてほしい。
※本試算には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。