マンション広告で「駅ペデストリアン直結」を喧伝しているのに、将来に渡ってペデストリアンデッキの通行を保証してくれない、という話。
駅ペデストリアン直結の免震タワーマンションの広告
物件概要
【第1期 本広告】東京駅直通27分、駅徒歩4分。総戸数759戸、44階建。販売戸数340戸、1LDK(41.36m2)~4LDK(134.81m2)。販売価格2,718万円~14,258万円、最多価格帯5,900万円台(29戸)。平成32年4月下旬竣工(本チラシ掲載日の2年1カ月後)。
- 17年9月15日(金)の物件と同じ。
新聞半紙大の広告のオモテ面に、駅ペデストリアン直結が謳われている。
総武線、最大級・最高峰の免震タワー
駅ペデストリアン直結
注釈に目を凝らすと、気になる文言が並んでいる。ペデストリアンデッキは将来に渡って通行を保証するものではないというのだ。
※本物件2階部分と〇〇(=複合商業施設)をつなぐ屋根付きのペデストリアンデッキがお引渡時に新設される予定です。
ペデストリアンデッキは行政との協議等により変更となる場合がございます。
掲載の情報は2018年3月時点のものであり、ペデストリアンデッキは将来に渡って通行を保証するものではありません。なお、公道利用ルートは、徒歩5分となります。
タワーマンションの2階から、新設される「屋根付きペデストリアンデッキ」をわたって、さらに複合商業施設の2階を通り抜けると駅に4分でたどり着けるという計画。公道を利用するよりも1分近い。
↓ こんな感じ
とっても便利そう。
ではなぜ、ペデストリアンデッキの通行を将来に渡って保証してもらえないのか?
市の想定「短期間で取り壊しになりかねない」
市教育委員会(平成29年第11回定例会、11月22日開催)の会議録からそのヒントが読み取れる。
文化ホール(複合商業施設のなかにある市所有施設)の改修工事に関連して、複合商業施設の権利を取得したM不動産が短期間で建て替える可能性を市の副技監が言及しているのである。
学校教育部・生涯学習部副技監
今回、□□文化ホールを20年間しっかり施設維持をしていくための大規模改修工事として、20数億円あまりのお金が予算化された。しかし、今回、M投資顧問からディベロッパーであるM不動産株式会社に、信託受益権という土地建物の権利関係が全面移行した。
取得をしたM不動産株式会社は、「地域の活性化やその賑わい等に社を挙げて、総力を挙げて取り組んでいきたい」という意向を市に示した。
このことから、20年間施設を維持するための工事費20億円という限りある税を投入して改修工事を行っても、短期間で取り壊しになりかねないということを、市として考えた。(以下略)
さらに、同副技監は、M不動産が「全更新・建替え」という方針を出せば、協議を進めていくという受け身の姿勢を示している。
学校教育部・生涯学習部副技監
(前略)M不動産株式会社という日本有数の大手ディベロッパーが、「全更新・建替え」という方針を出せば、規模も含めた□□文化ホールそのもののあり方について、今、使っている方々の声なども拾いながらどのようなホールとしていくことが、N市の50年、100年先のN市の文化を守っていくことになるのか、ということについては教育委員会と連携をしながら協議を進めていくことが肝要であると思う、と回答
以上を簡単にまとめると、ペデストリアンデッキの接続先である複合商業施設の権利を取得したM不動産が同施設を建て替える可能性があるので、将来にわたる通行が保証できないということだ。
ペデストリアンデッキ利用不可になれば公道を利用すればいい
「タワーマンションの売主の1社にM不動産も含まれているのだから、将来通行不可になるなんてあり得ない」と普通は考える。
ただ、売ったら終わり、「釣った魚には餌をやらない」ということだって、なくはない。「信用を重んじる大企業がそんなことやるはずない」と想定外のことを考えようとしないのはその人の自由だが……。
いずれにせよ、5年、10年後先のことなんて誰にも分からない(N市の副技監も先を見通せていない)。
まあ、ペデストリアンデッキ直結利用ができなくなっても、1分増しの公道ルートを利用すればいいだけの話。最初からそのつもりでこのタワーマンションを購入すれば、腹も立つまい。
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(本日、マンション広告1枚)