海外旅行とホテル業界に詳しい元フリーランス記者である著者、山口由美氏による『勝てる民泊 ウィズコロナの一軒家宿』新潮社(2021/5/26)読了。
親から継承した実家の離れを改造して、サラリーマンの夫の協力をもと、民泊を始めた著者の奮闘物語。
箱根ではあるが知名度の低い大平台で、調子のいい運営代行業者に翻弄された後、小さいながらも臨機応変に対応してくれる運営代行業者に出会う。ネットでの予約対応を台湾から遠隔でさばいてくれる女性が参加し、東京から遠隔で「家主非居住型」の民泊をコロナ禍下で営んでいる。
民泊ノウハウ本としてだけでなく、コロナ禍下での民泊奮闘物語としても十分楽しめる。
「勝てる民泊」とはコロナ禍だからこそのメリットで集客できる民泊のことだという。
新型コロナの感染拡大があったからこそ、民泊の思わぬ可能性を見出すことができた。
まずは、予約からチェックインまですべてがオンラインで完結する非居住型の民泊が、感染症という未知の脅威にも強い宿泊業の形態だったという、思いもかけない事実があった。
一軒家民泊であれば、エレベーターもないし、滞在中に誰かと会うことも一切ない。まさに三密とは無縁である。自宅から車で来れば、誰とも接触せず滞在することができる。オンラインチェックインが前提の非居住型民泊は、それゆえにインターネット環境は完備しているからテレワークにもぴったりだ。
一方で、インバウンド需要が消滅し、民泊は終わったように言われ、実際、多くの都市型民泊が消えていった。テレワークヘの転換などで生き残ったところもあるが、簡単に儲かるからと参人した大多数は慌てて撤退していった。
コロナ禍は、ひとくくりになっていた民泊を二つに線引きしたのだった。一切の需要がなくなってしまった民泊と、コロナ禍だからこそのメリットで集客できた民泊に。(P219/エピローグ 民泊は、新しい宿のかたち)
本書の構成
9章構成。全223頁。
- プロローグ 「ひと夏越したら、シロアリで腐ります」
- 第1章 カンシュクって何ですか?
- 第2章 膨れ上がる改修費用
- 第3章 運営代行業者との決別と出会い
- 第4章 日々の運営は「ライン」で
- 第5章 最強の助っ人が登場
- 第6章 クリーニングどうするの問題
- 第7章 超大型台風が箱根を直撃する
- 第8章 野生のイノシシ襲来
- 第9章 リモートホスピタリティ
- エピローグ 民泊は、新しい宿のかたち
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