不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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傾斜マンション・杭工事データ偽装問題とは何だったのか?

最近、ほとんどマスコミの話題にならなくなった傾斜マンション・杭工事データ偽装問題。

世間の関心はマスコミの報道量に比例する。

絵(画)になるテーマを追いがちなテレビには期待し得ないが、紙メディアには、存在意義を発揮してこの問題をシッカリとフォローしてほしいのだが。

紙メディアに代わって、2015年末の段階での傾斜マンション・杭工事データ偽装問題を総括しておこう。

もくじ

 

マスコミ報道に振り回された大臣、大臣指示に振り回された業界

傾斜マンションの杭データの偽装事件が世の中に知れ渡ることになった第一報は、10月14日付の日経の朝刊。

その後、傾斜マンションの現場中継など、マスメディアによる報道ラッシュが続く。

これに対して、10月7日に就任したばかりの石井国土交通大臣からは業者への「指示」が飛びまくる。

大臣記者会見」において、傾斜マンションに関連して発した「指示」という言葉をカウントして、グラフに描いてみた。

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10月20日と10月23日がそれぞれ10回と最多。

10月23日に発せられた「指示」発言の一部を書き出すと、次のとおりだ。

  • 国土交通省におきましては、これまで、売主や関係建設会社に対し、住民からの要望や横浜市からの要請に対し、誠実・適切に対応するよう指示してまいりました。

  • 国土交通省といたしましては、(旭化成建材が10年間に施工した件数3040件に対する)調査期間は本日から3週間、11月13日までと指示しました。

  • 昨日、発表いたしました3040件の中で、データの流用等があるものがどれくらいあるのか、これを11月13日までには報告をさせるということで、先ほど指示をしたところでございます。

  • 学校、病院等については、優先して調査を実施するよう指示したところでございます。

  • 住民の皆様の不安払拭に万全を期するよう、指示をしたところでございます。

  • 工事の元請建設会社や、あるいはマンションの売主が責任を持って調査し、旭化成及び旭化成建材、元請建設会社、そしてマンションの売主、この三者が連携して結果を報告することを指示したところでございます。

 

これだけ「指示」を乱発されたのでは、たとえ優秀な業者といえども十分に対応できないであろう。

結果的に報告期限が守られないケースが出てきた。

 

子会社の不祥事に振り回された旭化成 

「購入者vs売主(三井不動産レジデンシャル)」という構図でのマスコミ報道もあり得たのだが、旭化成建材の前田富弘社長が10月16日、記者の取材に対して、データを改ざんした担当者一人に責任を押し付けるような説明をしたこともあり、非難の矛先は二次下請けに過ぎない旭化成建材とその親会社の旭化成に向かう。

その結果、売上高2兆円の親会社(旭化成)が子会社(旭化成建材)の不祥事に振り回されることになった。

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マンション傾斜・偽装問題の違和感」より

 

だんまりに徹した売主とそれを許したマスコミ

三井不動産レジデンシャルは被害を受けた区分所有者向けの説明会では矢面に立ったものの、旭化成のようにマスコミ会見を開くことはなかった(傾斜マンションの感情分析!旭化成の陰に隠れる三井不動産)。

結局、三井不動産レジデンシャルの親会社の三井不動産は、11月6日の決算発表に合わせて説明に応じることにはなったのだが。

マスコミはといえば、三井不動産レジデンシャルに対して、突っ込んだ報道をすることはなかったのではないか。

広告宣伝費が旭化成よりも一桁多い三井不動産グループに対して、マスコミはモノを言いにくいということはないのか?

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「横浜市のマンション傾斜問題」 7人のプレーヤー 」より

 

三井不動産レジデンシャルは全棟建て替えを基本方針とする補償内容を提示したことで、ブランド毀損への影響を最小化できたのではないか。
建て替え費用の全額を工事業者に押し付けられないとしても、三井不動産ブランドの維持のための宣伝費と考えれば安いものではないのか。

 

露呈した機能不全の重層構造

当初はデータを改ざんした担当者一人に責任を押し付けて、幕引きを図ろうとしていたようなところもあった。

ところが、いろいろ調べていくうちに、杭工事データの偽装は業界全体で行われていて(杭業界の大手社長の衝撃発言)、しかも元請の建設会社がシッカリと杭工事を管理できていないことが世の中に知れ渡ってしまった。

「データの偽装はあっても、マンションが傾いたのは横浜のケースだけじゃないの」と、逆に変な安心感を与えてしまったようなところもある。

 

また、杭工事の1次下請けだった日立ハイテクノロジー社が機能していたのかは、いまでも不明なままだ。

建設工事が、実効性もないのに重層的に行われている場合があるという実態が世間に知れ渡ってしまった。

  

疲弊した建設業界の実態への国民理解は進んだか

大臣がどんなに「指示」を乱発しても、業者が対応できることには限界がある。

現場経験豊富な団塊の世代が去り、職人の高齢化も進んでいる。
人材不足、職人不足、資材高騰のなかで、復興事業や2020年東京オリンピックに向けた建設工事など、建設業界は疲弊している。

だから、傾斜マンション建設当時よりも、最近竣工したマンションや現在建設中のマンション、これから着工するマンションのほうが、品質が確保されているか気になるのである(傾斜マンション建設当時よりも現在のほうがヤバい?)。

 

本日(12月22日)開催される第5回の「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」において「中間とりまとめ報告書(案)」が議論されることになっている。

その3日後の12月25日の第6回委員会終了後、深尾委員長より石井国土交通大臣へ、「中間とりまとめ報告書」が手交される予定だ。

そして何事もなかったように、傾斜マンション・データ偽装事件は風化していくのであろうか(事件の風化に要する時間は?マンション傾斜・偽装事件)。

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2017年6月1日、このブログ開設から13周年を迎えました (^_^)/
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