中立性を確保すべき立場の役所発信文書に、「激高型」「行政指導強要型」「自己中心型」「利己的な苦情型」「過敏型」といった主観的な表現を用いることは適切なのだろうか。
国交省が発信文書に主観的表現を用いることは適切なのか
国土交通省 東京航空局 空港部 環境・地域振興課長名で毎年、日本航空機操縦士協会の会長宛に「航空機騒音の軽減について」お願いの文書が発信されていることをご存じだろうか。
日本航空機操縦士協会HPで公開されている2016年以降の文書をひも解くと、なんともヒドイ文言が並んでいる。
↓ 18年8月15日発信文書(例)
※以下、古い順。
(前略)ここ数年、社会的ニーズの多様化などから航空機の活動範囲が拡大しているところでありますが、環境問題が社会問題として関心が高まっている昨今、航空機騒音についても依然として多くの苦情が当局及び航空局管内関係機関や関係自治体などへ寄せられております。騒音苦情の内容としては「上空通過」、「旋回」、「低空飛行」、「ホバリング」、「早朝・夜間の飛行」等多様ですが、苦情者も激高型をはじめ、最近は経路変更を求める行政指導強要型なども増えており、当局の説明を理解しない者も多くなっていることから、対応に苦慮しているところであります。(後略)
(前略)ここ数年、社会的ニーズの多様化などから航空機の活動範囲が拡大しているところでありますが、環境問題が社会問題として関心が高まっている昨今、航空機騒音についても依然として多くの苦情が当局及び航空局管内関係機関や関係自治体などへ寄せられております。騒音苦情の内容としては「上空通過」、「低空飛行」、「早朝・夜間の飛行」他多様であり、また、苦情者の形態は一般苦情型をはじめ、飛行経路変更を求める自己中心型等多様化していることから対応が困難になってきております。(後略)
(前略)今年度の当局及び当局管内関係機関への航空機の騒音苦情は、例年より多く計上され、苦情の内容としては「上空通過」、「低空飛行」、「早朝・夜間の飛行」等、苦情者の形態としては、一般的な苦情型の他、飛行経路の分散及び変更を求める利己的な苦情型など多様化しており、対応が困難になってきております。(後略)
(前略)近年、急増する訪日外国人の受け入れに対応するため、国内外の航空ネットワーク充実が求められるなど、我が国の航空需要は一層高まってきております。一方で、航空機騒音は空港周辺のみならず、航空機の経路付近及び回転翼機の自宅上空の運航などについて、住民から不安の声が多数寄せられているところであります。
主な騒音苦情の内容としては「上空通過」、「低空飛行」、「旋回」他多様であり、また、苦情者の形態は一般苦情型をはじめ、飛行する航空機に過度に反応する過敏型、飛行経路の変更を求める自己中心型等多様化していることから対応が困難になってきております。(昨年度の騒音苦情の増加傾向としては、同一人物からの複数回にわたる「低空飛行に伴う飛行騒音に対する苦情」が多数。)(後略)
(前略)国土交通省では、本年3月から新たな飛行経路の運用を開始したことから、これまで以上に航空機騒音に対する国民の関心が高くなってきております。当局では年間800件を超える航空機騒音に対する苦情対応を行っており、また、その多くは首都圏における- リコプターや小型固定翼機の上空通過や旋回、ホバリングなどであり、さらに航空局管内関係機関や関係自治体にも依然として多くの騒音に関する苦情が寄せられているところです。(後略)
中立性を確保すべき立場の役所発信文書に、「激高型」「行政指導強要型」「自己中心型」「利己的な苦情型」「過敏型」といった主観的な表現を用いることは適切なのだろうか。
さすがに、直近の文書(20年9月24日発信)には、そのような主観的な表現は削除されたようだが……。
担当課長が変わっても主観的表現は継承されていた
なぜ公式文書にここまで主観的な表現が用いられていたのか、改めて当時の状況を整理してみた(下表)。
16~18年度の文書を発出した担当課長(国土交通省 東京航空局 空港部 環境・地域振興課長)が変わっても、主観的な表現が続いていたことが確認できる。ということは不満を抱えた担当者が作成した文案を課長補佐・課長とも容認していたことになる。
18~19年度文書を発出したのは宅間和久課長だが、羽田新ルートの本格運用が開始した19年度(20年3月29日)は、お願い文書そのものが発出されていない。
また、20年度の発信文書には主観的な表現がなくなったのは、担当課長が田中勤氏に変わったからなのか、あるいは不満を抱えた担当者が異動になったのか……。
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