不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


羽田新ルート|「不動産取引価格情報」を用いた中古マンション価格への影響調査(品川区編)

羽田新ルートは不動産価値にどの程度の影響を及ぼしているのか?

国交省が実施した調査と同様に地価公示データを用いて、品川区内の17~22年の「住宅地」のデータを対象に、筆者が独自に調査したところ「必ずしも「飛行経路までの最短距離」が近いほど地価が下落しているわけではない」という結果だった。

※詳細は「羽田新ルート|地価公示データを用いた不動産価値への影響調査(品川区編)」参照。

そこで本日は、国交省が公開している「不動産取引価格情報」を用いて、品川区内の17~21年の中古マンション取引データを対象に、筆者が独自に羽田新ルートの影響を調査してみた。


もくじ

調査対象データ

国交省が公開している「不動産取引価格情報」を用いて、品川区に関して調査する。

具体的には、国交省が運営しているサイト「不動産取引価格情報」に掲載されているデータのうち、品川区内の17年第1四半期~21年第4四半期の「中古マンション」の取引価格・面積データからm2単価を算出する。対象データは25地区・3,912件(22年5月14日現在。次図)。

不動産取引価格情報

※25地区:荏原、旗の台、戸越、勝島、小山、小山台、上大崎、西五反田、西大井、西中延、西品川、大井、大崎、中延、東五反田、東大井、東中延、東品川、南大井、南品川、二葉、八潮、平塚、豊町、北品川

 

取引時期は四半期単位で3か月の幅があるので、便宜的に次のように中間の月を取引時期とした。

  • 第1四半期(1~3月)⇒2月
  • 第2四半期(4~6月⇒5月
  • 第3四半期(7~9月⇒8月
  • 第4四半期(10~12月⇒11月

飛行経路までの最短距離の計測方法

「不動産取引価格情報」には取引対象の住所は匿名化されていて地区名までしか公開されていない。そこで、取引対象地点は便宜的に地区の概ね中心にあるものとして、飛行経路までの最短距離を計測することとした(次図、荏原地区の例)。

飛行経路までの最短距離の計測方法

飛行経路までの最短距離については、筆者が作成したGoogleマップ(南風時の到着ルート)を元に計測した。

飛行経路までの最短距離と中古マンション単価との関係

「飛行経路までの最短距離」と中古マンション単価(各地区の平均値)との関係を次図に示す。

中古マンション単価は概ね60~140万円/m2に分布している、というか下図から分かるのはこの程度。

飛行経路までの最短距離と中古マンション単価との関係

飛行経路までの最短距離と中古マンション単価変動率との関係

羽田新ルートの影響を分析するために、3,912件(25地区)の中古マンション単価を品川区の平均単価で補正する。

具体的には、17年第1四半期(1~3月⇒2月)の中古マンション単価データを100としたときの各年月の値(18~21年)を計算し(いずれも地区ごとの平均値で計算する)、さらに品川区平均単価により補正(=各年の値-17年2月の中古マンション単価データを100としたとき品川区平均の各年月データ)し、中古マンション単価変動率として算出した。飛行経路までの最短距離と中古マンション単価変動率の関係を次図に示す。

羽田新ルート運用開始後の20年(2月)データに着目すると、飛行経路までの最短距離が短い地区ほど中古マンション単価変動率がマイナスになっている(中古マンション単価が影響を受けている)ように見えなくもない(赤色破線)。

飛行経路までの最短距離と中古マンション単価変動率との関係
※図が煩雑にならないように、各年2月のデータを図化した。

中古マンション単価変動率の経年変化(飛行経路までの最短距離別)

飛行経路までの最短距離ごとに中古マンション単価の平均変動率を次図に示す。

飛行経路までの最短距離が200m以下の地点(6地区)の中古マンション単価の平均変動率が羽田新ルート運用開始前後でマイナスに沈んでいる。このことは一時的に中古マンション単価が羽田新ルートの影響を受けた可能性があると言えないだろうか。

中古マンション単価の変動率の経年変化 (飛行経路までの最短距離別)

まとめ

国交省が実施した調査と同様に地価公示データを用いて、品川区内の17~22年の「住宅地」のデータを対象に、筆者が独自に調査したところ「必ずしも「飛行経路までの最短距離」が近いほど地価が下落しているわけではない」という結果だった(羽田新ルート|地価公示データを用いた不動産価値への影響調査(品川区編))。

今回、国交省が公開している「不動産取引価格情報」を用いて、品川区内の17~21年の中古マンション取引データを対象に、筆者が独自に調査した結果は次の通りである。

  • 羽田新ルート運用開始後の20年(2月)データに着目すると、飛行経路までの最短距離が短い地区ほど中古マンション単価変動率がマイナスになっている(中古マンション単価が影響を受けている)ように見えなくもない
  • 飛行経路までの最短距離が200m以下の地点(6地区)の中古マンション単価が羽田新ルートの影響を受けた可能性がある。

※上記の結果は、品川区内で取引された中古マンションの位置が「地区」の概ね中心に建っているとした前提(具体的な住所が公開されていないゆえ)によるものであることに要留意。

あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.