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NHKスペシャル取材班『老いる日本の住まい』マガジンハウス

NHKスペシャル取材班による『老いる日本の住まい 急増する空き家と老朽マンションの脅威』マガジンハウス(2024/1/25) を読了。

23年10月1日と8日の2夜にわたって放送された「NHKスペシャル」の「老いる日本の“住まい”」(第1回第2回)が元ネタになっているので読みやすい。

朱書きは、私のメモ。


もくじ

最大の敵は「無関心」

あくまで自分の持ち物は自分の部屋のみで、共用部分を含めた管理は関知しない。そんな認識の区分所有者は少なくないのだという。

最大の敵は「無関心」

(前略)新しいマンションを建てて売ることに注力するデベロッパーにとって、売った商品がその後古くなってどうなろうが与(あずか)り知らない。また、不動産業界で老朽化について触れることは長らくタブーだった面もある。ある物件が老朽化していると知られてしまえば、中古市場での価値が落ちるからだ。

それは区分所有者にとっても同様で、15年前に『クローズアップ現代』でこの問題を取り上げた際には、取材に応じてくれる当事者を探すのにとても苦労したという。だが、もはやそんなことを言っていられる状況ではない――今回取材に協力してくれたのはそうした危機意識を持った人たちだった。
(中略)
今回、マンション管理関係者たちの口からよく聞かれたのが「最大の敵は”無関心”」という嘆きだ。あくまで自分の持ち物は自分の部屋のみで、共用部分を含めた管理は関知しない。そんな認識の区分所有者は少なくないのだという。「自分が生きている間もってくれればいい」といった言葉を高齢住人から告げられることもたびたびあるそうだ。この家に住むしかないのだから、とりあえず一日一日が平穏無事に過ぎていけばそれでいい、と。(以下略)

(P112-113/第3章 “2つの老い"に追い詰められるマンション)

※不動産会社は修繕積立金を抑えて新築マンションを販売するものだから、時間が経つにつれて管理組合の財政が苦しくなってくる。所沢市のように、条例で修繕積立金について均等積立方式を採用するよう努力義務を課している自治体もあることは、もっとしられてもいい(均等積立方式の採用を努力義務化(所沢市))。

50年の先送りの果て

「50年はもつ」という謳い文句のもとに売られてきたマンション。今、まさにその50年後を迎えているマンションの老いを指摘する、マンションみらい価値研究所の久保依子所長。

50年の先送りの果て

「このままで大丈夫だろうか」と思った住人がいても「声をあげたら管理組合のさまざまな業務を任されてしまうのでは」と躊躇し、業界も新築マンションを建てて売るという至上命令の中で見て見ぬふりをしてきた。行政も、街の人の流れを変えるほどの影響力を持つことすらある居住形態にもかかわらず、財産権保護の名目のもとに公共性の枠組みでマンションを捉えてこなかった。

久保所長は「今建てているものが50年後にはどうなっているか、売り手も買い手も行政も誰も考えないまま『50年はもつ』という謳い文句のもとにマンションが売られてきました。今、その50年後を迎えているのです」と指摘する。(以下略)

(P115-116/第3章 “2つの老い"に追い詰められるマンション)

※老朽化マンションの行きつく先は解体撤去なのだが、これがまたなかなか上手くいかない。多くの人が目をそらしてきた面倒な問題は、票につながりにくいので政治家の動きも鈍い。

そんな地味な問題に関心を寄せている政治家もなかにはいる。党首の立花孝志氏が参院選埼玉県選挙区補欠選挙に立候補し、参議院議員を自動失職したため繰り上げ当選したタナボタ議員。個人得票数が全国で2番目に少ない 浜田 聡氏である。詳しくは、「老朽化等マンションの建替え等促進策(政府回答)」参照。

本書の構成

5章構成。全246頁。

  • 第1章 縮小ニッポンで増え続ける空き家
  • 第2章 ニュータウンと“住宅すごろく"の着地点
  • 第3章 “2つの老い"に追い詰められるマンション
  • 第4章 子どもたちの世代にツケを残さないために
  • 第5章 住まいの終活を自分事として考える
  • 巻末付録 住まいの問題 解決へのはじめの一歩Q&A30

Amazon⇒『老いる日本の住まい 急増する空き家と老朽マンションの脅威

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2024年6月1日、このブログ開設から20周年を迎えました (^_^)/
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