2020年に都内で発生したタワマン火災195件のうち火元の約3割(61件)が11階以上の住戸であったという、とてもインパクトがある数字がネット記事で紹介されていた。
東京消防庁の元データで確認してみたら……。
タワマン火災195件、火元3割が11階以上住戸
令和2年に東京都内の高層共同住宅(=いわゆるタワマン)で発生した火災は195件あり、そのうち11階以上の上層階住戸が火元となったものは61件と全体の約3割を占めているというネット記事。
もし「タワマン火災」が起こったら?…住民たちが強いられる、超不自由生活
(前略)東京消防庁によると、令和2年に東京都内の高層共同住宅(=いわゆるタワマン)で発生した火災は195件あり、そのうち11階以上の上層階住戸が火元となったものは61件と全体の約3割を占めています。
出火原因として最も多いのは「ガステーブル(キッチン)」からの出火で、次いで「放火」「たばこの不始末(寝室等)」となっています。たとえ耐火・防災性に長けた建物であっても、人為的なミスや悪意による火災のリスクは抑えられません。
(以下略)
幻冬舎のグループ企業が富裕層を主要読者ターゲットとして運営している「幻冬舎ゴールドオンライン」に掲載されたネット記事。2020年に都内で発生したタワマン火災195件のうち火元の約3割(61件)が11階以上の住戸であったという、とてもインパクトがある数字である。
「3割」という数字はミスリード
念のため、東京消防庁HPの元データを確認してみよう。
たしかに「令和3年版 火災の実態」のP162に「表 7-1-3 高層共同住宅の火災状況」として、当該データが記されている(次表)。
タワマン火災195件のうち火元の約3割(=61戸÷195件)が11階以上の住戸であるという計算に間違いはないのだが、「3割」という数字はミスリードしていないだろうか。
要因のひとつは、タワマン火災195件の階建て分布が不明なこと。たとえば、20階建てと30階建てのタワマンとでは11階以上に占める住戸数の割合が異なるので、「約3割」の意味合いが異なってくる。タワマン全棟数・全戸数という母数を示したうえで、丁寧な分析が求められる。
要因の二つ目は、非タワマンとの比較がないこと。10階建てのマンション火災はどの階の住戸から出火が多いのか、タワマンとの違いを知りたいところだ。
ガステーブル等からの出火には要注意
東京消防庁は「令和2年版」以降、同様のデータを公開している(令和元年版以前は、高層共同住宅に係る同様のデータは公開されていない)。
「令和2年版」、令和3年版、そして最新版である「令和4年版」(22年8月17日公開)までの3か年のデータのうち高層共同住宅に係る「火災件数」の内訳を可視化したのが次図。
3か年のデータのうち高層共同住宅に係る「主な出火原因」の内訳を可視化したのが次図。
ガステーブル等からの出火には要注意!
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