2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する羽田新ルート計画。
筆者の試算によれば、羽田新ルートが運用開始されると、区民100万人(1割)が騒音の影響を受けることになる。この衝撃的な事実がなかなか区民の共通認識とならないのは歯がゆいものだ。
この衝撃的な事実を伝えるために、別の切り口での説明を試みてみたい。羽田新ルートでは、飛行機は高層マンションのどれくらい上を飛ぶのか? 港区内で仮定した敷地に45階建てのマンションを設定し、可視化してみた。
港区内に仮定した敷地での羽田新ルート騒音影響
港区内で羽田新ルート直下から200mほど離れた敷地(以下、「仮定敷地」)に、45階建ての超高層マンション(以下、「仮定マンション」)が計画されていると仮定する。
大型機(ボーイング777)が港区上空を通過するときの地上での騒音レベルの分布は次図のとおりだ。
広尾駅(港区)周辺の騒音レベルは約72dB。仮定敷地は飛行高度の変わり目(600m⇒450m)に位置するので、騒音レベルは73~75dBくらいと推定される。
※上図右がC滑走路到着ルート、左がA滑走路到着ルート
「飛行ルート周辺の騒音マップを描いてみた」に掲載した図に加筆
羽田新ルートとマンションの位置関係
仮定敷地近くを通過する「C滑走路到着ルート」と仮定マンションとの位置関係は次図のとおりである。
仮定マンションまでの水平距離は約210m。
図中の大型機ボーイング777-300(全長73.9m、全幅60.9m)の大きさとマンションの外形は、水平距離の縮尺に合わせて描いてある。ボーイング777がいかに大きいのか、実感できるのではないか。
飛行高度とマンションの高さ関係を可視化
上図に示した羽田新ルートと仮定マンションの位置関係をもとに、飛行高度とマンションの高さ関係を可視化(A-A視点)したのが次図。
国交省の新飛行経路案によれば、仮定敷地を通過する飛行機は600mから450mに徐々に高度を下げていくことが想定されている。
※図に描いた大型機ボーイング777-300(全長73.9m、全幅60.9m)の大きさも、垂直距離の縮尺と同じにして描いている。
仮定敷地の真上を飛ばないとはいえ、全長74mの大型機が近くを通過するというのは、けっこう迫力があるのではないだろうか。
飛行機がマンションに最接近するとき(赤色の飛行機)の高度を525m(=(600+450)÷2)と想定すると、マンションとの直線距離は屋上で約430m、1階で約570m。その差140m。皮肉なことに、一般的に分譲単価が高い上層階の住戸ほど、飛行機に近づくので騒音が大きくなるのである。
【注意書き】
- 港区内に仮定した敷地とマンションはあくまでもフィクション。実在の物件やプロジェクトとは一切関係ない。
- 本試算には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。
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