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目黒区長の答弁にみる、民泊条例の検討状況

来年6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)に向けて、東京23区では、次の6つの区で民泊条例の骨子案などが示されている。

23区でAirbnbの登録件数が12番目に多い目黒区(約460件、12月1日現在)では、民泊条例の検討はどの程度進んでいるのか?

ヒントは、目黒区議会の青木英二区長(4期)の答弁にある。

ただ、残念ながら目黒区議会では、定例会の「11月会議」では民泊に係る質疑応答はなく、「9月会議」まで遡のぼらなければならない。
「9月会議」のうち、9月7日に開催された本会議(一般質問)で、2人の区議の民泊関連質問に区長が答弁しているので、同会会議録を整理しておいた。

結論を先に言えば、9月の定例会の段階では、条例化については検討中ということ。

※質疑応答の詳細を読む時間のない方は、最後の「まとめ」をお読みください。


質疑応答のポイント

橋本議員(自民)

(前略)民泊ビジネスに取り組むことは、基本的には自由でありますが、目黒区としては、これまで述べた懸念があることを承知しながら民泊の方向性を探り、さまざまな対応を考えていくことが肝要と存じます。
 そこで、以下の質問をさせていただきます。

質問1-1:今後想定される課題
(1)区内でも幾つかの民泊施設がマッチングサイトですぐ見つけることができます。これらの施設において、これまでどのようなトラブルが起きているのか、また、今後想定される課題を伺います。
質問1-2:先行自治体からの情報収集内容
(2)先ほど述べた自治体では、先立って民泊が普及しています。これら先行自治体からどのような情報収集を行っているのか伺います。 
質問1-3:民泊に対する区の姿勢
(3)そして、民泊に対する目黒区の今後の姿勢を伺います。

区長答弁

回答1-1:住環境維持のために期間制限をどうしていくかが課題

(前略)現在、旅館業法を所掌してございます生活衛生課には、見知らぬ人が頻繁に近隣の建物を出入りしており、防犯面で不安があるというような声が多く寄せられているほか、騒音やごみに関する苦情なども寄せられております。これまでは大きなトラブルと言える事例までは発展してはございませんが、このような防犯や騒音、ごみなどについての区民の皆様からのお問い合わせは、平成27年度は22件、28年度は96件と急激に増加しているところでございます。

 また、今後想定される課題についてでございますが、大きく3点に分けますと、まず第1に、ただいま申し上げました民泊施設と近隣住民の方の間で発生すると思われる苦情等のトラブル対応や違法民泊の取り締まり、生活環境維持といった課題

第2に、民泊新法においては、都道府県事務である住宅宿泊事業者の届け出や受け付け・監督事務を保健所設置市と特別区がかわって処理できる規定があることから、区が権限移譲を受けて関係事務を所管するのか、窓口対応をどうするのかといった課題がございます。

第3に、民泊新法は、急増する訪日外国人観光客のニーズや大都市部における宿泊需給の逼迫状況に的確に対応し、来訪、滞在を促進する趣旨となっている一方で、宿泊事業の年間の提供期間や区域について、地域の実情を反映し、東京都から区が権限移譲を受けて条例で制限できることから、区の住環境を維持するために期間制限についてどうしていくかといった課題があり、現在、これらの多岐にわたる課題への検討を進めている状況でございます。

回答1-2:各区との情報共有・意見交換を実施

(中略)国との連絡調整役であり、都内における民泊新法の事務を所掌する東京都において、7月になって区市町村との協議や連絡調整の体制強化のため、住宅宿泊事業対策本部が設置され、8月には産業労働局に専任の担当課長を配置するとともに、特別区との情報交換のための検討会議が開催されたところでございます。

会議の中では、先行自治体である新宿区から、区内部の検討状況について担当者から詳細な報告があったほか、各区から出された課題や疑問点について情報共有や意見交換が行われております。新宿区では、昨年度から区独自ルールを検討してきた一方で、成立した民泊新法の運用面の政省令など不明な点が多く、検討が進んでいない状況などを伺っております。

また、特別区の部長会や課長会など関係する会議においても、随時情報交換などが行われている状況でございます。

これらの会議体を通して情報収集や、東京都が直接事務を担当する多摩地域の市町村との意見交換結果などの把握に努めながら、引き続き法施行に向けた準備を進めてまいります。

回答1-3:良好で閑静な住環境を守っていく姿勢で臨む

(中略)区では現在、民泊に対する課題を抽出し、区民の安全・安心の確保を目的とした適正な対応を検討するため、関係所管による内部組織として民泊対応検討会を設置し、今後の対応を検討しているところでございます。

 また、9月には国土交通省と厚生労働省による都道府県及び特別区担当者向けの説明会も行われることとなっており、こうした機会を捉えた情報収集にも努めてまいります。

特に、宿泊事業の年間の提供期間や区域について、区独自で制限する条例を制定するかについて判断材料が少なく、現時点では明確には申し上げられる状況ではございませんが、目黒区においては住宅系の用途地域が約8割を占めており、さらに第一種低層住居専用地域については約5割を占めているという顕著な特徴がございます。

海外等の観光客の来訪、滞在を促進するという民泊新法の趣旨には一定の理解ができるものの、区としては、法律が施行された後も、区内の良好で閑静な住環境を守っていく姿勢で臨んでいく必要があるものと考えております。

 さらに、条例を制定する場合、法律の施行日の3カ月前から事業者の届け出、受け付けが開始されることから、検討する時間が限られてきております。

いずれにいたしましても、国において民泊新法の具体的な運用を定める政省令の内容等を速やかに示すことが不可欠でございます。

今後は都や他区とも連携しながら、さらにスピード感を持って民泊の諸課題に対する具体的な検討を進めるとともに、制度について区民の皆様への周知などにも努めて<いりたいと存じます。

