朝日新聞が21年3月期連結決算で11年ぶりの赤字だったことを、自ら報じている。
朝日新聞の収益構造を可視化してみると……。
新型コロナ直撃!朝日新聞社11年ぶりの赤字(朝日記事)
朝日新聞が21年3月期連結決算で11年ぶりの赤字だったことを、自ら報じている。
朝日新聞社3月期決算、11年ぶりの赤字
朝日新聞社が26日発表した2021年3月期連結決算は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、売上高が前年比16.9%減の2937億7100万円、営業損益が70億3100万円の赤字だった。
(中略)
当社は、今年4月にスタートさせた新たな中期経営計画で21年度の営業黒字転換を目標に掲げており、事業構造の改革やデジタル、不動産、イベント各事業の拡大などを推し進める方針。(朝日新聞 5月27日)
朝日新聞は不動産事業に支えられているのだが…
大手4紙のなかで唯一、有価証券報告書を公開している朝日新聞の経営状況を確認してみよう。
EDINETで入手可能な有価証券報告書をひも解き、朝日新聞社の収益構造を調べてみると、同社は新聞出版事業者というよりも不動産屋であることがよく分かる。
セグメント別の売上高の推移
セグメント別の売上高の推移をみると、メディア・コンテンツ事業(旧 新聞出版事業)が圧倒的に多いが、年々減少している。一方、不動産事業は、年々増加している。ただ、21年3月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け減少した(次図)。
セグメント別の利益額・率の推移
利益額でみると、メディア・コンテンツ事業は、17年3月期以降50億円を超えることはなく、20年3月期、21年3月期と2年連続、マイナスに沈んでいる。また、利益率は2%を超えることはなく、21年3月期には▲4.6%にまで大きく落ち込んだ(次図)。
一方、不動産事業のほうは、利益額は19年3月期に68億円、20年3月期に74億円、21年3月期に52億円。利益率はここ数年、20%前後で推移。
新型コロナ感染拡大の影響は大きく、21年3月期は不動産事業がメディア・コンテンツ事業の赤字をカバーできなかった。
従業員数・給与の推移
朝日新聞の厳しい経営環境は従業員数と給与にも暗い影を落としている。
朝日新聞グループとしてはこれまで、7千人を超えていたのだが(臨時従業員を含む)、メディア・コンテンツ事業が20年3月期に大赤字になったことを受けたのであろうか、21年3月期には社員・臨時従業員ともに削減されている(次図)。
社員は徐々に高齢化しているものの、平均年間給与はこの9年間で約120万円(▲9.5%)下がっている(次図)。
朝日新聞による自己分析
このようなメディア・コンテンツ事業(旧 新聞出版事業)の厳しい状況を朝日新聞社はどのようにとらえているのか。
有価証券報告書(第168期、20年4月1日~21年3月31日)に「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」が記されているので、一部抜粋しておこう。
メディア・コンテンツ事業においては、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に泣きが入っている。
メディア・コンテンツ事業
(前略)朝日新聞の年間平均部数は朝刊494万7千部、夕刊148万2千部(前期比で朝刊42万6千部減、夕刊16万3千部減)と販売面でも引き続き苦戦を強いられた。
(中略)
新聞広告収入もコロナ禍で大幅に落ち込んだ。20年度は4月に緊急事態宣言が発出されたことで、旅行・運輸・レジャー・興行などの業種の広告出稿やイベントが中止されたことに加え、ほとんどの業種で企業の業績が悪化し宣伝活動が大きく減退したことが影響した。
その中で緊急事態宣言が解除されていた7月以降は、Go To トラベルキャンペーンを受けた旅行・運輸・レジャー業種や、リモートワーク関連の情報サービス・金融通販業種の広告出稿を獲得したほか、イベントのオンライン化にも取り組んだ。
下期は、21年1月に出された2回目の緊急事態宣言とその延長の影響を受けたものの、回復基調となった。(以下略)
不動産事業も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。
不動産事業
コロナ禍の影響を受け、東京、大阪のホテルでは賃料収入が大きく減った。
また大阪・中之島の商業テナントも大きな打撃を受けたことから賃料減免を行い、さらに大阪・フェスティバルホールと有楽町、浜離宮の両朝日ホールでも公演の取りやめや延期、入場者数の制限などが相次ぎ、収入を落とした。
一方、当社の不動産事業の多くを占めるオフィステナントではごく一部を除き賃料減免は行っていない。コロナ禍でオフィスの見直しに取り組む企業もあるが、(株)朝日ビルディングと連携してテナントとの関係強化、物件の価値向上を進め、高入居率を維持した。(以下略)
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