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開示請求!「滑走路処理能力算定手法に関する調査」報告書をひも解く

成田・羽田空港では20年11月5日から、新しい管制方式(後方乱気流管制方式)が導入されている。同方式を活かし航空機の間隔を詰めることができれば羽田新ルートの増便分を吸収できる可能性がある(羽田新ルートの必要性がなくなる)。

そこで、国交省が昨年度委託した「滑走路処理能力算定手法に関する調査」に係る報告書を開示請求してみた。

※以下長文。羽田新ルート問題に詳しくない方は、文末の「雑感」だけお読みいただければと。

※投稿22年7月15日(追記22年8月23日


もくじ

国交省「成田国際空港以外の空港に影響を与えるものではございません」

羽田低空飛行見直しのための議員連盟」は衆議院第一議員会館で22年5月18日、氷塊落下事案など、国交省へのヒアリングを実施。

このときの6つの議事のうちのひとつが「滑走路処理能力算定手法に関する調査について」。

国交省に事前に提示していた質問内容は次のとおりだ。

昨年外注委託した滑走路処理能力算定手法に関する調査について 
その結果は羽田空港にも適用され、処理能力に影響を与えることになるのか。 

 

ヒアリング当日の国交省と質問者(K氏)とのやり取りにつき、YouTube動画「羽田低空飛行見直しのための議員連盟 総会」(1時間28分)をもとに、以下に書き起こす。

国交省の説明
(説明する国交省担当者)

国交省成田国際空港以外の空港に影響を与えるものではございません

  • この滑走路処理能力算定手法に関する調査は、今後予定されております成田国際空港の3本目の滑走路の供用を見据え、令和3年度に外注委託し調査を実施したものでございます。
  • これは成田国際空港に特有の滑走路の配置を前提として、滑走路処理能力をどのように考えるのか、その方法や効果および課題を調査したものでございます。
  • そのため成田国際空港以外の空港に影響を与えるものではございません

K氏成田空港限定ルールと書かなかったら羽田空港に適用できますよね?

※国交省がピント外れな回答(航空機の脚下げ)をしようとしたので、K氏が再度、以下の質問をした。

  • 滑走路処理能力算定手法、これを見直したっていう、これを外注したと。それについては羽田空港には適用する見込みはない。
  • 成田空港の運用の改善、C滑走路(3本目の滑走路)は今工事中ですけれど、それだけのために使うんだという説明がありました。
  • ということは管制のやり方をマニュアル化している……、正確に言いますと「管制業務処理規程」という300数十ページ(PDF:5.5MB)のすごいドキュメントがあるんですけど、その中に滑走路の処理能力を算定するには運用ルールを一部変えるわけですよね。その変えるポイントというのは成田空港にだけ適用されるローカルルール、特別ルールとして書かれるということを意味するんでしょうか、ということです。
  • 逆に言えば、成田空港限定ルールと書かなかったら羽田空港に適用できますよねっていう確認です。

国交省成田空港独自のルールというものもまったく起こり得ないということはないと考えております

  • 失礼いたしました。
  • この滑走路処理能力算定手法にかかる調査については、先程ご回答した通り、成田国際空港以外の空港に影響を与えるものではないとお答えしております。
  • 実際、この調査の結果と今後の実際、具体的に3本目の滑走路が出来た時にどのような管制運用を行なっていくのかというのは当然ながら今現行にある管制方式、「管制業務処理規定」の中のルールに従って検討していくことになります。
  • ただし、当然さまざまな運用方法を考える中で成田空港独自のルールというものもまったく起こり得ないということはないと考えておりますので。その場合については成田空港に特化したルールというものを策定すると。
  • 実際のところ、羽田空港に特化したルールというものも管制方式基準の中には存在していることについて申し述べさせていただきます。

 

