参院・災害対策特別委員会において4月14日、下野六太 参議院議員(公明)が「首都直下地震等発生時に懸念されるエレベーターへの閉じ込めに対する基本的な考え方」を取り上げていた。
会議録・ネット中継録画をもとに、整理しておいた(約2千文字)。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
下野六太 参議院議員(公明)
下野六太 参議院議員
(公明党、1期、 元中学校教員、福岡教育大院卒、58歳)
下野:高層マンション等エレベーター、閉じ込めに対する考え方?
公明党の下野六太でございます。どうぞよろしくお願いします。
本日は、多くの方々からいただいております災害に対する不安な声、心配な声を、具体的な形で質問をさせていただきたいと思います。地元からの要望等も届いておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
まず、先ほどからもう話題に上がっております首都直下型地震、南海トラフもそうなんでしょうけど、首都直下型地震において恐らく発生する可能性が高いと言われている、都会の脆弱性の中で、特に高層マンション等におけるエレベーターにおける閉じ込めについて、多くの方から不安な声をいただいております。
基本的にどのような仕組みでそれを救出するのか、閉じ込めに対する考え方を示していただきたいと思います。
大臣:閉じ込めが起こりにくいエレベーターの普及を図ること
谷公一 内閣府特命担当大臣(防災)
(自民党、7期、元兵庫県職員、明大卒、71歳)
※世襲2世議員(谷洋一氏 ― 谷公一氏)
お答えをさせていただきます。
大規模地震発生時におけるエレベーターの閉じ込め対策は大変重要な課題であると認識しております。現在、関係省庁や事業者団体などと連携して対策を進めているところであります。
基本的な対策の考え方といたしましては、まずは、閉じ込めの発生を防止する、閉じ込められないということで、1つは、エレベーターのバランスを取っている釣合いおもりの脱落防止などの耐震を強化する措置、また、緊急停止する場合も、最寄り階まで運転し、自動で扉を開放する機能を搭載するなど、閉じ込めが起こりにくいエレベーターの普及を図ることとしております。
また、仮に地震発生時にエレベーターの閉じ込めが発生した場合は、エレベーター保守事業者による救出、復旧作業を原則としつつ、仮に保守事業者の到着が著しく遅くなる場合などは、消防機関においても救助活動を実施することとしているところであります。
先日ではなくて少し前の、平成30年の大阪北部地震では、エレベーターの閉じ込め事案がたくさん発生しました。データによりますと、346件も発生しているところでございます。一部では救出、復旧への対応に長時間を要した、3時間を超えたというのが13%もあったということでございます。これらを踏まえまして、初動対応のための体制整備や、閉じ込めに備え、水、ライト、非常用トイレなどが入った防災キャビネットをエレベーター内へ設置する、そういったことを促進しているところであります。
引き続き、関係省庁等と連携し、対策を進めてまいりたいと思っております。
下野:高層マンションは都内にどれくらいある?
ありがとうございます。
もうまさに備えあれば憂いなしが当てはまるかというふうに思っておりますので、もう必ずそういう事態があるということは想定した上で備えの方をお願いしたいというふうに思います。
消防法では、高さ31メートルを超える建築物を高層建築物と定義をされている。そして、建築基準法では、高さ31メートル以上、階数にして約10階以上のマンションが高層マンションとなっていると思います。
高層マンションは都内にどれくらいあるのでしょうか。
消防庁審議官:70410棟ございます
鈴木建一 消防庁審議官(1991年厚生省入省)
お答え申し上げます。
今御指摘いただきましたように、消防法第8条の2におきまして、高さ31メートルを超える建築物を高層建築物と定義をいたしております。
消防庁におきましては、各消防本部から消防法上の防火対象物の数の報告を受けておりまして、マンションなどの共同住宅の用途のみに供されている高層建築物は、東京都内で令和4年3月末現在で4000、失礼いたしました、70410棟ございます。
なお、共同住宅以外の用途が含まれる建築物に該当するマンションの数は、消防庁においては把握いたしておりません。
下野:地震等の災害発生時、高層マンションの避難については?
ありがとうございます。
マンションだけだと70410棟ということで、そこは複合ビルだと把握はできていないということで、要するに、下に店舗等が入っていたりオフィス等が入っていたりする、その上層階に人が住んでいる、これはその数には含まれていないということですから、それらを含めると相当数の数が都内にはあるということでありますので、人が住むということに関してはマンションであろうと複合ビルであろうと私は一緒だと思っていますので、そういった方々に対してのしっかりとした備えを、準備をするべきではないかなというふうに思っております。
地震等の災害発生時、高層マンションの避難についてはどのようになっているのでしょうか、教えていただきたいと思います。
内閣府政策統括官:避難所や安全な親戚宅などに身を寄せていただく
榊真一 内閣府政策統括官
(1988年建設省入省、東大法卒、58歳)
お答え申し上げます。
高層マンションの避難対策につきましては、消防法の規定に基づき、マンションの管理組合が消防計画を作成し、避難に必要な設備を維持管理するとともに、年1回以上の避難訓練を行うこととされております。
大規模地震が発生した際の避難でございますが、まずは身の安全を確保していただいた上で、揺れが収まり、当該マンションにおいて引き続き安全に生活を続けられるのであれば、自宅にとどまっていただくことも考えられると思います。
他方で、高層マンションのエレベーターが停止したり建物が損傷するなどして当該マンションで生活することが困難な場合には、避難所や安全な親戚宅、知人宅などに身を寄せていただくことになると考えております。
下野:最悪の事態を想定した上で対策をしっかりと練っていきたい
ありがとうございます。
便利さと快適さと危険とは紙一重の関係にあるのではないだろうかと私は危惧しています。そういった場合の最悪の事態を想定した上で対策をしっかりと練っていきたいなというふうに思っておりますので、是非ともよろしくお願いしたいと思います。
雑感
事前に公開されていた下野議員の質疑項目のひとつに「首都直下地震等発生時に懸念されるエレベーターへの閉じ込めに対する基本的な考え方」があった。
タワマン住民やタワマンの購入を検討している人にとって関心が高そうなテーマである。
5月16日に公開された議事録を読むと、与党議員としての当たり障りのない質疑でもの足りなさが否めないのだが、多少の成果はあった。具体的には次の2点。
- 都内には高さ31mを超える高層マンションが7万410棟もあること
- 共同住宅以外の用途が含まれる建築物に該当するマンションの数を消防庁が把握していないこと
1階に店舗や事務所が入っている下駄ばきマンションにお住まいの方は、大規模震災時に消防の対応が手薄にならないことを祈るしかないのか……。
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