第212回国会(23年10月20日~12月13日)の衆議院の質問主意書を眺めていて、住まいに関する質問主意書があることに気が付いた。
国交省が2018年に「公営住宅管理標準条例(案)」から保証人条項を削除したにもかかわらず、いまだに「全国の3分の2以上の地方公共団体が保証人規定を残している」問題について。
馬場雄基 衆議院議員(立憲)が12月1日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
読みやすいように、一問一答形式に再構成。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。
馬場雄基 衆議院議員(立憲)
馬場雄基 衆議院議員
(1期、立憲民主党、元三井住友信託銀行行員、慶応卒、31歳)
我が国における家計の特徴として、住宅費の負担が重いことが指摘されている。
住宅ローン返済額を住宅費に含めない場合の住宅費過重負担率は15.0パーセント(埼玉大学・大津唯『住宅に関する社会指標国際比較の観点から』による)と、EU加盟国全体の数字よりもはるかに高くなっている。
「住宅に関する社会指標―国際比較の観点から―」P10 ※ピンクは筆者加筆
日本国憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するためには、住まいに関する負担を少しでも引き下げ、住まいに関する国民の不安を除去することが必要である。わが立憲民主党における若者の政治参加プログラム「りっけんユース」からも、住まいのような生活に必須のものを当たり前に享受できる施策が必要との提言を受けているところである。そこで、以下、質問する。
【問1】全国の3分の2以上の地方公共団体が保証人規定を残している。いまだに削除されていない理由?
賃貸住宅の賃貸借契約には、ほとんどの場合、保証人規定が存在しており、そのために、賃貸住宅への入居が困難となるケースが散見される。
民間住宅はともかく、国民にとっての「住まいのセーフティーネットの最後の砦」と言われる公営住宅については、国土交通省が、「公営住宅管理標準条例(案)」における保証人規定を、平成30年の改定に際して削除したところであるが、現在も全国の3分の2以上の地方公共団体が保証人規定を残している。
政府はその現状をどのように認識し、いまだに削除されていない理由をどのように考えているか。
【答1】家賃の滞納に係る懸念等によるものと考えている
お尋ねの「現状」については、一定数の地方公共団体において、地域の実情を総合的に勘案した結果として、御指摘のように「保証人規定を残している」ものと考えている。
また、お尋ねの「削除されていない理由」については、家賃の滞納に係る懸念等によるものと考えている。
【問2】いまだに保証人規定を削除していない地方公共団体に対して、削除を強く働きかけるべき
国は、いまだに保証人規定を削除していない地方公共団体に対して、その削除を強く働きかけるべきと考えるが、政府の所見を問う。
【答2】斉藤国交大臣「削除に向けた働きかけを強化してまいりたいと思っております」と答弁したとおり
お尋ねについては、令和5年2月20日の衆議院予算委員会第8分科会において、斉藤国土交通大臣が「まだ保証人規定が残っている地方公共団体に対して、削除に向けた働きかけを強化してまいりたいと思っております」と答弁したとおりである。
雑感(国交大臣の答弁、来年の成果に期待!?)
馬場雄基議員の写真を見るととっても若いことに気づく。東京13区で当選した土田慎氏と共に初の平成生まれの国会議員なのだ。
その若い議員が取り上げたのが、公営住宅の保証人問題。
質問主意書では「現在も全国の3分の2以上の地方公共団体が保証人規定を残している」と記されていたので、あらためて調べてみた。
国交省が2020年から毎年公表している「公営住宅への入居に際しての保証人の取扱い等に関する調査結果」に、「保証人を求める」「保証人を求めない」事業主体の件数が掲載されている(次図)。
「公営住宅への入居に際しての保証人の取扱い等に関する調査(R5.4.1時点 )」より
4か年の推移を可視化したのが次図。
保証人を求める事業主体は全体の7割(23年4月1日現在)。あまり減っていない。
公明党出身の斉藤国交大臣は「(保証人規定の)削除に向けた働きかけを強化してまいりたいと思っております」と答弁。来年の成果が期待される……。
ちなみに、東京都では2019年9月に条例が改正され、保証人条項が削除された。
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