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質問主意書|外国人の土地所有を制限「慎重に検討する必要がある」(政府答弁)

第213回国会(24年1月26日~6月23日)の衆議院の質問主意書を眺めていて、外国人による土地の所有に関する質問主意書があることに気が付いた。

井坂信彦 衆議院議員(立憲)が5月30日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成した。

※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

井坂信彦 衆議院議員(立憲)

井坂信彦 衆議院議員(立憲)
衆議院 厚生労働委員会 24年6月5日 動画より)

井坂信彦 衆議院議員(立憲民主党、3期、京大卒、50歳)

令和5年1月末、中国人女性がSNSに、日本の無人島を買いましたという投稿をしたことから、外国人による土地の取得・所有の問題が再燃している。中国のSNSでは領土が増えたなどと注目を集めているようであるが、実際には日本の領土を外国人が所有しているだけであり、領土問題とする認識は間違っている。


他にも長崎県対馬のような島嶼やリゾート地において、外資による土地や不動産の買収が進められている。また、都市部においては、マンションやビジネス用の事務所などを求める外資が増え、東京都を中心に、都市部の不動産価格は上昇している。不動産業界においては、未利用地や空き家の活用など、外資の参入による活性化が進むというメリットがある。


しかし、その使途や占有方法によっては、安全保障上の問題や、資源など経済的損失のおそれがある。そのため我が国では、令和4年にいわゆる重要土地等調査法が施行され、重要施設周辺や国境離島などの土地利用を制限した。

重要土地等調査法の概要
重要土地等調査法の概要|内閣府より


そんな中、岸田総理は、令和6年3月25日の参議院予算委員会において、外国人による土地取得の規制について検討を進めたいと答弁している。法整備以降の状況と今後の方向性について、以下、政府の見解を質問する。

問1:(政府が指定する区域)どのように調査や管理を進めている?

重要土地等調査法で政府が指定する区域は国境や重要施設周辺となっており、辺境の土地もある。自治体や施設管理者の協力が不可欠と考えるが、どのように調査や管理を進めているか政府の取組を伺う。

答1:「基本方針」、これに基づいて実施している

お尋ねの「調査や管理」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本方針」(令和4年9月16日閣議決定。以下「基本方針」という。)において、「土地等利用状況調査は、公簿等の収集を基本とし、必要に応じて、現地・現況調査や法第8条に規定する報告又は資料の提出(報告の徴収等)の方法を適切に組み合わせる形で」実施し、「内閣総理大臣は、法第7条第1項及び関係法令の規定により、土地等利用状況調査のために必要がある場合には、公簿等を保有している関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関・・・に、同項に規定する情報の提供を求めることができる」とされており、これに基づいて実施している

問2:「注視区域」「特別注視区域」、ダムや水源、森林、・・・拡充する予定は?

「注視区域」「特別注視区域」は、防衛施設や国境周辺がほとんどである。発電所、港湾などの重要インフラ周辺について拡充する予定はあるか
また、ダムや水源、森林、天然ガスや地熱など資源を有する土地について拡充する予定はあるか、政府の見解を伺う。

答2:まずは区域内、実態把握を着実に進めてまいりたい

お尋ねの「発電所、港湾などの重要インフラ周辺」及び「ダムや水源、森林、天然ガスや地熱など資源を有する土地」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和3年法律第84号。以下「法」という。)に基づき、御指摘の「注視区域」及び「特別注視区域」について、現時点で想定している指定の作業が令和6年5月に完了したところであり、まずはこれらの区域内における土地及び建物(以下「土地等」という。)の所有及び利用状況の実態把握を着実に進めてまいりたい


その上で、法附則第2条において、「政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされていることを踏まえ、適切に検討してまいりたい

問3:大量の外国人が1坪地主、対抗措置はできているか?

現在は、外国人の個人・法人にかかわらず日本国内の土地を所有することは可能であり、また外国人同士での転売も可能である。
国内の開発予定地において、大量の外国人が1坪地主として権利関係を複雑にして開発を妨害した場合、用地取得が困難になると考えられる。このような事態にならないように対抗措置はできているか、政府の見解を伺う。

答3:特段の措置は講じていない

御指摘の「1坪地主として権利関係を複雑にして開発を妨害した場合」及びお尋ねの「対抗措置」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、現在、政府としては、国籍のいかんを問わず、御指摘の「開発予定地」での開発を妨害するような行為があった場合における特段の措置は講じていないところである。

問4:外国人の土地所有を制限・承認・登録などする制度?

中国やフィリピンはもとより、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツなど多くの先進国は、外国人による土地の取得を制限している。オーストラリアでは政府の承認を必要としている。


区域を限定して利用法を制限するやり方だけではなく、外国人の土地所有を制限・承認・登録などする制度について、政府はどう考えているか見解を伺う。

答4:慎重に検討する必要がある

お尋ねの「外国人の土地所有を制限・承認・登録などする制度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般に、外国人による土地等の取得の規制については、例えば、令和2年11月9日の第1回国土利用の実態把握等に関する有識者会議において、「外国資本等の定義は難しく、仮に、外国資本等だけを対象にすると、いわゆるダミー会社等を捕捉できないおそれもある」という意見が示されており、同年12月24日に同会議で取りまとめられた「国土利用の実態把握等のための新たな法制度の在り方について 提言」においても「新しい立法措置を講ずる場合には、内外無差別の原則を前提とすべきである」とされているところ、これらの意見等も踏まえ、慎重に検討する必要があると考えている。 

問5:権利関係が整理できなくなる前に、現状把握をすべき

すぐに外国人による土地の所有を制限することは難しいとしても、まずは外国人所有の土地についてデータベース化し、現状の把握と起こり得る危機を研究する必要はあるのではないか。

連絡がつかなくなったり、権利関係が整理できなくなる前に、現状把握をすべきと考えるが、政府の見解を伺う。

答5:まずは、実態把握に努めてまいりたい

お尋ねについては、法に基づき、重要施設及び国境離島等に対する機能阻害行為を防止するため、2で御指摘の「注視区域」及び「特別注視区域」における外国人を含めた土地等の所有及び利用状況の実態把握のための調査を実施するとともに、これらの区域以外の土地等については、まずは、実態把握に努めてまいりたい

雑感(日本の水源や森林資源は守れるのか…)

「中国やフィリピンはもとより、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツなど多くの先進国は、外国人による土地の取得を制限している」(井坂議員)。

ところが、日本政府は「新しい立法措置を講ずる場合には、内外無差別の原則を前提とすべきである」(有識者会議の提言)などを踏まえ、外国人による土地等の取得の規制については「慎重に検討する必要がある」と答弁している。

こんなスピード感で、日本の水源や森林資源は守れるのか……。

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