南風時に都心上空を通過して羽田に到着するルートの運用が開始されたのは20年4月3日。
24年3月までの運用実績を可視化する。
※本記事は、南風時の都心低空飛行ルートのみが対象。南風時の川崎ルートと北風時の荒川沿い北上ルートは含まれてない(次図)。
※破線は「悪天時」ルート
※以下に示す各図表は、国交省が毎翌日(土日祝日を除く)「羽田空港飛行コース」HPで公開している「航跡動画」情報を元に、筆者が到着ルート別に1機ごとの機種・着陸時刻を拾い、可視化したものである。
- 【機/年】年々増加
- 【機/月】23年7月最多記録を更新
- 【機/日】Cルート、23年5月に最多記録を更新
- 【機/時】Cルート、23年2月に最多記録を更新
- 【機材】国交省見込みよりも大型機の割合が小さい
- ★雑感★
【機/年】年々増加
飛行機数は毎年増加している(次図)。
【機/月】23年7月最多記録を更新
南風時に都心上空を通過して羽田に到着するルートが運用された日数・機数の推移を下図に示す。
- 20年度
- 機数・日数ともに8月がピーク(23日間、1,800機超)。
- 機数・日数ともに9月以降大幅に減少し、南風運用が少ない1月がボトム(1日間、11機)。
- 21年度
- 日数・機数ともに、21年10月~22年1月は1年前よりも多い。
- 22年度
- 7月に過去最高の2千974機超を記録。
- 23年度
- 7月に過去最高の3千500機超を記録。
猛暑になるとゴーアラウンドが増えるというような事象は、20~23年の夏に発生しなかったといえる。なぜならば、夏場にゴーアラウンド率(=ゴーアラウンド回数÷飛行機数)が特に上昇したわけではないからだ(次図)。
【メモ】
- 気温が上昇して空気密度が低くなると、揚力が小さくなるので、操縦難度が上がりゴーアラウンドが増えると言われている。
- 21年1月のゴーアラウンド率が極端に高いのは、南風運用が1日(通過機数11機)しかなかったことの影響が大きい(GA1機÷11機⇒9.1%)。
猛暑に関連した記事については、以下参照。
【機/日】Cルート、23年5月に最多記録を更新
1時間当たりの通過機数の推移を下図に示す。
- 20年度
- 5月まで続いていた減便は、6月、7月と回復に向かい、8月初旬には、A滑走路到着ルートは1日あたり30機を、C滑走路到着ルートは1日あたり60機を超えた。
- 8月中旬を過ぎて機数が減少傾向の後、10月下旬から増加の兆候が見られたが、南風時の運用日数そのものが大幅に減少した。
- 21年度
- A滑走路到着ルートは、3月に最多記録を更新(3月27日:39機/日)。
- C滑走路到着ルートは、3月に最多記録を更新(3月27日:85機/日)。
- 22年度
- A滑走路到着ルートは、7月に最多記録を更新(7月30日:43機/日)。
- C滑走路到着ルートの機数が増加傾向。7月に最多記録を更新(7月26日:93機/日)。
- 23年度
- A滑走路到着ルートは、8月に最多記録を更新(8月18日:48機/日)。
- C滑走路到着ルートの機数が増加傾向。5月に最多記録を更新(5月13日:94機/日)。
【メモ】
- ところどころ機数が大幅に少ないのは、当日の運用時間が短かったことによる。
- 実機飛行確認の機数はflightradar24で、運用開始後の機数は「羽田空港飛行コース」の航跡動画をもとに調べた(以下、同じ)。
- 「羽田空港飛行コース」のシステムトラブルなどのため、下記のデータ欠損分は、flightradar24のデータで補填した。
- 21年3月の3日間(3/1、3/20、3/21)
- 23年7月4日間(7/18-20、24)
上図を月ごとの平均値・中央値に集計したのが次図。
- 20年度
- 新型コロナ水際対策として12月28日から全世界からの外国人新規入国停止した影響が出た。
- 1月に底を打ったあと、特にC滑走路到着ルートにおいて増加傾向が見られた。
- 21年度
- A・C滑走路到着ルートともに12月に大幅に減少。
※南風運用日数が減少していることに加え、オミクロン株の感染拡大を受け11月30日午前0時から全世界を対象に外国人の入国を禁止した影響が出ている。
- A・C滑走路到着ルートともに12月に大幅に減少。
- 22年度
- A・C滑走路到着ルートとも9~1月減少した。
※冬期は南風時の運用日数が減るため通過機数は少なくなる。
