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羽田新ルート|都有識者会議が掲げる経済波及効果2兆円!?

東京と日本の持続的成長に向けて、真の地方分権を見据えた地方税財源のあり方を検討することを目的とした都の有識者検討会「東京と日本の成長を考える検討会」は10月29日、「東京と日本の成長を考える検討会報告書」を公開した。

東京と日本の成長を考える検討会報告書

東京の国際競争⼒強化のために必要な取組として、次の6つが掲げられている。

  1. 羽田空港の機能強化
  2. 外かく環状道路の早期整備
  3. 鉄道ネットワーク等の強化
  4. ユニバーサルデザインの促進
  5. 外国人受入環境の向上
  6. 多発する集中豪雨への対応

「羽田空港の機能強化」について、「必要な取組とその効果」が記されている。

<必要な取組とその効果>

羽田空港のポテンシャルを最大限発揮させるとともに、東アジアの随一のハブ空 港として機能させるためには、羽田空港の更なる機能強化に取り組み、国際線の 増設や新滑走路増設などにより空港容量を拡大していく必要がある。

総事業費 は、国土交通省が示している第5滑走路の整備金額の推計値(6,200億円~9,700 億円)の中央値とし、この投資による経済波及効果は、都で約1.3兆円、都以外で 約7千億円等、図28のとおりとなっている。(P26)

【図28】羽田空港の機能強化による経済波及効果
【図28】羽田空港の機能強化による経済波及効果(P26)


新滑走路整備の総事業費(中央値7,950億円)の投資に対して、経済波及効果が約2兆円、税収約220億円、雇用効果約12.5万人

経済効果が2兆円というのはけっこう大きな数字だ。でも、上図(図28)の下に※印で注記された小さな文字に目を凝らすと、2040年までの累計額であることに気付く。

※ 経済波及効果、税収効果及び雇用効果は、総事業費の中央値(7,950億円)を基に外部調査機関が推計(2040年までの累計)

1年あたりにすれば、たいしたことはないのではないか(次表)。

羽田空港の機能強化による経済波及効果
供用開始時期が不明だったので、1年あたりの試算において、2ケース(2025年、2030年)で想定した。


そもそも第5滑走路の整備金額の推計値(6,200億円~9,700 億円)が、この程度の金額で済むのかどうか分からない。東京五輪がいい例だ。招致前の2013年1月には8,299億円と試算されていた大会経費は、16年12月には約1兆5千億円に倍増。会計検査院が18年10月4日に公表した額では3兆円規模にまで膨らんでいる。

高々年間22億円の税収増のために、騒音の影響を受ける区民100万人は羽田新ルートの運用に納得するだろうか。

ちなみに、国交省が2年前(16年6月17日)に公表した「羽田空港機能強化による経済波及効果の試算結果」では、経済波及効果は年間約6,500億円、年間税収増約530億円、年間雇用増約5万人。今回の都有識者会議の数字より一桁大きい。年間税収増約530億円(うち1都3県381億円)なら区民は納得するのか……。

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