以上のやり取りををザックリまとめると、次のようになる。

  • 国交省が昨年委託した「滑走路処理能力算定手法に関する調査」は、成田国際空港の3本目の滑走路(C滑走路)の供用を見据えて実施したものであって、その結果は成田国際空港以外の空港に影響を与えない、というのが国交省の説明。
  • その説明に対してK氏は、滑走路の処理能力算定ルールを変更する場合「管制業務処理規程」に記載することになり、成田空港限定ルールの旨を明記しなければ、羽田空港にも適用できるのではないかと疑問を投げかけた。
  • それK氏の疑問に対して国交省は、「成田空港独自のルールというものもまったく起こり得ないということはない」(≒羽田空港には適用できないルールになり得る)という、曖昧な回答でお茶を濁した。

国交省に「滑走路処理能力算定手法に関する調査」報告書を開示請求

国交省が昨年委託した「滑走路処理能力算定手法に関する調査」とは、国交省航空局長が21年8月23日に一般競争入札として公告した事案。5社が応札し、航空交通管制協会が855万円の「低入札価格」で落札(75.3%)。

そのとき入札公告に記された「発注概要」は次のとおりで、成田の文字は一切出ていなかった

発注概要:滑走路処理能力算定手法に関する調査

  • 海外事例の調査
  • 新たな算定手法の作成
  • 現行の算定手法との比較
  • 導入にあたっての課題整理等

※詳細は、「滑走路処理能力算定手法に関する調査|気になる契約情報(21年度)」参照。

本件事案は羽田新ルートに関係するものとばかり思っていたのだが、冒頭に記したように「羽田低空飛行見直しのための議員連盟」のヒアリングで国交省は「成田国際空港の3本目の滑走路の供用を見据え、令和3年度に外注委託し調査実施した」という。

いつの間に成田限定の委託になってしまったのか。
実際のところを確かめたくて、国交省に「滑走路処理能力算定手法に関する調査に係る成果物(報告書および参考資料等)」を開示請求してみた(22年6月3日開示請求)。

1か月後に「行政文書開示決定通知書」(不開示部分なし!)が郵送されてきたので同日、「行政文書の開示の実施方法等申出書」を投函したところ、7月13日に報告書(DVD)が郵送されてきた。

報告書をひも解く

滑走路処理能力算定手法に関する調査
(報告書の表紙)

以下、気になるところを中心に報告書をひも解いていく。

報告書の構成

報告書(PDF:14MB)は全80ページ(黒塗り部分なし!)。以下に示す3つの章で構成されている。

第Ⅰ章 調査の概要
1.調査の目的
2.調査の視点
3.具体的な作業手順
第Ⅱ章 具体的な調査
1.現行の算定手法に係る整理
2.新たな算定手法案
3.現行の算定手法との比較
4.改正に向けた検討
第Ⅲ章 参考資料
1.欧州の発着枠(スロット)の概要
2.欧州における管制処理能力の向上に関する取り組み
3.AirTOPシミュレーション機能の概要

調査の目的

20年に新たな後方乱気流管制方式が導入されて運航の効率化が進められていることから、その効果を踏まえた新たな算定手法を作成することにより滑走路処理能力の向上の可能性を検討すること。

航空局においては令和2年に新たな後方乱気流管制方式が導入されて運航の効率化が進められているところ、当該方式に新たに規定された基準の適用効果が滑走路処理能力の算定手法には反映されないことから、その効果を踏まえた新たな算定手法を作成することにより滑走路処理能力の向上の可能性を検討するものである。
 
なお、現在の滑走路処理能力の算定手法は、平成10年度から平成11年度に実施された航空局内の検討を経て策定され、その後、羽田や成田空港では計算式の一部見直しが行われてきた。しかしながら、策定後約20年を経過した現在でも基本的考え方は変更されていない。

調査の視点

滑走路処理能力算定手法の改正に向けた議論を進めるうえでの客観的根拠とすべく調査を行う。

本調査においては、海外の導入事例を参考に、我が国の現状の算定手法の妥当性、改善点を分析するとともに、新たな方式を導入した最適な滑走路処理能力算定手法についての検討を行い、改正に向けた議論を進めるうえでの客観的根拠とすべく調査を行う

