不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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「横浜市のマンション傾斜問題」 7人のプレーヤー

横浜市の大型マンションの傾斜問題が広がりを見せている。

杭の施工データの偽装だけでなく、杭の根固め(先端部を地盤に固定)のためのセメントミルクのデータも偽装されていたという。


もくじ

社員1人にマンションの傾斜問題の責任を押し付けていないか

住民説明会の後、旭化成建材の前田富弘社長は記者の質問に対して、次のように答えている。

  • 断定はできないが改ざんはミスではなく悪意を持って施工不良を隠そうとしたとみている。
  • 杭の施工は二人一組で担当する。機械オペレーターと施工管理者だ。改ざんに関わったのはおそらく1人で弊社の施工管理者だ。キャリア15年のベテランといえる。

 

この社長発言は、大型マンションの傾斜問題の責任を、外部から旭化成建材に出向していたキャリア15年のベテラン社員(以下、X氏)1人に押し付けているようにも聞こえる。

 

「横浜市のマンション傾斜問題」の7人のプレーヤー

マスコミ情報などを整理すると、「パークシティLaLa横浜」の工事監理(施工管理)体制は次図のように描ける。

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中間検査を実施したのは、東京の民間検査機関
着工後、中間検査で工事の進捗状況を目視確認することになっているのだが、杭工事の不正を見抜くことは不可能であろう。

 

施主(工事の発注者)は、三井不動産レジデンシャル明豊エンタープライズの2社。

従業員数23名の明豊エンタープライズの役割はよく見えない。

 

マンションの設計者は、三井住友建設一級建築士事務所

工事の元請は、準大手ゼネコンの三井住友建設

 

今回問題となっている杭工事の1次下請け会社は、電気機器関連を中心とした設計・製造・販売会社の日立ハイテクノロジーズ

売上高6,196億円の”ハイテク”企業が、なんで杭工事に絡んでいたのか?

 

そして2次下請けが、旭化成建材。旭化成の100%子会社だ。

 

通常であれば、元請(三井住友建設)の施工管理者(現場監督)が杭工事を担当するX氏の作業をキチンと管理しているなずなのだが、それができていなかった。通常の状態ではなかったのか?

三井住友建設が元請責任を果たせていなかったことは、もっと非難されそうなものなのだが・・・・・・。

 

また、この元請(三井住友建設)をチェックする立場にある発注者(三井不動産レジデンシャル)は、『より品質の高い住まいをお届けするために』、「社員自らによる徹底したチェックを行って」いたのだろうか? 工事監理者検査者として機能していたのだろうか

より品質の高い住まいをお届けするために

多くの人の手で膨大な作業を経て建てられるマンション。三井不動産レジデンシャルでは、長年のノウハウを結集し、独自の設計標準を定め、建設における全ての工程において、施工会社などの検査だけにたよることのない、社員自らによる徹底したチェックを行っています

住まいづくりの思想|三井不動産レジデンシャル株式会社

  

大手不動産のメディア・タブー性

三井住友建設の元請責任や、三井不動産レジデンシャルの発注者責任・工事監理者検査者責任は、もっと問われてもよさそうなものだが、マスコミの論調はどちらかといえば、被害者扱いのようになっていないか。

 

耐震偽造事件のときにマスコミにさんざん叩かれたのは、木村建設の社長ヒューザーの社長イーホームズの社長といった弱小企業だった。

「同じように不祥事を起こしながら、袋叩きにされる企業と批判を免れる絶対的タブーの企業があり、その違いは広告出稿量にある」という( タブーの正体!: マスコミが「あのこと」に触れない理由 (ちくま新書))。

 

念のため、三井不動産と旭化成の売上高と広告宣伝費を調べてみた。

売上高は、2009年度は両社とも約1.4兆円だった。

2014年度は三井不動産の1.5兆円に対して、旭化成は2兆円と伸びている。

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一方、広告宣伝費のほうは、売上高とは異なり、三井不動産が約170億円。旭化成はその10分の1の17億円

これでは、マスコミは旭化成には多少モノが言えても、三井不動産に対しては強く迫ることなどできないのではないのか。

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大手不動産のメディア・タブー性」と杭データ偽装事件の今後(「杭データ偽装事件」の再発防止は可能か? )がとっても気になる。

(本日、マンション広告なし)


【追記(10月26日)】

「「横浜市のマンション傾斜問題」 7人のプレーヤー」のブログを投稿した時点(10月19日07時15分)では、設計者が三井不動産レジデンシャル自身なのか、外部の設計事務所なのか、あるいは三井住友建設の設計・施工なのか不明でした。

10月20日午後に開催された旭化成の記者会見で、旭化成の前嶋商品開発部長が「設計・施工の三井住友建設さまのほうで実施されたボーリング調査の結果」という説明により、本件物件の設計者が三井住友建設であることが明確になりました。

【追記(10月27日)】

10月26日に発売されたAERA11月2日号において、「三井住友建設広報室は、アエラの取材に「建築士は当社の社員」としたうえで(以下省略)」とありますので、傾斜マンションの設計者は三井住友建設(の1級建築士事務所)ということが再確認できましたので、図の一部と本文の一部を修正(削除線・下線部分)しました。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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