首都圏不動産公正取引協議会が「おとり広告」などの撲滅を強力に推進するためとして、違反者に対して不動産情報サイトへの広告掲載を1か月以上停止する「厳重警告及び違約金課徴の措置」を始めたのは17年1月。
ところがなぜか、「厳重警告及び違約金課徴の措置」の対象業者は、毎月5社前後にとどまっている(次図)。
これでは同協議会は、役所に言われて(役所は消費者からのプレシャーを受けて)、おとり広告の撲滅ポーズを取っているだけのように見られても仕方がないのではないか。
おとり広告なんて、AI(人工知能)を導入すればかなり削減できるように思えるのだが、 いかがだろうか。
なぜ、おとり広告が減らないのか?
不動産公取協の収支構造を可視化してみよう。
違約金課徴収益は年々増加している
首都圏不動産公正取引協議会(以下、「不動産公取協」)の「情報公開」のページに掲載されている予算・決算文書をひも解くと、違約金課徴収益が年々増加していることが分かる(次図)。
12年度までは予算書に「0円」としか見込まれていなかったのだが、13年度以降は予算書にそれなりの金額が見込まれるようになった。
本来であれば、おとり広告などの違法広告については撲滅させることが建前だから、予算の段階で違約金課徴収益を見込むのはヘンなのだが。
予算書段階で違約金課徴収益を見込んでおかないと、予算書の収まりが悪くなってきたのであろうか。
違約金課徴収益は、16・17年度は決算書ベースで約2千万円。16年度以降約5百万円アップしている。
事務所移転(14年6月)による賃料アップや、16年度の「広報・消費者啓蒙費」急増、17年度の「役員報酬」増加とは関係はないのか――。
経常収益1.7億円の12%を違約金課徴収益が占めている
17年度の「収支報告(決算)」を見ると、経常収益約1.7億円の12%を違約金課徴収益が占めている(次図)。
違約金課徴収益は、不動産公取協のフトコロを潤しているのか?
不動産公取協の経常収益の推移を次図に示す。
年間の経常収益は1.5~1.7億円。うち9割近くを会費が占めている。
注目すべきは、経常収益に占める「違約金課徴収益」の割合が年々増加していること。
08年度には7%だったのだが、16・17年度は12%まで上昇しているのである。
タマゴを生む鶏を殺せるか?
不動産公取協は、違法広告を撲滅し、経常収益の1割以上を占めている「違約金課徴収益」が入らなくなると、赤字に向かうことになる(次図)。
違法広告はそこそこ存在しているほうがいい、というようなことはないのか。
不動産公取協は、17年4月から不動産広告の調査業務の一部をLIFULLやアットホームなど、不動産情報サイトの運営に関係している企業に委託している。
調査の結果、表示規約違反が認められた場合には、当該広告を行った不動産事業者に対し一定の措置を講ずることとしている。
合法広告だろうが、違法広告だろうが、広告を掲載することで不動産情報サイト運営企業に利益をもたらす。不動産情報サイト運営企業に違法広告撲滅のインセンティブは働いているのか?
「タマゴを生む鶏を殺してしまっては元も子もない」ということはないのか――。
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