橋本議員(自民)

質問1-4:マンション管理組合への民泊規約の周知を

(前略)先日の8月29日に国土交通省から、民泊に関する事柄を記した管理規約のモデルとして、マンション標準管理規約を改正して公表してくださいました。

マンション内で民泊を可能にする場合の規約と禁止する場合の規約ということで、2種類想定して標準規約をつくったこともあって、これを区内のマンション管理組合宛てにもぜひ周知をしてもらいたいと思うんですね。そのような周知ができればなと思うんですけども、区側としての考えを伺いたいと思います。 (以下略)

区長答弁

回答1-4:どういった形で周知ができるか検討したい

民泊について、これも私、新聞報道を拝見をしておりました。標準管理規約は、大体8割ぐらいのマンションがこれを活用されているということです。簡単に言うと、区分所有で民泊をやるというか、やることができる内容はこうですよ、できない内容はこうですよというふうに非常にわかりやすく示されています。そういう点では、この周知というのは非常に大事だと思いますので、どういった形で周知ができるか、検討をしっかりとしていきたいというふうに思います。  

西崎議員(民進)

質問2-1:民泊について区民の意向をどう把握?

(前略)民泊に対する苦情というものは、騒音、ごみ問題、防犯上の問題など多岐にわたると考えられますが、少なくとも本区の生活衛生の所管に対する苦情件数、2015年度では22件だったものが、昨年度ですね、2016年度には96件で、今年度は7月末までの時点でありますけれど27件ということで、同じぐらいのペースで推移をしているということであります。
 一方で、民泊を始めたいという、そういった相談もあるとのことで、昨年度で78件、今年度は同じく7月末でありますけれども44件と、相談のほうが多いという状況でございます。こうした数字が出ている中、区は、民泊について区民の意向をどう把握をしているのか伺います。  

区長答弁

回答2-1:区民に意向を伺うという状況ではない

(前略)お尋ねの民泊に対する区民の意向の把握でございますが、国において、この法律の具体的な運用を定める政省令の内容が明らかになっていないことや、観光行政を所管している観光庁等が作成すると言われているガイドラインにつきましても、現時点で示されていない状況でございます。

法律を運用していく上での条件が明確でない中で、現時点で区として、この法律について直接区民の皆さんに対し何らかの意向を伺うという状況ではございませんが、増加している相談件数やその内容から見ますと、新たな法律に基づく民泊事業者や民泊者に対して、法律や地域のルールをきちんと守ってほしいという御要望や、静かな住環境を維持してほしいという御意見も多いのではないかと考えられます。

また、今後、民泊事業への参入を検討している方や住宅の所有者が、必ずしも区内在住者であるわけではないことから、事業者側の意向については、区単独で把握することは難しい面もあると認識しております。

(中略)

 また、特別区と保健所設置市を除く都内市町村については、東京都が直接住宅宿泊事業者の監督や条例制定事務を処理することから、東京都の動向も適切に把握していく必要もございます。

 さらに、民泊事業実施に伴う宿泊者や近隣住民の安全確保のため、新たな民泊施設についての防火や防災などへの対応の観点から、警察署や消防署などとの連携も必要になり、関係機関の考え方についても把握していく必要がございます。

 まずは、国における政省令やガイドラインが早期に公にされることが重要でございますが、区といたしましては、東京都の住宅宿泊事業対策本部を初め他区の動向の把握に努めるとともに、法律の施行に当たって目黒区の良好な住環境が維持できるよう、課題抽出や対応策の検討、区の体制の検討なども含め、引き続き区民生活の安全・安心を確保していくよう努めてまいりたいと存じます。

西崎議員(民進)

質問2-2:具体的な施策を固める前に、区民の考えの調査を

(前略)政省令、ガイドライン等がそろってからでも構いませんが、丁寧に区民の意向というものを、これは区が決定する前に、民泊に対して、例えば条例で制限するんだ、もしくは監督を強化していくんだ、そういった具体的な施策を固める前に、しっかりと区民の考えというものを調査をして、しっかりと把握をしていく必要があると思うんですけれども、それについて伺います。

区長答弁

回答2-2:区民に何をどう聞いていくかは慎重に

これは私ども民意をつかむということですけれども、まず私どもとしては、先ほども答弁申し上げましたように、まず一番大事なこと、行政として大事なことは、そもそも論として、これ手挙げにするのかどうかということなんです。

目黒区としてこの事業を受けるのか受けないのかというのは、大変大事なことでございます。私も、都政新報を見ていても、うちだけではなくて相当数がまだ、どうするのというのがはっきりわかっていないわけでございます。8区がまだ未定なんです。

 さらに大事なことは、制限条例どうするのというのも、うちも含めて多くの自治体で未定です。

根幹部分が、私ども制度設計としてきちんと明確でない中で、区民の皆さんに何をどう聞いていくかというのは、非常に慎重にやっていかなければいけない課題だと思います。(以下略)

  まとめ

目黒区の民泊条例制定に向けた主な取組状況について、9月の定例会の区長答弁をまとめると次のとおりである。 

端的にいえば、条例化については検討中ということ。

  • 区独自で制限する条例を制定するかについて判断材料が少なく、現時点(9月)では明確にできる状況ではない。

  • 区としては、法律(住宅宿泊事業法)が施行された後も、区内の良好で閑静な住環境を守っていく姿勢で臨んでいく必要がある。

  • スピード感を持って民泊の諸課題に対する具体的な検討を進めるとともに、制度について区民の皆様への周知などにも努める。

 

【追記(17年12月14日)】

目黒区は12月14日、『目黒区住宅宿泊条例(仮称)の骨子(案)』を公開。

23区で最も厳しい!? 目黒区民泊条例の骨子案

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