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羽田新ルート|横田空域の問題

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する「羽田新飛行ルート問題」。

横田空域の返還とまではいかなくても、横田飛行場の軍民共用化が実現すれば、都心の過密エリア上空を飛ぶ必要がなくなるのではないのか?

横田空域の問題について、整理してみた。


もくじ

横田行場の軍民共用化で、航空需要の分担は可能(有識者会議)

じつは、有識者会議(首都圏空港機能強化技術検討小委員会)が4年前(2014年7月8日)、「中間取りまとめ」でこの点に触れている。

横田飛行場の軍民共用化が実現すれば、一定の航空需要を分担するや首都圏のビジネスジェットの需要増にも対応できるとしているのである。

仮に横田飛行場の軍民共用化が実現すれば、東京都西部・山梨県等の一定の航空需要を分担することが可能であると考えられる。
また、東京都は、横田飛行場が軍民共用化されれば、今後増大することが見込まれる首都圏のビジネスジェットの需要にも対応することが可能となる、としている。

(「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ」P29より)

 横田飛行場の軍民共用化が実現すれば
「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ(別紙3)P62」より

国交省は否定的!? 横田空域の返還による増便可能性

ところが、FAQ冊子v4.1「羽田空港の国際線増便の実現方策/羽田空港のこれから」に掲載された国交省の見解は否定的なように見える。

Q8:横田空域が返還されれば、増便が可能になるのではないですか。

  • 現在、羽田空港の発着回数は、横田空域によって制約を受けているわけではありません
  • 横田空域が返還されても、今回提案しているように、滑走路の使い方・飛行経路の見直しを行わなければ便数を増やすことはできません。

(「羽田空港の国際線増便の実現方策」P31)

ただ、上記の文章をよく読むと、「横田空域が返還されても、・・・滑走路の使い方・飛行経路の見直しを行わなければ便数を増やすことはできません」となっている。

「横田空域が返還されて、・・・滑走路の使い方・飛行経路の見直しを行えば、増便は可能」という意味に読めないだろうか(最近はやりのご飯論法?)。

横田空域の返還求めず 羽田新ルートで政府(東京新聞)

まあ、いずれにせよ、横田空域の返還か、横田飛行場の軍民共用化が実現しないと、羽田新ルート問題の解決には影響しない。

残念ながら、国交省管制課と外務省日米地位協定室は昨年12月、「横田空域の削減(返還)は求めない」との見解を示している。

横田空域の返還求めず 羽田新ルートで政府

(前略)新飛行ルートは2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、羽田空港の国際線の発着枠を増やすために導入される。東京湾の上を通って離着陸するこれまでの原則を変え、都心上空を通過することになる。その際、横田空域の東端をかすめることになり、国交省と米軍の実務者間で対応を協議してきた。

 現在、羽田を利用する民間機は横田空域を避けて航行しており、新ルートに合わせて08年以来となる空域返還の可能性も取り沙汰された。しかし、国交省管制課と外務省日米地位協定室は本紙取材に、「横田空域の削減(返還)は求めない」との見解を示した。(以下略)

(東京新聞 17年12月10日)

 

横田空域の問題は奥が深い。

質問主意書「横田空域の返還に向けた努力を適宜適切に」

ちょっと古くなるが、赤嶺政賢衆議院議員(共産)が2006年2月10日に提出した「米軍横田空域の返還に関する質問主意書」に対して、次のような政府見解が示されている。 

質問(※実際の質問は11項目ある)

十一 「横田空域」の返還は、もはや日米合同委員会民間航空分科委員会での協議では解決できないことを示しているのではないのか。日米首脳会談をはじめとする、日米両国政府のハイレベルな外交交渉により解決すべき課題であると考えるが、政府の意思と見解を伺いたい。

答弁(※抜粋)

政府としては、引き続き、安全保障上の必要性を踏まえつつ、横田空域の返還に向けた努力を適宜適切に続けていく考えである。
 横田空域の削減については、発表文書において、平成21年に予定されている東京国際空港の拡張を念頭におきつつ探求される横田空域における民間航空機の航行を円滑化するための措置の選択肢の一つとして、日米両国政府の関係閣僚により確認されている。

質問主意書の答弁を読むと、横田空域の問題は多少解決に向かっているような印象を受ける。

だが、実際は全く違う。横田空域の問題は、ハイレベルな外交交渉をもってしても、解決できるような問題ではないことはほとんど知られてない。

「日本の空は、すべて米軍に支配されている」

アメリカ軍関連と日米地位協定などの著作が多いノンフィクション作家、矢部宏治氏の近著『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)2017/8/17「第1章 日本の空は、すべて米軍に支配されている」に詳しい。

JALやANAの定期便は巨大な山脈のような空域を避けて、非常に不自然なルートを飛ぶことを強いられているという。

じつは日本の首都圏の上空は米軍に支配されていて、日本の航空機は米軍の許可がないとそこを飛ぶことができません。いちいち許可をとるわけにはいかないので、JALやANAの定期便はこの巨大な山脈のような空域を避けて、非常に不自然なルートを飛ぶことを強いられているのです。(P17)

横田空域の立体図
航空局「航空機の安全かつ効率的な運航について」P10より

横田空域は、「日米合同委員会」という密室で合意されたものだという。

本土上空の航空管制権はすべて日本に返還するが、ただし「米軍基地とその周辺は例外とする」という密約を結ぶ。さらに密室の協議によって、「その周辺」という言葉の意味を途方もなく拡大していく。その結果うまれたのが、これまで述べてきた巨大な横田空域であり、岩国空域なのです。
 すべては第四章でご説明する「日米合同委員会」という密室で合意されたことですから、横田空域や岩国空域については、いまだに何の国内法の根拠もない。ただ占領時代から続く米軍支配の状態が、そのまま継続しているというわけです。(P35)

書名が陰謀論めいているので、手に取るのがはばかれそうだが、決してそのような内容ではない。

かりに話半部だとしても、世間の耳目を集めるに値する情報に満ちている。

  • 第1章 日本の空は、すべて米軍に支配されている
  • 第2章 日本の国土は、すべて米軍の治外法権下にある
  • 第3章 日本に国境はない
  • 第4章 国のトップは「米軍+官僚」である
  • 第5章 国家は密約と裏マニュアルで運営する
  • 第6章 政府は憲法にしばられない
  • 第7章 重要な文書は、最初すべて英語で作成する
  • 第8章 自衛隊は米軍の指揮のもとで戦う
  • 第9章 アメリカは「国」ではなく、「国連」である
  • 追記 なぜ「9条3項・加憲案」はダメなのか

知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)

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