国交省航空局は10月29日、「住宅防音工事補助制度のあり方検討委員会」の第2回(9月30日開催)の議事要旨をコッソリ公表。
配布資料(10月12日公表)と議事要旨が出そろったので、読者の興味を引きそうなところだけ簡単に整理しておいた。
※同委員会の検討範囲は、羽田新ルートに限らない。
まずは委員会の目的と委員の確認。
委員会の目的と委員
委員会の目的は規約第1条の次のように規定されている。
第1条 本委員会では、実態調査結果の評価について、委員から意見を聴取するとともに、住宅防音工事補助制度の方向性について立案することを目的とする。
委員は次の5名から構成されている。
- 【委員長】門山 泰明 門山泰明法律事務所 弁護士
- 浅田 義久 日本大学 経済学部 教授
- 大森 文彦 東洋大学 法学部 企業法学科 教授
- 杉江 聡 一般財団法人小林理学研究所 建築音響研究室 室長
- 安河内 恵子 九州工業大学 教養教育院 人文社会系 教授
委員会での論点
「今後の方向性の検討」として、4つの課題が掲げられている。
- 課題 1.住宅防音工事実施後の防音性能の把握
今回の経年劣化調査において、一定の遮音性能の劣化が確認できるのであれば、防音性能を回復する工事への補助を新設することが考えられるか。 - 課題 2.騒音実態の認識と助成制度
基準日以後の転入者に対して、補助に差異を設けるという考え方は、「危険への接近」を理論的根拠とするものと言えるが、判例の動向等を踏まえれば、採用は慎重に判断すべきか。 - 課題 3.土地価格の動向と助成制度
土地価格の動向については、本制度に影響を与えるほどの重大な差異は確認できなかったこと、地価の動向を補助制度に反映させている事例を確認できなかったことから、本制度へ反映させることは困難ではないか。 - 課題 4.空調機器への助成のあり方
空調機器の普及状況を踏まえ、工事補助から稼働費補助へ切り替えることも考えられるが、対象者や経費の捕捉、支払い等に要する事務負担が大幅に増加することが予想され、現実的でないのではないか。
特に「課題 3.土地価格の動向と助成制度」についてひも解く。
地価の動向を補助制度に反映させることは困難
騒音と地価の関係を把握するために文献調査が行われ、結果は以下とされている(「委員会資料」P14)。
- 土地価格の動向が補助金や補償金に反映されている制度の事例は確認できなかった。
- 損害賠償額の減額には、騒音の認識と許容を証明することが必要である。
この調査結果を踏まえ、今後の方向性の検討として、「課題 3.土地価格の動向と助成制度」に対して、以下とされている。
土地価格の動向については、本制度に影響を与えるほどの重大な差異は確認できなかったこと、地価の動向を補助制度に反映させている事例を確認できなかったことから、本制度へ反映させることは困難ではないか。
これに対して、委員からの「主な意見等」はたった一言(「議事要旨」より)。
制度への反映は困難かと思う。
ちなみに、「騒音等が土地価格に与える影響の程度の法的根拠」として、次の3つが掲げられている(「委員会資料」P15)。
- 国税庁における「利用価値が著しく低下している宅地の評価」の原則は10%減
- 国税不服審判所において騒音等の10%減が認められない判例もある。
- 「騒音等によって、その土地の利用価値を低下させる程度が付近の宅地に比べて著しい場合で、取引価額に影響を与えていることが明らかなときに限り適用が認められるべき」と限定的な運用
あわせて読みたい
羽田新ルートが20年3月29日から運用開始されたことにより、東京都が学識経験者を入れた「 航空機騒音に係る環境基準・指定地域」の見直しのための検討会を開催中。