ホラー映画『事故物件 恐い間取り』は、亀梨和也の主演で昨年の夏にヒット。その原作の続編『事故物件怪談 恐い間取り2』二見書房 (2020/7/6)を読了。
事故物件に住むことを売りにしている松竹芸能所属のピン芸人松原タニシ氏が非日常的な世界を淡々と描いている。巣ごもり中の時間潰しにはいいかも。
※朱書きは私のメモ書き。
沖縄の事故物件で民泊を行う業者が増えている
インバウンドの増加で土地の値段が年々上がり続けている沖縄で、安い事故物件を借りて民泊利用しようとしている業者が増えているという。
事故物件九軒目
(前略)飛行機に乗るまでの時間は限られている。「沖縄一オバケの出るマンション」は空港からは遠いので、地元の不動産屋で掘り出し物の事故物件を飛び込みであたることにする。
「事故物件で募集しているところはありませんか?」
「事故物件ですか……インターネットに不動産サイトがありますので、そちらへお問い合わせください」
まさかの、店に来ているのにネット情報を見ろと言われてしまう始末。何故、取り合ってもくれないのか、理由を聞いてみた。
「最近、県外の方が事故物件を借りようと訪ねてくることがよくあるんです。だいたいが民泊に利用されてしまうので、今は県外の方への案内は控えているんです」
なるほど。どうやら民泊業者と疑われたようだ。最初に電話で断られた飛び降りマンションでの対応も、そういうことだったのかもしれない。
沖縄はインバウンドの増加で土地の値段が年々上がり続けている。そこで本土から利益を求めて、安い事故物件を借りて民泊利用しようとしている業者が増えているようだ。(以下略)(P33/第1章 僕と事故物件)
※沖縄県内の合法民泊は1千件を超えているが(1160件=那覇市190件+那覇市以外970件、21年1月2日現在)、コロナの影響で漸減中(次図)。事故物件を利用した民泊はキチンと届出されているのだろうか。
沖縄に同時に二つの物件を借りることになった著者
大阪・東京に事故物件を借りながら、沖縄に同時に二つの物件を借りることになった著者。
事故物件十軒目
(前略)空いていたのは四階より上の部屋で、黒と茶色を基調としたシックなデザイン。全部屋にエアコン完備。ダイニングキッチンにはシヤンデリアのような照明もある。
管理会社の担当者は明るい好青年で、とても丁寧に案内してくれた。おばけマンションのことは、こちらから聞いたわけではないのに自分から言っていた。
「入居者の中で幽霊を見たって人はいないですね、僕が知る限りでは」
特に後ろめたさを隠している様子もない。本当にそうなんだろう。
ならば仕方がない。僕は自分の目で真相を確かめるべく、その場で契約を結んだ。こうして大阪・東京に事故物件を借りながら、沖縄に同時に二つの物件を借りることになったのである。(以下略)(P48/第1章 僕と事故物件)
※事故物件を4件借り上げているなんて、店子の風上にも置けない(笑)。松原タニシ氏は、亀梨和也主演映画のヒットで潤沢な”事故物件活動”の資金を得たのだろうか……。
事故物件にされた側、損害賠償額をふっかける
事故物件にされた側というのは、損害賠償額も高くふっかけることが可能であり、裁判になっても絶対に負けないという。
夫が自殺した部屋
(前略)事故物件にされた側というのは、損害賠償額も高くふっかけることが可能であり、裁判になっても絶対に負けない。そのため「遺族から金をぶんどれるから事故物件になってくれた方がいい」と考える貸主も実際には存在するようだ。
後日、検視の結果、夫は家で死んでいたことが判明し、事故物件であることが確定した。
こうしてぺるみさんは不動産社から大家への慰謝料、及び物件内の掃除その他、次の人居者が決まるまでの家賃負担の合計1千万円の損害賠償金を請求されてしまう。
とてもじやないが1千万円を払えないぺるみさんは、このトラブルに対処するために弁護士と一緒に大家・不動産会社側と立ち向かうのだが、その顛末は姉である宮本ぐみさんが『自殺遺族になっちゃった!!』(竹書房)という漫画にまとめた。いかに自殺遺族が金銭的負担を背負わされるのか、そして当事者でないと知り得ない、世間的にも精神的にも追い詰められていく遺族の苦悩が描かれている。(以下略)(P222/第2章 誰かの事故物件)
※今後孤独死が増加することを考えると、事故物件に係る損害賠償請求ガイドラインの策定が急がれる。
双方にとっての問題は、どこまでを損害と認めるかなどの明確な基準がないことです。「(不動産問題に詳しい上野晃弁護士)双方が不安に駆られて過剰な争いになってしまうといったことを防止するためには行政機関がガイドラインを示すなり何なりといった対応が、非常に早急に求められていると思います」と指摘しています。
本書の構成
3章構成。全317頁。
- 第1章 僕と事故物件
- 第2章 誰かの事故物件
- 第3章 事故物件の旅
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