暴風や豪雨、台風などによる大規模災害、そして大規模地震。
日本中どこに住んでいても、いつでも大規模な自然災害を被る可能性がある。
地名と大規模災害との関係を記した書籍3冊をご紹介。
『この地名が危ない』新書
京大文学部史学科卒(地理学)、地名に係る多数の著書を有する楠原佑介氏により「災害地名学」という興味深い学問の成果が紹介されている。
問題は、この桜島は桜の名所でもないのに、なぜ「桜島」と呼ばれるようになったのかということである。考えてみれば不思議な話である。
その答えは、「花が咲く」のサク(咲)はサケル(裂)と同じ語源で、「固く閉じていた蕾が開く」こと。春になると一斉に咲きそろう花もサク・ラ(ラは接尾語)であるが、時々、山頂の噴火口がサケ(裂)て溶岩と火山灰を噴き出す火山もサク(裂)ラなのである。それで人々に桜島と呼ばれるようになったのである。(P4/はじめに)
新潟県中越地震や阪神・淡路大震災、 関東大震災などに関わる地名が具体的に紹介されている。
『あぶない地名』災害地名ハンドブック
元建設省河川局防災課 徳島工事事務所副所長の経歴を持つ著者が、数十年にわたって災害に関わる地名を収集し、実際の現場を見て地名を分析。
その中から代表的な災害地名を約800選び、1冊の災害地名ハンドブックとしてまとめられている。
たとえば、秋葉原に関する説明は次のとおりだ。
(例)東京都千代田区外神田(旧称・秋葉原)江戸時代に人為的に防火用の空き地とされた所。
(p21/あ行)
なお、本書が完成する前に著者は亡くなっている。著者が残したメモや資料を基に、当時の編集担当者がそれらをできる限り利用して本書の原稿を作成したという。
『地名は警告する』単行本
有識者18名による共著。
北海道から九州・沖縄まで、 災害と地名との関係が紹介されている。
関東については、3名の有識者が執筆。
谷川彰英氏が「危険な低地地名」として、江東区、墨田区、江戸川区内の地名を紹介しているので抜粋しておこう。
危険な低地地名
東京にある地名から東京に隠された津波の痕跡を探ってみよう。津波に限らず水は高きから低きに流れるものだから、当然のこととして低地は水に弱いことになる。区名でも「江東区」「墨田区」「江戸川区」などは、まさに水にちなんだ区名となっている。そこにはかつてのウオーターフロントの名残を今に伝える貴重な地名が残されている。たとえば次のようなものである。
江東区 木場・深川・亀戸・大島・越中島
墨田区 押上・曳舟・向島
江戸川区 宇喜田・一之江・瑞江・小松川
葛飾区 柴又・亀有(P58/地名に隠された「東京津波」/関東)
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