機械式駐車場の取替え工事にいくらかかるのか。
国交省は目安となるような情報を提供していない。
住宅金融⽀援機構が公開している「⻑期修繕ナビ」(40年間の修繕積立金会計の収支シミュレーションができる無料サービス)の解説書に記載されているデータが参考になるということをご存じだろうか。
※投稿23年8月22日(更新23年8月24日)
機械式駐車場を平面化するべきか、取替えすべきか
マンションが竣工して10年を過ぎたあたりから機械式駐車場の空き状況が気になり、15年に向かって金食い虫の機械式駐車場の一部を平面化するべきか、あるいは取替えすべきか管理組合を悩ませることになる。
実際に平面化工事を実施したマンションは竣工から18~20年がピークとなっている(次図)。
「消えゆく機械式駐車場(21年7月27日)|マンションみらい価値研究所」より
※マンションみらい価値研究所は、2019年10月に大和ライフネクストによって設立された、マンション管理会社初の総合研究所。
そもそも機械式駐車場の取替え工事にいくらかかるのかが分からない。
機械式駐車場に係る修繕工事費については、国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 」に詳しく記されている(次図)。でも、取替工事費については国交省は目安となるような情報を提供していない。
「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和5年4月追補版)」P8(PDF:547KB)
では、機械式駐車場の取り換え工事係る公的データが全くないのかと言えば、そうではない。じつは住宅金融⽀援機構が公開している「⻑期修繕ナビ」(40年間の修繕積立金会計の収支シミュレーションができる無料サービス)の解説書(PFD:3.8MB)のなかに機械式駐車場設備の取替工事費に係る算出データが公開されているのである。
住宅金融⽀援機構が公開している機械式駐車場の取替工事費の算出式
「長期修繕ナビ」は、住宅金融支援機構が融資したマンション共用部分リフォーム融資の大規模修繕工事費データ約1,500件(2013~2018年度)が元になっている。
機械式駐車場設備の取替工事費は、機械式駐車場の設備一式の交換を想定し、「台数」を変数として、以下の式により算出されている(P36~37)。
- 推定取替え工事費=取替え工事費単価[円/台]×台数×物価係数×地域係数
- 取替え工事費単価(円/台)=台数に応じた算出額 + 固定額
各式に記された項目につき、具体的な数式や値を以下に示す。
①台数に応じた算出額
※機械式駐車場台数の増加に伴い、設備規模が増加する一方で、1台あたりの工事単価は、スケールメリットにより減少する。
②固定額:機械式駐車場設備工事(取替)の固定額 : 1,104,978
③物価係数(P48~49)
④地域係数(P50~51)
機械式駐車場の取り換え工事費(試算結果)
上述した数式や値を使って算出した推定取替え工事費(場所は東京、実施は22年度)を次表に示す。
ザックリ言うと、機械式駐車場の推定取り換え工事費は100台で1.億円、200台で2.2億円、300台で3.3億円。
上表を元に、横軸を台数、縦軸を推定取替え工事費として描いたのが次図。
※本資料の作成には慎重を期しているが、これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。
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