野党統一候補となった野沢哲夫氏は、3か月前は「羽田新ルート撤回」に賛意を示していたのだが、新宿区長立候補記者会見以降、公式の場では羽田新ルート問題にまったく触れていない(10月28日現在)。
シニア寄りの公約「3つのSTOP」と「8つのGO」で、現職の吉住健一氏に勝てるのだろうか……。
- 「羽田新ルート問題」に言及しない野沢哲夫氏
- 3か月前は羽田新ルート撤回に賛意を示していたのだが…
- 野沢氏の掲げるシニア寄りの公約
- 「羽田新ルート問題」に言及せずに浮動票を取り込めるか
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「羽田新ルート問題」に言及しない野沢哲夫氏
新宿区長選選挙(投開票日11月11日)の野党統一候補となった野沢哲夫氏は、立候補記者会見(10月12日)でも、公約を発表した区民の集い(10月23日)でも、また山本太郎氏が応援に立った演説会(10月26日)においても、羽田新ルート問題については全く言及していない。
過去4回の新宿区議会選挙の分析結果から、野党統一候補になっただけでは、毎回5割近くを占める自公の得票率を上回ることはできない。対立候補が現区長に勝つためには、野党統一候補を立てたうえで、無党派層を取り込むことが必須であり、羽田新ルート問題を訴えることが有効であることを先日このブログで紹介した(次図)。
「新宿区長選挙シミュレーション」より
3か月前は羽田新ルート撤回に賛意を示していたのだが…
野沢哲夫氏は、立候補記者会見(10月12日)の3か月前、7月15日に実施された「みなとの空を守る会」による「羽田低空飛行計画撤回パレード」に触れ、自由党東京都第1区総支部総支部長として、次のように賛意を寄せていた。
この度、「羽田低空飛行計画撤回パレード」パート3の開催心よりお祝い申し上げます。(中略)羽田増便による低空飛行撤回、羽田空港での離発着は「海から入り海に出る」現状のルールを守ることの一点で共同し運動を進めていくべきです。
港区の安心安全な空を守るべく、共に闘って参りましょう。
この度のパレードが、実り多く、大成功となりますこと心よりお祈り申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。
自由党
東京都第1区総支部総支部長のざわ哲夫
※詳細は 「みなとの空を守る会」のツイート(23:08 - 18年7月15日)参照。
野沢氏の掲げるシニア寄りの公約
野沢哲夫氏が羽田新ルート問題についてダンマリを決め込んでいるのは選挙戦術のひとつなのかもしれないが、現在掲げている公約「3つのSTOP」と「8つのGO」で現職の吉住健一氏に勝てるのだろうか。
「3つのSTOP」と「8つのGO」とは次のとおりだ。
「漱石山房記念館の文化財紛失事故」のほうが「羽田新ルート問題」よりも重要なのか……。
3つのSTOP
- 高齢者の個人情報の警察に対する提供中止
- 区立公園のデモ使用規制の撤廃
- 漱石山房記念館の文化財紛失事故の真相究明と再発防止
8つのGO
- 小中学校の全体育館にエアコンを設置
- 認可保育園の増設や学校給食の無償化など子育て支援
- 介護保険の負担軽減や特別養護老人ホーム増設
- コミュニティーバスの運行
- 他区に比べ高いスポーツ施設利用料の軽減
- 公契約条例と中小企業支援
- 高過ぎる国民健康保険料の軽減
- へイトスピーチ規制条例の制定
野沢氏の掲げる公約「3つのSTOP」と「8つのGO」は、シニアに偏り過ぎていないか。
各公約の年代別の「アピール度」を5点評価した結果を表にまとめてみた(次表)。あくまでも筆者の主観による配点結果だが、公約がシニアに偏っていないだろうか。
※【アピール度の配点】1:まったくアピールしない、2:あまりアピールしない、3:どちらともいえない、4:ややアピールする、5:すごくアピールする
シニア寄りの公約は、新宿区長選挙の有権者の投票行動にどのように影響を及ぼすのか? 過去の有権者の投票行動を確認してみよう。
「羽田新ルート問題」に言及せずに浮動票を取り込めるか
新宿区長選挙の過去3回の年代別投票率の推移を次図に示す。
新宿区に限らないことだが、若年層ほど投票率が低い。20歳代の10%に対して、70歳代以上は40%。
前回(2014年)の新宿区長選挙の年代別投票行動を次図に示す。
新宿区の有権者数は30・40歳代が多い。なのにこの世代の投票率は低い。40歳代以下の投票を引き寄せられる公約を掲げることが野党統一候補の勝敗のカギを握っている。
シニア寄りの公約「3つのSTOP」と「8つのGO」で、40歳代以下の浮動票を取り込むことができるのか。投票日まであと2週間足らず。いまから羽田新ルート問題に言及しても間に合わないか……。