- A・C滑走路到着ルートとも9~1月減少した。
- 23年度
- A滑走路到着ルートは、10月に最多記録を更新(中央値:42.5機/日)
- C滑走路到着ルートは、7月に最多記録を更新(中央値:84.5機/日)
【機/時】Cルート、23年2月に最多記録を更新
1時間当たりの通過頻度の推移を下図に示す。
国交省の計画では、A滑走路到着ルートは1時間当たり14回(4分17秒ごと)、C滑走路到着ルートは1時間当たり30回(2分ごと)の頻度で飛ぶことになっている。
- 20年度
- 新型コロナの影響による減便が著しく、4月下旬以降、A滑走路到着ルートでは1時間当たり5機程度、C滑走路到着ルートでは1時間当たり10機程度だった。
- 6月、7月はA・C滑走路到着ルートともに回復に向かい、8月初旬にはA滑走路到着ルートは1時間あたり10機を、C滑走路到着ルートは1時間あたり20機を超えた。
- 8月中旬を過ぎて機数が減少傾向の後、10月下旬から増加の兆候が見られたが、南風時の運用日数そのものが大幅に減少した。
- 21年度
- A・C滑走路到着ルートともに増加から減少へ。
- 22年度
- C滑走路到着ルートは増加傾向にあり、2月に最多記録を更新(2月19日:32.7機/時)。ただし、12便/日。
※32.7機/時は国交省が説明してきた30機/時を上回っている。
- C滑走路到着ルートは増加傾向にあり、2月に最多記録を更新(2月19日:32.7機/時)。ただし、12便/日。
- 23年度
- A滑走路到着ルートの通過機数は、国交省が計画していた14機/時をたびたび超えるようになった。
- C滑走路到着ルートは、国交省が計画していた30機/時で頭打ちになっている様子が伺える。
【メモ】
- ところどころC滑走路到着ルートの通過頻度が跳ね上がっているのは、当日同ルートの運用時間が短かったことによる。
上図を月ごとの平均値・中央値に集計したのが次図。
- A滑走路到着ルートの通過機数の中央値は、国交省が計画していた14機/時を前後するようになった。
- C滑走路到着ルートの通過機数の中央値は、国交省が計画していた30機/時に近づいている。
【機材】国交省見込みよりも大型機の割合が小さい
機材区分別(小・中・大型機)の一日当たりの通過機数の推移を下図に示す。
- 20年度
- 4月初旬に45機前後飛行していた小型機は、4月下旬以降半減。中型機も同様の傾向が見られた。
- 6月以降8月中旬まで、小・中・大型機ともに機数が増加。8月中旬を過ぎて小・中・大型機ともに機数が減少傾向の後、10月下旬から増加の兆候が見られたが、南風時の運用日数そのものが大幅に減少した。
- 21年度
- 小型・中型機とも、12月に大幅に減少したあと増加傾向。
- 22年度
- 大型機が微増傾向。
- 23年度
- 大型機の微増傾向が続いている。
上図を月ごとの平均値に集計したのが次図。
小・中・大型機とも23年7月に最多記録を更新。23年8月以降、小型機と中型機の通過機数がほぼ同じ。
国交省の説明資料によれば、羽田空港で使われている飛行機は、小型機48%、中型機25%、大型機26%となっている(次図)。
FAQ冊子v6.2_P58
機材区分別の月間の通過機数割合の推移を下図に示す。
- 20年度
- 国交省データ(19年1月時点)と比べて大型機の割合が小さく、そのぶん小・中型機の割合が大きくなっている。
※計画通り運用されると騒音環境はさらに悪化することに要留意。
- 国交省データ(19年1月時点)と比べて大型機の割合が小さく、そのぶん小・中型機の割合が大きくなっている。
- 21年度
- 大型機の割合は10%前後で推移。国交省が見込んでいた26%を大きく下回ったままだ。小型機の割合が減少したぶん、中型機の割合が増加している。
- 22年度
- 大型機の割合が増加傾向。
- 23年度
- 小型機と中型機の割合が拮抗し始めたか。
毎年度、ボーイング737-800(小型機)の機数がダントツで多い(次表)。
※機材区分は概ね、大型機(300席以上)、中型機(200~300席)、小型機(200席未満)とした。
★雑感★
時間当たりの通過機数は、国交省の計画上限値でほぼ頭打ち。
南風の季節に向かって、インバウンドの増加により、通過機数と大型機のさらなる増加が予想される。
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