不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


羽田新ルート|品川区議会、請願・陳情を葬った議員らの言い分

品川区議会の建設委員会は2月27日、これまで「継続」(≒棚ざらし)扱いしてきた羽田新ルートに係る請願・陳情14件を審議した結果、すべて「継続」扱いとした。

現在の区議の任期は4月の統一地方選挙で満了となることから、請願・陳情14件の「継続」は事実上の廃案を意味する。

2月27日に開催された建設委員会の議事録が公開されたので、請願・陳情を葬った議員らの言い分を整理しておいた。


もくじ

※敬称略


請願・陳情14件と議員投票行動の内訳

まず、請願・陳情14件の具体的な件名を以下に示す。

  • 請願
    • 20年(第3号)羽田増便による新都心飛行ルートの中止・撤回に関する請願
    • 22年(第14号)品川区議会が国に対し羽田新飛行ルートは早急に運用停止するよう意見書を提出することを求める請願
    • 22年(第17号)航空需要が回復したとしても、羽田新飛行ルートは必要無くなりました、よって国に対し運用停止を求める請願
    • 23年(第4号)住民の生活と命を守るため、国に対し羽田新飛行ルートを早急に一旦海上ルートへ戻し、再考を求める意見書提出の請願
  • 陳情
    • 19年(第37号)区議会決議を尊重して国交省に撤回を求めるよう区長に求める陳情
    • 20年(第21号)羽田新飛行ルートの本格実施飛行の中止を、品川区から国交省に求めてくださいの陳情
    • 20年(第22号)令和2年3月29日以降の「羽田新ルート」運用について「都心上空飛行ルート」の「海ルート」への変更を求めることについての陳情
    • 20年(第28号)羽田空港国際線増便の目的消失による、新飛行経路の都心低空飛行停止を国に望む陳情
    • 22年(第4号)羽田空港新ルート運用の一時凍結を求める陳情
    • 22年(第8号)羽田空港新ルート運用の一時凍結を求める陳情
    • 22年(第9号)コロナ禍のもとで羽田空港への外国人客が激減している中、都心ルートを一時凍結し、従来ルートにもどすことに関する陳情
    • 22年(第10号)羽田空港への着陸航路について「新ルート」運用の一時停止を議会の総意として国土交通省に提言することを求める陳情
    • 22年(第11号)羽田空港新ルート運用の一時凍結を求める陳情
    • 22年(第21号)羽田増便による都心航路上の航空機から落下物が相次ぐ事態に関する陳情

次に、建設委員会(8人)における議員の投票行動の内訳を以下に示す。

委員長を除く7人中5人が「継続」票を投じたことで、事実上の廃案になった。

建設委員会(8人)における議員投票行動の内訳
※横山由香理議員(無所属)は、14年10月5日の品川区議会議員補欠選挙で、自民党品川総支部の公募当選第1号。22年5月27日付けで「自民・無所属・子ども未来」が解散したことにより、無所属となった。

請願・陳情を葬った議員らの言い分

自民、公明、無所属の3人の言い分は、いずれも「固定化回避」「区民アンケート」の状況を見る必要があるということで「継続」としている。

※自公議員のために編み出された「固定化回避」というマジックワードが有効に機能している。森沢区長が編み出した「区民アンケート」もしかり。

芹澤(自民):固定化回避検討会、全区民にアンケートの様子を見て

芹澤裕次郎 議員 議員紹介/品川区議会HPより
芹澤裕次郎 議員(自民党、区議2期、行政書士、日大(夜間)卒、33歳)

継続でお願いいたします。
一括ではないということではありますが、重複することもあるので、先に理由を述べさせていただきます。

この羽田新ルートについては、まず、あくまでも国策ということがまずスタートで、国のほうで判断 をしていただくということがもともとの議論のスタートだと思います。その上で、品川区の上空を飛ぶ、非常に区民の不安もあるということで、我々も自民党の国会議員の方にお話ししたりとか、国交省に出 向いたりとか、様々させていただいて、それ以外にも議会の場で立場を述べようということで、皆さん にもお願いして、全会一致で決議をさせていただいたところであります。


固定化回避検討会が出来上がって、その様子を見ようということで趣旨採択がこれまで続いてまいりましたが、先般行われた区長選において、新たな新区長から、羽田新ルートに対しては、全区民にアンケートをとる、それをもって、また新たな動きがかかるということでお話を伺っておりますので、それについては様子を見て、区議会だけではなくて、品川区としての動きをこれから決めるものだと思っておりますので、継続でお願いいたします。

金野(公明):固定化回避の検討会、区民アンケート、見た上で

金野孝子 議員(公明) (議員紹介/品川区議会HPより)
金野孝子 議員(公明党、区議4期、元幼稚園教諭、蒲田保育専門学校卒、59歳)

今回は結論を出したいところですが、以下の観点から、継続とさせていただきたいと思います。

1つは、請願の内容、今の質疑のやり取りもお聞かせいただきましたけれども、お気持ちとしては分かる部分と、事実として少し違った認識をされている部分もあるのかなということが1点。

それから、固定化回避の検討会、これは私どもも区議会として求めてきた中で行われている検討会で、たとえ時間がかかったとしても、まだ結論が出ていないという、こういう状況です。

もう1点が、これから区民アンケートが、羽田空港のこの問題についても区民の方のご意見を聞くという区の姿勢もありますので、そうしたこともきちんと見た上で考えていかなければいけない、結論を出すのであればそうしたことも状況が必要かなと考えるところから、継続とさせていただきます。

横山(無):固定化回避、区アンケート、見守っていくことが重要

横山由香理 議員(無所属横山ゆかり品川区議会議員HPより)
横山由香理 議員(無所属、区議3期、自民党品川総支部の公募当選第1号、都立日比谷高校卒、42歳)

第6回固定化回避に係る技術的方策検討会は、本年夏から秋頃の開催が予定されているとの説明がありました。また、今定例会の議論では、区から区民アンケートの方向性が示されました。

現時点においては、今後、区がアンケートを適切に進めていく過程を見守っていくことが重要だと考えます。引き続き区民の方々のお心に寄り添い、丁寧に説明、確認していく必要があると考えますので、継続でお願いいたします。

羽田新ルートに係る請願・陳情が採択されない構図

品川区議会のパワーバランス(自公は50%だが…)

品川区議会では40人のうち自公は20人(50%)だが、自公補完勢力を含めると5割を超えている(次図)。

パワーバランス(品川区議会)

建設委員会の構成メンバー(民意が反映できない歪な構造)

19年区議選改選以降の建設委員会の構成メンバーの履歴を次表に示す。

上述のように、品川区議会40人に占める自公の割合は50%(20人)だが、建設委員会(定数8人)は委員長(公明)を含め自公が62%(5人)を占めるという、民意が反映できない歪な構造となっている。羽田新ルートに係る請願・陳情がなかなか採択されない状況もうなずける。

委員長に公明党の議員を担ぎ、副委員長以下を自民が牛耳るというのは、どこかの組織に似ていないだろうか……。

建設委員会の構成メンバー履歴

※建設委員のような常任委員の任期は1年(品川区議会委員会条例 第2条)。建設委員会の委員は、あべ祐美子委員(21年7月都議選⇒当選)、大沢真一副委員長(22年4月7日ご逝去)、西本たか子・石田秀男委員(22年10月区長選⇒落選)というように度々欠員状態が発生している。

 あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.