東京消防庁は毎年、「火災の実態」として「高層共同住宅の火災状況」を公表しているので可視化してみよう。
数字が見せるのは「安全神話」の裏側かもしれない。都市生活のリスクを、データから読み解こう。
※初投稿2022年9月8日(更新2025年8月31日:2023年データ反映)
「ぼや」、11階以上の住戸で年間40~60件程度発生
令和2年版から令和6年版(2019~2023年データ)までの5か年のデータのうち高層共同住宅に係る「火災件数」の内訳を可視化したのが次図。
「ぼや」は、11階以上の住戸では年間40~60件程度、10階以下の住戸では年間100~130件程度発生している。

「ぼや」の多さは、火災報知器やスプリンクラー、住民の初動対応が機能している証だろう。特に高層階は消防設備が厳格に義務付けられており、部分焼を抑えていると考えられる。
しかし安心はできない。高層階の火災は避難に時間がかかる。部分焼でも一歩間違えば被害が拡大する。2023年、11階以上で発生した部分焼7件。この数字は決して軽視できない。
出火原因トップはガステーブル
次に出火原因を見よう。5年間の高層共同住宅火災を原因別にまとめたのが下図である。

ガステーブルがトップなのは、日常的な調理の頻度を考えれば納得だ。特に低層階の単身世帯や高齢者では、コンロの消し忘れが起きやすい。
「たばこ」も根強い問題で、ベランダでの喫煙が火災につながるケースも想像できる。
「放火」の変動は気になるところ。2020年の急増は、コロナ禍のストレスや社会不安が背景にあるのかもしれない。
東京の暮らしと火災リスク
東京の高層住宅は、快適さと危険のはざまで揺れている。データの9割は「ぼや」だ。だが件数は増加傾向にあり、出火原因の多くは日常の行動に潜む。
低層階の古い建物には老朽化のリスクがある。高層階には避難困難という構造的な課題がある。それぞれの住まいに合わせた備えが求められている。
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