江戸川区議会の「21年第2回定例会」本会議一般質問(6月11日)で、羽田新ルートに関して、大橋美枝子議員(共産党)の質疑応答があった。
録画放映をもとに、テキスト化(約2千500文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
大橋美枝子 議員(共産)
大橋美枝子区議(共産、区議3期、千葉大卒、72歳)
はじめに、羽田空港新ルートについて伺います。
新ルートが実施されてから1年2か月。前安倍政権による観光立国のための羽田空港機能強化が、菅政権にも引き継がれています。新型コロナ感染症の広がりによる国際線減便のなか、区民へのチラシ配布だけで、国は説明会も開催せず、区民の不安が解消されないまま新ルートが続けられています。
一方、環境問題の専門家は2050年に向けての排出ガスゼロを実現するために化石燃料を使わない車への転換を全て行なった後、最後に残るのは飛行機燃料だと指摘しています。羽田空港機能強化が本当に必要か。その根本が問われています。
昨年の那覇空港でのエンジン事故に続けて2月21日、アメリカのデンバー空港のボーイング777の事故は大きな衝撃でした。いずれも離陸直後の事故であり、羽田空港北風新ルートで発生すれば人口密集地に落下物が飛散し、重大な被害が出ます。
港区・豊島区・板橋区長は国に徹底した調査、航空会社への指導強化、落下物防止策の徹底、情報公開などを文書で要請しました。しかし、江戸川区は要請を行いませんでした。区民の命と暮らしを守る自治体本来の役割を果たしていると言えるでしょうか。
また、騒音による区内環境が悪化しています。北風新ルートで区内通過機数は大幅に増えています。10月の1か月で比べると2020年の新ルート通過は2,555機、2019年は南風悪天候通過315機で8.1倍にもなっています。新ルート以前は10月の区内通過は大幅に減って、静かな日が続いたのに、北風新ルート1日7時間半通過で増えるのは当然です。
南風新ルートも課題が山積しています。4月9日、超党派の国会議員による「羽田低空飛行を見直しのための議員連盟」が国交省に説明を求めました。その時、元日航機長の航空評論家は、航空機の運航整備技術の改善策を調査する公益財団法人 航空輸送技術研究センターが風の状況によっては最終進入で操縦の困難度が高かったとの自発報告が多数寄せられたと紹介しました。パイロットからも新ルートへの不安の声が出されています。しかし、国の「羽田空港のこれから 春号」には出発経路に関して航空会社からの安全性に関する問題の報告はなかったと書かれ、着陸ルートには触れていません。
新ルート開始以来、1回も説明会が開催されておらず、一問一答形式の丁寧な説明会が必要と考えます。そこで伺います。問1:重大事故が起きた場合、国に対して安全対策を緊急に文書で求めるべき
第1は、デンバー空港におけるエンジントラブルのような重大事故が起きた場合、国に対して安全対策を緊急に文書で求めるべきです。
問2:国際線減便のなか、羽田新ルートの中止を国に求めるべき
第2は、国際線減便のなか、もとの海上コースに戻すことが落下物の危険を回避し、騒音対策になる最善策と考えます。
重大事故が報じられた今、羽田新ルートの中止を国に求めるべきです。
問3:説明会開催を国に求めること
第3は、チラシの配布だけで終わらせず、新ルート開始以来行われていない説明会開催を国に求めることです。いかがでしょうか。
区長
斉藤猛 江戸川区長(1期、元江戸川区教育長、早稲田大学社会科学部卒、58歳)
答1:改めて文書で要請を行うということはしない
それではお答えしてまいります。まず1点目の羽田空港新ルートの件でございます。
重大事故が起きた場合、国に対して区から安全対策を緊急に文書で求めるべきということで、3区の区長さんが求めてるのに、なぜあなたはやらないんだということだと思うんですけれども、私自身はデンバー空港のエンジントラブルの例でお話をいただきましたけれども、このような時には、やはり速やかな報告をしていただきたい、しっかりした安全対策をして頂きたいということだと思ってます。
このデンバー空港の事故につきましては、いずれも区へは、国からのプレス発表と同時に報告をいただいております。その中に今お話したようなことがしっかり謳われてる。そして、同時に、この777型機、この使用はその日からもうしてないということでございまして、今なお、使用してないということでございます。
そういったことを考えると、改めて文書で要請を行うということはしないということでございます。答2:国に新ルートの中止を求める考えはございません
2点目です。羽田空港の機能強化、これはかねがねお話をさせて頂いておりますけれども、必要と考えております。国に新ルートの中止を求める考えはございません。
答3:引き続き国へ開催を求めてまいります
3点目ですけれども、住民説明会です。これは区としても必要だと考えております。
これまでも、繰り返し申し入れを行っておりますので、ここは引き続き国へ開催を求めてまいります。
大橋(意見):文書で区長がこんなふうに国に要請したっていう形を
ご答弁ありがとうございました。新ルートについては残念としか私も言いようがないんですが、ほかは丁寧な言葉、ご回答いただきまして、ありがとうございました。
新ルートについて私が「文書で」って拘ったのは、ようするに区民の皆さんにきちっと伝えていくときに文書があると、「あっ、区長はこんなふうに考えてるんだ」と「区にこういうふうにしたんだ」っていうのが、ホームページなんかで紹介されれば、今のホームページも色々と区の態度とか書いてありますので、そういう丁寧さが、そういう意味で伝わるんじゃないかと。
意見が違ったとしても、区としてはこう動いてるっていうことが分かったほうがいいということで、ちょっと改めて文書っていうに言ったので、今回は、そういう区長の判断もあった、というのはお聞きしましたけれど。
なんか事故があって、江戸川区がどう対応したのかっていうのが分かるような形を私は取ったほうがいいんじゃないかなっていうふうに思ったので。
もし、今後のこと、でも、そんなことをあまり想像するのも良くないので、意見として述べますが、(事故は)ないのが一番いいですよ、一番いいんだけれども、もしあった場合にはやっぱり文書で区長がこんなふうに国に要請したっていう形をとっていただけないかということを改めて意見として申し上げます。
雑感(江戸川区民は救われない…)
江戸川区議43人(定員44人、1名書類送検辞職)のなかで、本気で羽田新ルート問題に対応しているのは、大橋美枝子議員(共産)だけのようだ。
江戸川区議会会議録検索システムを使って「羽田」&「新ルート」で検索すると、本会議の一般質問でヒットするのは大橋美枝子議員だけであることに愕然とさせられる(次表)。
残念ながら、前の多田正見区長(5期、元江戸川区教育長)も現在の斉藤猛区長(1期、元江戸川区教育長)も毎回、全くと言っていいほど聞く耳を持たない答弁を繰り返していた。
北風時に荒川沿いを北上する出発ルートは(7時~11時半・15時~19時)、南風時に都心を通過して羽田に向かう到着ルート(15時~19時)よりも運用される時間がはるかに長い。加えて、江戸川区では羽田新ルートが導入される以前から、南風で悪天候等により視界が悪く、通常のルートが使用できない時に限り江戸川区上空を通過する着陸ルートが運用されている。
江戸川区民はかなりの飛行騒音被害を受けているのだが、こんな区長と羽田新ルートへの関心が低い議員ばかりでは、江戸川区民は救われない……。
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