日米の調整難航で羽田新ルートが運用できないおそれがあることを伝えるNHKニュースが飛び込んできた。
日米の調整難航で運用できないおそれ(NHK)
アメリカ側が、ことし夏ごろになって、上空通過も日本側が航空管制を行うことも認められないという意向を伝えてきたという。
羽田空港 新飛行ルート 日米の調整難航で運用できないおそれ
(前略)この新たな飛行ルートは、在日アメリカ軍横田基地が航空管制を行う空域を一時的に通過することから、政府は、羽田空港を発着する航空機の上空通過を認めるとともに、航空管制も日本側が行うことを前提に、アメリカ側と調整を続けてきました。
しかし、アメリカ側が、ことし夏ごろになって、上空通過も日本側が航空管制を行うことも認められないという意向を伝えてきたため、飛行ルートが運用できないおそれが生じていることが政府関係者の話でわかりました。(以下略)
(NHKニュース 10月4日 4時42分)
延期か、ルート見直しか…
2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田新ルートの運航を強引に進めてきた安倍政権に、思いもかけない方向から中止の圧力がかかってきた。
日本の首都圏の上空は米軍に支配されていて、日本の航空機は米軍の許可がないとそこを飛ぶことができないという現実があらためて突きつけられた。「日米合同委員会」での調整がうまくいっていないということなのだろうか。
もし在日アメリカ軍横田基地が航空管制を行う空域を一時的に通過することが認められないとなれば、2020年までの新ルートの運用開始が延期されるのか、あるいはルートの見直しが行われるのか。トランプ大統領のディールの対象になっているのか……。
【追記】なぜNHKはこのタイミングで報道したのか?
今回のNHKの報道内容は、「政府関係者の話でわかりました」とされている。”国営放送”NHKは、どのような状況を忖度してこのニュースを流したのか3つ考えてみた。
(1)新ルート運用開始が予定通り進まなくなった場合の責任回避
羽田新ルートの問題が徐々に世間に知れ渡り、国交省が当初思い描いていたよりも、区民からの反発が大きくなり始めた。
特に、9月30日の品川区長選挙では、新ルート「容認派」の現職区長の票が、「撤回派」2名の合計票を下回った(次図)。
新ルート運用開始が予定通り進まなくなった場合に備え、その責任は国交省(政権)にあるのではなく、在日米軍にあるのだというエクスキューズ。
「品川区長選挙の開票速報・結果(2018年9月30日)」より
(2)新ルート周辺の不動産価値下落の回避
新ルート直下では、大規模なタワーマンションをはじめ何件もの新築マンションの販売が予定されている。
営業マン(営業ウーマン)に「在日米軍の反対で新ルートは撤回される(またはルート変更になる)ようですよ」というセールストークをさせるため。
(3)安倍政権の交渉力の高さを演出するための布石
新ルートの運用開始を予定通り進めることができた場合、在日米軍とのハードネゴシエーションを成し遂げた安倍政権の外交交渉力の高さを演出するための布石。
アメリカ側が今年の夏ごろになって、横田空域の上空の飛行を認めないと伝えてきたことが、日米経済交渉のカードであるならば、タイミングをみて決着させるのではないか。
【追記】横田空域の管制権、一部日本移譲…米軍と合意へ
(前略)協議の結果、米軍は旅客機の通過時間帯を午後の短い時間に限ることなどを条件に、日本側の管制を容認する方向となった。五輪終了後も、日本側が管制を続ける見通しだ。
(読売新聞 18年11月4日)
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※在日米軍の空域管理問題については、こちらをご参照。