港区が11月21日から羽田新ルートに係る実態調査を開始したことを昨日のブログでお伝えした。
自治体独自で住民等を対象に羽田新ルート問題の実態調査をするのは港区が初めてであある。この調査が実現したのは、「みなとの空を守る会」が6月17日に提出した「羽田都心飛行ルート下の住民・勤労者を対象とした実態調査と調査結果の公表を求める請願」に対して、交通・環境等対策特別委員会 で都民ファーストが「採択」賛成に回ったからであった(次表)。
これまで、同委員会で各会派の議員が具体的にどのような発言をしたのか不明であった。なぜならば、港区議会は本会議と予算・決算特別委員会しか動画(録画)配信していないからだ。
ただ、会議録のほうは、交通・環境等対策特別委員会を含めた各委員会が公開対象になっている。6月17日に開催された交通・環境等対策特別委員会の会議録も公開されていたので(会議録が公開されるまで概ね2か月かかる)、「羽田都心飛行ルート下の住民・勤労者を対象とした実態調査と調査結果の公表を求める請願」に係る各会派の態度表明をまとめておいた。
各会派の態度表明
池田議員(自民): いろいろと検討する必要があろうかと(⇒継続)
池田こうじ議員(自民、区議4期、社会福祉法人理事長、慶應院卒、56歳)
自民党議員団としても、議員の立場として態度表明させていただきたいと思います。
まず、区が実態調査に基づいて国に言うべきことを、区民の声を受けて言っているということは確認できました。今回の請願の調査の範囲、これは区全域でいうと9割以上ということになろうかという答弁もありました。そして、調査方法についても、今後いろいろと検討していく必要もあろうかと思います。全域の前に、航路下の方の調査もまだ行っていないということも確認しました。声を聞くということはとても大切なことだと思いますし、区民に対して開かれた相談窓口をもっと徹底していただきたいと思います。
そういった意味で、調査の方法や範囲、また、今後、国に言うべき新たなことをどう区が考えていくかについても、いろいろと検討する必要があろうかと思いますので、自民党議員団といたしましては、請願3第12号につきましては、継続でお願いしたいと思います。
山野井議員(みなと):積極的な形で声を拾う(⇒採択)
山野井つよし議員(みなと政策会議<立憲民主党>、区議2期、元塾講師、成蹊大法学部政治学科卒、43歳)
港区民の方々などの声は、国の設置しているコールセンターや御意見はがき等を通じて把握をしている側面はあろうかとは思いますけれども、港区民一人一人の声ということで、どこまでそれが国に届いているのかという点では、正直不安が残ります。港区は、現在、独自に騒音測定をしていただいていて、客観的なデータとしてこれを収集し、国に届けていただいています。今度は、主観面でのデータといいますか、つまり、航路下の住民を中心に、新ルートについてどうこれを感じているのか。これを収集して、しっかりと国に届けていただきたいと思っています。
港区が航路下の住民らに新たに積極的な形で声を拾うことで、これまで国のコールセンターに電話をしたり、はがきをわざわざ各地区総合支所などに取りに行ったり、また、区の広聴に意見を出したりという、そのような能動的な形態では拾えなかった方々の声、こうした声を拾うことができるのではないかとも期待をします。
もしかすると、それは、先ほど少し質問もさせていただきましたけれども、運用開始時には気にならなかったけれども、今は気になるなどという声が、予想以上ということもあるかもしれません。でも、それは新ルートの固定化回避を求める港区をはじめ、区議会や請願者の方々にとっても予想外で不都合なことなのかもしれませんけれども、それも含めて航路下の住民の方々の声であります。
もちろん、騒音がうるさくて心が休まらない、集中できない、落下物が心配、昼寝の子どもが起きてしまうなど、そういった切実な声も恐らく数多く寄せられることになろうかと思います。結果はともかく、こうした様々な声を港区として主体的に酌み取っていただいて、航路下を中心とする住民の方々の実態を明らかにするとともに、これを集約して、しっかりと国に届けていただきたいと思っています。
そのため、私たちの会派は、住民等への実態調査を港区に求める本請願は、採択でお願いいたします。
近藤議員(公明):まだ検討の余地がある(⇒継続)
近藤まさ子議員(公明党、区議4期、東洋女子短期大学専攻科終了、63歳)
私も白金に住んでおりまして、午後3時15分過ぎぐらいから飛行機が飛ぶ、テレビが聞こえないということも十分承知しております。また、私だけでなく、多くの区議会議員がリアルな声をこの飛行機に関しては伺ってきて、そして、議会でも質問を繰り返してまいりました。その結果、何としても固定化回避ということで、区長も国に申し入れ、そして、私たちも意見書を出すなど、様々やってきたところでございます。
