民泊ブームが去り、新型コロナの直撃を食らい、最後まで生き残った中国系民泊仲介サイトは「途家」。その途家に9月20日、アクセスしようとしたら個人情報の登録を求めてきた。
個人情報を登録すると中国政府に筒抜けになることが分かったので、先月の8月20日をもって中国系民泊仲介サイトの定点観測を終了することにした。
※個人情報を求めなくなれば、定点観測を再開するかも……。
最後まで生き残ったのは途家
15年10月から始めた中国系民泊仲介サイトの定点観測。5年近く続けてきたことになる。観測対象は、「住百家(ジュバイジァ)」「自在客(ジザイキャク)」「途家(トゥージァ)」の3つ。
民泊ブームが去り、住百家は経営危機で18年7月9日に上場廃止。自在客は、新型コロナの直撃を食らい、今後の業績回復が見込めないとして20年8月20日以降アクセスできなくなった。
最後まで生き残ったのは途家。
ちなみに、台湾発の民泊プラットフォームとして2013年にスタートした「AsiaYo」は、民泊新法(住宅宿泊事業法)が18年6月15日に施行されて以降大阪で表示件数伸ばしていたが、新型コロナの影響を受け厳しい状況になっている(次図)。
中国系民泊仲介サイトの定点観測終了を判断したワケ
ユーザー登録を求めてきた
先月から途家を中心にフォローしていたのだが、9月20日現在の表示件数を調査すべく検索機能を利用しようとしたところ、いきなりユーザー登録を求める画面が立ち上がった(次図)。
電話番号か、テンセントQQ、新浪微博(ウェイボー)、微信(ウィーチャット WeChat)といった中国系SNSアカウントの入力を求めているのだ。
「微信(ウィーチャット)」といえば、トランプ大統領がTikTokとともに国家安全保障上の懸念を理由に米国内での新規ダウンロードを禁止する大統領令を発令した問題のアプリ。
筆者は中国系SNSのアカウントを持っていないので、携帯電話番号でユーザー登録すべきかどうか迷った。
個人情報が中国政府に筒抜け
ユーザー登録する際に同意を求めてきた「服务协议(サービス契約)」と「隐私政策(プライバシーポリシー)」を念のためつぶさに確認してみた。
結論を先に言えば、ユーザー登録しないことにした。携帯電話番号で登録した個人情報が中国政府に筒抜けになることが分かったからだ。
以下、具体的に解説する。
まず「服务协议(サービス契約)」で気になったのは下記に引用した2つの項目。
「扇動」とか「政府部門」といった、日本のサイトには見られない、おどろおどろしい単語が並んでいる。
※以下の引用は中国語を機械翻訳。
4、サービス利用の基本ルール
4.1 ユーザーは、以下の義務を厳守することに同意します。
4.1.1 送信または公開しない
- 憲法、法律および行政規制の実施に抵抗または弱体化する扇動
- 国家の権力を破壊し、社会主義システムを打倒する発言を扇動
- 国の分裂を扇動し、国の統一を損なう発言
- 民族的憎悪、民族的差別を誘発し、民族的団結を損なうスピーチ
7、プライバシー保護
7.4 途家は、関連する法律および規制に従ってユーザーの個人情報を保護および保管し、本契約以外の目的でユーザーの個人情報を第三者に開示、販売、または貸与しないものとします。
さらに、途家は常に次の目的で個人の専有情報を開示する権利を有します。
- (1)~(3) 省略
- (4)国の法律や規制、または地方の規則や規制によって要求される場合。
- (5)政府部門または準政府部門からの問い合わせへの対応。
- (6) 省略
また、「隐私政策(プライバシーポリシー)」をひも解くと、例外規定として「国家安全保障および国家防衛安全保障に直接関連する」場合、「必要な個人情報を無断で収集、利用」する権限を許諾する形になっていることが分かる。しかもその情報は「中華人民共和国の領土に保存」されるという。
ようするに、携帯電話で登録した個人情報は中国政府に筒抜けということ。
3. アイデンティティ認証サービス
3.5 承認と同意の例外
関係法令により、以下の場合、必要な個人情報を無断で収集、利用させていただくことがあります。
- a. 国家安全保障および国家防衛安全保障に直接関連する。
- b. 公衆安全、公衆衛生、および主要な公益に直接関連する。
- c. 犯罪捜査、起訴、裁判および刑の執行に直接関連する。
- (d.~i.省略)
4. お客様の個人情報をどのように共有、転送、公開するか
4.4. 個人情報の共有、譲渡、公開の許可の例外
関係法令により、以下の場合、お客様の個人情報を無断で共有、譲渡、公開することがあります。
- A. 国家安全保障および国防安全保障に関連する。
- B. 公安、公衆衛生、および主要な公益に関連する。
- C. 犯罪捜査、起訴、裁判および判決の執行に関連する。
- (D.~G.省略)
8. 個人情報の保管
中華人民共和国の領土から取得した情報は、中華人民共和国の領土に保存します。(以下略)
というわけで、中国系民泊仲介サイトの定点観測は先月をもって終了。先月(20年8月20日時点)までの5年間の定点観測結果を以下に保存版として残しておく。
中国系民泊仲介サイトの表示件数の推移【保存版】
サイト別の表示件数
東京・大阪・京都における各サイトの表示件数の推移を次図に示す。
3つのサイトとも、住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行日(18年6月15日)に向けて激減。その後、途家だけが驚異的に回復。ところが、新型コロナ感染拡大の影響で、12月のピーク2.9万件から8か月連続で減少し1.3万件を下回る。表示件数の減少に歯止めがかからない。
【メモ】
- 住百家は19年3月20日以降の件数はゼロ
- 自在客にアクセスできなくなった(20年8月20日現在)
地域別の表示件数
東京・大阪・京都における3つのサイトの合計表示件数の推移を次図に示す。
住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行日(18年6月15日)に向けて激減。その後、急激に回復し、1月のピークには大阪1.6万件、東京1.5万件だったのに、新型コロナの影響で大阪0.4件、東京0.6万件にまで減少。
【メモ】同じ物件が複数のサイトに重複して登録されている可能性があるので、3つのサイトの表示件数の合計が東京・大阪・京都に存在する物件数の合計を意味しているワケでない。
サイト・地域別の表示件数
サイト・地域別の表示件数の推移を次図に示す。
途家は、新型コロナの影響で東京・大阪・京都ともに落ち込みが著しい。
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