具体的な調査

「第Ⅱ章 具体的な調査」のなかで、現行の算定手法と新たな算定手法の比較検討が行われていて、具体的に成田空港における1時間当たりの滑走路の処理容量が試算されている。

内容は複雑で多岐にわたるので、ここでは「着陸機が連続する場合」の模式図(P3)の紹介にとどめる(次図)。
※検討結果については、後述の「改正に向けた検討」の朱書き部分を参照。

着陸機が連続する場合
「着陸機が連続する場合」(P3)より

現行の算定手法との比較(総合評価)

現行の算定方式と新たな2つの算定方式(案1:現行の算定手法を基本として新たな後方乱気流管制方式の効果を反映させる手法、案2:欧州の代表的事例としてドイツの航空管制会社が実施している算定手法)を比較した結果、現行の算定方式のほうが利点が多いというのが結論。

空港の発着容量を決定する場合においては現在のところ現行の算定手法に利点が多いと考えられる。

改正に向けた検討

成田空港では、新たな後方乱気流管制方式を導入しても、「本調査では処理容量の増加は見込めなかった」と結論付けている。

(1)基準を改正する場合の課題及び影響等

  • 成田空港では、国際線主体で大型機の比率が7割弱を占めること、また滑走路の占有時間が他空港と比較して長く、かつバラつきが大きいことから、現状においては後方乱気流区分に応じた間隔とならないケースが見られたことにより、本調査では処理容量の増加は見込めなかった。このため、現行の算定方式を見直した場合の効果を上げるためには、新たな管制方式による安定的な間隔短縮を実現する環境が必要であると考えられる。


管制処理能力を向上するための課題と対応策が記されている。

(2)基準を改正する場合の対応方針(提言)

  • 我が国では管制処理能力の向上策について、CARATS施策に基づく管制支援機能(AMAN/SMAN/DMAN)の性能向上や新たな管制方式の導入等による管制間隔の最適化を推進している。
    また、成田空港においては空港CDMの導入及び充実を図って空港運用能力の最大化を目指しているところ、現実的には未だその過程の段階にある。
  • 我が国において新たな管制方式等の効果を滑走路処理容量算定手法に的確に反映させるには、他国で導入されているような新たな管制支援機能(レーダー表示画面に当該基準に基づく距離や速度調整等を助言、安定的な流量管理、使用滑走路の最適化等)を装備し、効率的な処理を安定的に促進する取り組み、及びこれらの管制処理に見合った滑走路や誘導路の配置等の空港施設が求められる。また、滑走路の使用方向や使用回数に制約がある場合には、効果が十分に発揮されない可能性も残る。
    これらの課題への対応を的確に実施し安定的に新たな管制方式等の効果を上げることにより、新たな算定手法の採用による滑走路処理容量拡大の効果が上がることが期待できる。(第Ⅲ章(欧州における管制処理能力の向上に関する取り組み」を参照)

※CARATS(将来の航空交通システムに関する長期ビジョン)については、「将来の航空交通システムに関する推進協議会」参照。

※「空港CDM」とは、管制機関・航空会社・ハンドリング会社・空港会社などの関係者が相互に予測された航空機の運航情報及び空港の運用情報をタイムリーに共有し、現有するスタッフ・機材・施設などのリソースを最大限に活用して協調的に空港運用能力を強化する取り組み。(「第2回航空機運航のDX推進に向けた検討会成田空港プレゼンテーション資料」成田国際空港株式会社(21年10月29日)より) 

雑感(ひとつの疑問)

成田・羽田空港では20年11月5日から、後方乱気流区分の再分類に伴う新しい管制方式が導入されている。

政府は21年6月25日「新方式の運用により、先行機と後続機の組合せにより先行機と後続機の相互間の間隔が短縮される場合があることから、(略)航空機の飛行時間の短縮に一定の効果がある」と閣議決定した。航空機の間隔を詰めることによって羽田新ルートの増便分を吸収できる可能性がある(羽田新ルートの必要性がなくなる)。

