羽田新ルート直下の住民ら29人が6月12日、国に新ルートの運用停止を求める行政訴訟を東京地裁に起こした。
羽田新ルート、運用停止求め住民ら提訴(東京新聞)
羽田新ルート直下の住民ら29人が6月12日、国に新ルートの運用停止を求める行政訴訟を東京地裁に起こしたことをマスコミ各社が報じている。
従前から羽田新ルート問題を詳しく報じていた東京新聞をコンビニで購入。社会面に記されていた(写真)。
(東京新聞 6月13日社会面)
羽田新ルート、運用停止求め住民ら提訴
羽田空港(東京都大田区)の発着枠拡大のため、今年3月に運用が始まった新飛行ルートを巡り、「都心やコンビナート上空の飛行は危険で、騒音の影響も大きい」などとして、新ルート直下の住民ら29人が12日、国に新ルートの運用停止を求める行政訴訟を東京地裁に起こした。
訴状によると、新ルートを通る着陸機が都心上空で車輪を出す際、市街地に部品や氷塊を落とす危険性があるほか、住民の騒音被害も深刻だと指摘。また、国が1970年、川崎市のコンビナート上空の飛行を安全確保のため制限したのに、新ルートの運用に向けて昨年12月、適切な理由がないまま解除したのは違法だと主張している。(以下略)
原告29名の分布
原告団29名(第1陣)が住んでいる地域の分布を次図に示す。
都内7つの区(豊島、中野、新宿、文京、渋谷、港、品川)と南風時に出発ルートが設定されている川崎市川崎区である。
※以下、訴状の内容を紹介するにあたり、原告関係者の了解を得た。
訴状の中身
行政処分の取り消しを求めて東京地裁に提出された訴状本文は、A4判24枚(次図)。
「請求の趣旨」として、次の3点が掲げられている。
- 東京航空局長が東京国際空港長に対して発令した2019(R1)年12月16日付の通知(東空保第16号)は、これを取り消す
- 国土交通大臣が、東京国際空港における南風時に運用される進入経路及び離陸経路としてあらたに定め、2020(R2)年1月30日施行された、別紙AIPチャート目録記載の各経路の定めを取り消す
- 訴訟費用は、被告の負担とする
以下、「請求の原因」として、次の5項目が23枚にわたって記されている。
- 1 はじめに
- 2 当事者(原告ら)
- 3 羽田空港の歴史
- 4 本件羽田新飛行ルートの設定
- 5 本件行政処分の違法性
「1 はじめに」の文末に訴訟の目的が記されている。
都心住宅密集地や川崎石油コンビナート地域周辺の原告ら住民・労働者の生命・環境・安全・健康を守るために、本訴による行政処分の取消を通じて、都心・川崎石油コンビナート地域上空の低空飛行をやめさせる、羽田空港の離着陸については、これまでの原則通り、海上ルートを守らせる、これが、原告らの願いであり、本件訴訟の目的でもある。
訴訟の目的は、都心・川崎石油コンビナート地域上空の低空飛行をやめさせること。
ここまでは、分かる。ただ、「2 当事者(原告ら)」以下、「5 本件行政処分の違法性」まで、法律家でないと、なかなかすんなりと頭に入ってこないかもしれない。
幸いなことに、サマリー版(A4判3枚)に要点が記されている。
ようするに、この訴訟は、次の2つの処分の取り消しを求めているのである。
- 川崎石油コンビナート地域上空の飛行制限の取り扱いを廃止した、東京航空局長が発令した2019年12月16日付の通知
- 川崎コンビナート上空を飛行する進入飛行(離陸路)ルート及び、都心上空を飛行する進入飛行ルート(着陸路)の定め
具体的な主要な論点として、次の5つが掲げられている。
- 離発着の1.1万回の増便は、真に新ルートの設定でしか対応できないのか一 成田やその他空港での吸収可能性
- 離陸に伴う航空機の墜落の危険(バードストライク)と川崎石油コンビデート事故による甚大な被害の可能性
- 都心上空を飛行する際の落下物の発生と生命、身体、財産の危険
- 離発着に伴う騒音による各種の生活被害
- 離発着に伴う膨大な排気ガスの発生に伴う健康被害
訴状で触れられていない点
訴状で触れられていないのは、北風時に荒川沿いを北上する出発ルート(次図)。
原告に江戸川区や江東区の住民が含まれていないので、原告不適格として門前払い(=却下)される可能性を排除するために同ルートを訴状には含めなかったようだ。
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