傾斜マンションの工期・分譲時期は次のとおりとされている。
- 2005年11月:着工
- 2006年6月:分譲開始
- 2007年12月:竣工
当時は今と比べて、マンションの工事件数は多かったのか?
建設労働者の人数は足りていたのか?
確認してみた。
傾斜マンションの建設当時、建設労働者は不足気味であった
労務費(建設技能労働者過不足率)と資材費(建設資材物価指数)と建設費(建築費指数)の推移を示したのが次のグラフ。
傾斜マンションの建設当時、「建設資材物価指数(全国)」と「建築費指数(東京)」は共に上昇基調にあり、「建設技能労働者過不足率(全国)」は高かったことが分かる。
現在は、「建設技能労働者過不足率(全国)」こそやや改善しつつあるものの、資材費、建設費ともに最悪の状況となっている。
なお、各データには、次の資料を使用した。
- 建設技能労働者過不足率(全国):「建設労働需給調査(国土交通省)」のうち、建設技能労働者過不足率の推移(8職種計・全国)
- 建設資材物価指数(全国):「資材物価指数(建設物価調査会)」のうち、建築部門(全国平均)
- 建築費指数(東京):「建築費指数(建設物価調査会)」のうち、東京・RC造・集合住宅の工事原価
傾斜マンションの建設当時、マンションの着工戸数は現在よりも多かった
「建築費指数(東京)」のデータに、国交省が公表している「マンション着工戸数(東京都)」を重ね合わせたのが次のグラフ。
傾斜マンションの建設当時、「建築費指数(東京)」が上昇基調にあるなかで、マンションの着工戸数は現在よりも多く、月間4千~7千戸の水準であった。
傾斜マンション建設当時よりも、現在のほうがヤバい環境にある?
現在は、傾斜マンションの建設当時と比べると、マンションの着工戸数は少ないものの、建設費が異常なほどに上昇している。
着工後に建築費が大幅に上昇し、コストダウンに工夫の余地がなくなると、施工業者は自らの利益が低下することに甘んずるか、マンションの質を下げて自らの利益を確保するか、あるいはその両者の合わせ技に走るしかなくなる。
そもそも、建設労働者が十分に確保できないとなると、工期の遅れを取り戻すために余計なコストがかかるだけでなく、仕事が雑にならざるを得ない。
だから、傾斜マンション建設当時よりも、最近竣工したマンションや現在建設中のマンション、これから着工するマンションのほうが、品質が確保されているか気になるのである。
でも、そんなことは、お構いなしに、「 今日もどこかでマンション建設(写真集)」