ところが、国交省は21年11月1日、東京都主催の「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」において、「空港における離着陸時の航空機の滑走路占有時間などの要素に左右されるため、この新たな後方乱気流管制方式の運用が羽田空港の処理能力を増加させることはない」と説明。さらに「新たな後方乱気流管制方式によって、『需要が回復しても従来の海上ルートでも増便が可能である』というご指摘は事実と相違しており、国として認めた事実もない」と火消し発言

※詳しくは、「羽田新ルート|「都及び関係区市連絡会」(令和3年度 第3回分科会)コッソリ開催」参照。

 

新たな後方乱気流管制方式の運用により、羽田新ルートの増便分を吸収できる可能性がある(羽田新ルートの必要性がなくなる)のだから、「滑走路処理能力算定手法に関する調査」では、成田空港だけでなく、羽田空港についても試算すべきなのだが、なぜか成田空港のみの試算に留まっている。

同調査については、入札公告段階では成田の文字は一切出ていなかったのに、成果報告書の段階では、成田空港限定の試算になっている。羽田空港の試算結果は報告書から排除されたということはないのか、というのが筆者の疑問(あるいは羽田空港を対象に試算することは国交省にとってリスクが大きいので検討対象から外したのか)

羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」は、昨年8月の第4回を最後に1年近く開かれていない。まともな有識者であれば、「滑走路処理能力算定手法に関する調査」の報告書を読めば、成田空港だけでなく、羽田空港の試算結果を確認したくなるはずだ。ひょっとして、国交省に都合の悪い結果が出たので、有識者の意見調整に時間を要し、第5回の固定化回避検討会がなかなか開催できないということはないのか……。

【追記】なぜ試算対象が羽田ではなく成田だったのか※開示請求結果

入札公告段階では成田の文字は一切出ていなかったのに、成果報告書の段階では、成田空港限定の試算になっている。誰がいつ、どのように成田空港限定の試算にしたのか?
とっても気になったので、国交省に次のように開示請求してみた。

請求する行政文書の名称等

「滑走路処理能力算定手法に関する調査」に係る入札告示(国土交通省航空局長 令和3年8月23日)の「発注概要」には成田国際空港限定であることが謳われていません。

ところが、「滑走路処理能力算定手法に関する調査 報告書 令和4年3月 国土交通省航空局 一般財団法人航空交通管制協会」には、「①新たな算定手法案による計算」として、「(略)成田空港における1時間当たりのA及びB滑走路の処理容量を試算する」(ページ2)と記載されています。

「滑走路処理能力算定手法に関する調査」において、羽田国際空港を試算対象にしなかった経緯が分かる一切の文書を開示してください。対象文書の期間は本開示請求受付の日まで。


7月15日に開示請求して2週間後に、「滑走路処理能力算定手法に関する調査仕様書(令和3年7月制定 国土交通省航空局)」を開示する旨の行政文書開示決定通知書が届いた。

即日、200円の電子納付を行うと、3週間経過した8月22日、同仕様書が記録されたCD-Rが届いた。

仕様書 の2ページには、「交差滑走路などの制約がないことから成田国際空港をモデルとして選定する」とされている。

(3)現行の算定手法との比較

  • ①新たな算定手法案による試算 
    (2)で作成した新たな算定手法2案を用いて、成田国際空港における処理容量を試算すること。試算に必要な運航実態に関するデータについては当局から貸与する。交差滑走路などの制約がないことから成田国際空港をモデルとして選定する。 

交差滑走路などの制約がないから成田空港を試算対象にしたという、もっともらしい説明書き。交差滑走路がある羽田空港を試算対象にしたっていいではないか。検討内容が複雑になるだけの話ではないのか。

誰がいつ、どのように成田空港限定の試算に決めたのか?

「羽田国際空港を試算対象にしなかった経緯が分かる一切の文書」を開示請求したのに、仕様書だけをポンと送ってくるとことがいかにも国交省らしいい。「交差滑走路などの制約がないことから成田国際空港をモデルとして選定」した経緯は、入札公告を出す段階で国土交通省航空局長の承認プロセスを経ているとでもいいたいのであろうか。
※応札希望者に配布される入札説明書には仕様書も含まれている。

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