今回の請願の目的は何かと思っていました。固定化回避をより現実的に進めるため、そのようなものかと思っていたのですけれども、請願者のやり取りの中で、声を集めて区政に届けてほしい、環境問題などもしっかりと取り組んでいただきたい、また、国に対して対策を取るように具申してもらいたいと、そのようなお声をいただきました。風見委員長も審議の中でおっしゃっていましたけれども、港区基本計画の中で、どのような環境政策が必要なのか、どういった方法で港区は取り組んでいくべきなのか、飛行機のことも含めて広く、また確かな声を聞いていくという、そうしたアンケートが必要になってくるのではないかと、この請願の趣旨から読み取りました。どのような調査をするのかということに関しましては、まだ検討の余地があるかと思っております。
したがいまして、公明党議員団といたしましては、継続でお願いしたいと思います。
琴尾議員(都民):居住者の理解を丁寧に得て進めていくという党の方針と一致(⇒採択)
琴尾みさと議員(都民ファースト、区議1期、川口短期大学卒、32歳)
都民ファーストの会を代表して、態度表明させていただきます。
初めに、我が会派は、居住者の理解を得ながら、丁寧に進めるべきと考えております。今回の請願では、アンケートで実態調査を行ってもらいたいという趣旨であり、また、住民を中心に意見を聞いてほしいという内容であると受け止めています。
ここには勤労者も含まれておりますが、質疑の中でもあったとおり、居住者と勤労者合わせて125万人への調査ではなく、影響のある地域の保育園や学校にも意見を聞いてもらいたいというものでありました。また、このアンケートで得たものは、国土交通省に具申するとともに、今後の対策に生かされるように、このような趣旨であることから、居住者の理解を丁寧に得て進めていくという党の方針と一致するものであると思います。
よって、本請願は採択でお願いいたします。
風見 委員長(共産):継続に反対
風見利男 議員(共産、区議9期、都立墨田工業高卒、76歳)
(今期継続とすることに賛成の方は)可否同数と認めます。よって、委員会条例第14条により、委員長が決することになっております。委員長は、継続に反対したいと思います。
引き続き、請願3第12号について採決いたします。採決の方法は挙手採決といたします。
請願3第12号について、採択することに賛成の方は挙手をお願いいたします。(賛成者挙手) 総員挙手と認めます。よって、請願3第12号は満場一致をもって採択することに決定いたしました。
雑感
自公・都民の屁理屈
自民は「いろいろと検討する必要」があるとして、公明は「まだ検討の余地がある」として、請願を「継続」(≒棚上げ)した。いずれも請願を棚上げし得る理由にはなっていない。棚上げするのであれば、「いろいろ」や「余地」の中身を明らかにしなければ説明責任を果たしたとは言えない。
都民ファーストが請願を「採択」した理由が「居住者の理解を丁寧に得て進めていくという党の方針と一致する」であったのは、拍子抜け。「居住者の理解を丁寧に得て進めていく」ことは、都民ファーストに限らず、まともな政党であればこの方針に反対することはないだろう。まあ、自公の屁理屈と五十歩百歩。なぜ賛成したのか、ホントのところを知りたい。
「休憩」と言う名の闇審議
本件請願の審議のあと、続いて羽田新ルートに係る4件の請願が取り上げられた。
- 羽田空港増便による都心および港区の低空飛行ルート計画の撤回を含む再検討を国に求める請願(19年6月20日付託)
- 羽田空港新飛行経路の港区上空飛行に備えた港区航空事故災害対策計画の策定を求める請願(19年9月13日付託)
- 羽田新飛行経路の運用延期または再検討を求める請願(20年2月21日付託)
- 羽田空港新飛行ルートの見直しを国に求める請願(20年6月26日付託)
いずれも、議員からは具体的な意見表明がなされず、次のように機械的に処理されて、「今期継続」扱いとなった。
- 風見委員長:次に、審議事項○「○○請願」を議題といたします。本請願について、何かございますでしょうか。
(「はい」と呼ぶ者あり)
- 風見委員長:なければ、本請願につきましては、今期継続といたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「はい」と呼ぶ者あり)
- 風見委員長:それでは、今期継続と決定いたしました。
なぜ、実態調査の請願はシッカリと態度表明がなされたのに、それ以外の4件の請願は即決で「今期継続」処理が可能になったのか。
じつは、実態調査の請願内容の質疑応答のあと、42分間(13時58分~14時40分)の「休憩」が入っている。その間に関係者で態度表明の事前確認を行っていたのではないのか。
10秒程度の審議で「継続」審議になるのは、議事録を残さないために「休憩」で闇審議が行われているとして、渋谷区の金子・堀切区議(れいわ渋谷)が種明かししている。
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