アスベストが引き起こすとされるがん、中皮腫による死亡数はこの20数年で約3倍になったという神戸新聞の記事。
中皮腫死亡については、マスコミ報道が少ないので調べてみたら……。
※初投稿21年1月19日(更新25年9月19日:24年データ反映)
皮腫患者、30年まで増加の恐れ(神戸新聞)
アスベストが引き起こすとされるがん、中皮腫による死亡者数はこの20数年で約3倍になったという。
中皮腫患者、30年まで増加の恐れ
アスベスト(石綿)が引き起こすとされるがん、中皮腫による死亡者数はこの20数年で約3倍になった。都道府県別で見ると、兵庫県、大阪府は突出して多い。中皮腫の中で8割程度を占めるとされる胸膜中皮腫は、予後が悪い。(以下略)
(神戸新聞NEXT 1月14日)
20数年で約3倍という数字はどの程度のものなのか。
兵庫県、大阪府は突出して多いというのだが、26年前の阪神・淡路大震災の影響なはいのか。
アスベスト絡みの中皮腫死亡については、マスコミ報道が少ないので調べてみた。
中皮腫による死亡数:2021年がピーク!?
まずは、基本情報の確認から。
アスベスト輸入量と中皮腫死亡数の推移を下図に示す。
アスベスト輸入量は、49年に戦後初の輸入が再開されて第1次オイルショックでピークを迎えた後、89年の大気汚染防止法の改正により急激に減少。さらに95年の阪神・淡路大震災の年に労働安全衛生法が改正され(青・茶石綿禁止)、06年の労働安全衛生法施行令改正(石綿使用の全面禁止)により年間輸入量ゼロとなった。
一方、中皮腫による死亡数は、年々増加し、ピークの21年1,635人は95年の3.3倍になった。アスベスト輸入量のピーク74年から47年の潜伏期間を経て、21年に中皮腫による死亡数もピークを記録したように見えるのだが、収束に向かうのか……。

データ出所
- アスベスト輸入量:日本石綿協会「石綿輸入実績」2007年3月16日
- 中皮腫死亡数:厚労省「都道府県(特別区-指定都市再掲)別にみた中皮腫による死亡数の年次推移(平成7年~令和6年)」20259月16日発表
中皮腫の潜伏期間が平均約40年であることを勘案すると、今後の死亡数は減少に向かうのか。あるいは阪神・淡路大震災や東日本大震災など、大震災によって発生するアスベストの被害者が新たに加わるのか。
※震災アスベストについては、「首都直下地震、アスベストの健康被害想定は?」参照。
中皮腫による死亡率:西日本が高い
次に、中皮腫による死亡数の地域分布を確認する。
24年の死亡数は大阪(164人)、東京(135人)、神奈川(125人)、兵庫(102人)の順に多い(次図)。

データ出所:同上
大都市は人口が多いので、そのぶん中皮腫による死亡数が多くなる。そこで、人口10万人あたりの中皮腫による死亡率で比較してみたのが次表。
西日本の死亡率が高い傾向が見られる。兵庫の死亡率が高いのはクボタ旧工場の影響による。また、西日本の死亡率が高いのはかつて造船関連でアスベストを使っていた工場が多かったことによるのではないか。

データ出所
- 死亡率=(中皮腫死亡数÷都道府県別人口)÷100,000
- 中皮腫死亡数:前掲
- 都道府県別人口:令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省 2025年9月16日発表
2024年のデータを地図に落としたのが次図。
死亡率の高い地域は北海道と西日本である様子が一目瞭然であろう。

27都道府県では、結核よりも死亡率が高い
10万人あたりの死亡率が最も高い山口(2.78)や2番目の島根(2.22)といった数字は、他の死因と比べてどの程度のものなのか?
厚労省が毎年公表している「人口動態調査」のうち2024年確定数(参考表(都道府県別順位))によれば、人口10万人あたりの主な死因の死亡率を全国平均でみると、癌 319.3人、老衰 172.0人、心疾患 188.2人、脳血管疾患 85.5人、肺炎 66.6人などとなっていて、中皮腫の死亡率とは桁が違う。
そこで、もう少しイメージしやすいように、毎年約10,000人が新たに発症し約1,500人が亡くなっているという結核(政府広報)と交通事故の死亡率と比較してみた(次図)。
中皮腫による死亡率が交通事故による死亡率を上回る自治体はないが、結核による死亡率を上回る自治体はあった。
次の27都府県である(中皮腫/結核)。
- 山口(2.8/1.2)、愛媛(1.8/0.6)、島根(2.2/1.3)、広島(1.8/1.0)、高知(1.7/0.9)、香川(1.6/0.8)、石川(1.3/0.6)、滋賀(1.7/1.0)、佐賀(1.3/0.6)、北海道(1.5/1.0)、山形(1.1/0.7)、福井(1.4/1.0)、兵庫(2.0/1.6)、富山(1.3/1.0)、埼玉(1.3/1.0)、福島(1.2/0.9)、岐阜(1.1/0.9)、岡山(1.3/1.1)、奈良(1.5/1.3)、神奈川(1.1/0.9)、栃木(1/0.8)、茨城(1.2/1.0)、鳥取(1.1/1.0)、大阪(1.9/1.8)、宮崎(1.1/1.0)、長崎(1.9/1.8)、千葉(1.2/1.1)

データ出所:厚労省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」の「参考表(都道府県別順位)」25年9月16日 発表
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