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大前研一『経済を読む力』政府発表に騙されてはいけない

本の帯のド派手なコピー「政府発表に騙されてはいけない」にひかれて、大前研一氏の新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』(小学館新書) を購入。

76歳になっても、大前節は健在。不動産に係る部分を抜粋しておいた。


もくじ

経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識

今はキャッシュを温存、バブルが完全に崩壊してから買え

都心回帰の流れは、間もなく頭打ち。今はキャッシュを温存しておいてバブルが完全に崩壊してから買えば、今よりずっと割安で買うことができるはずだという著者の見立て。

五輪は不動産市場の起爆剤にあらず

(前略)マンションは、中国人を当て込み、2LDK以上の高額な物件を多数供給している。だが、それを購入するはずだった中国人は不動産市場から撤退しつつある

さらに、日本の世帯数は2019年の5307万世帯をピークに減少していく(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」)。

 現在、千代田区や中央区は1990年代半ばから人口増に転じているが、これは主に引退した高齢者の都心回帰だ。かつて1時間半かけて郊外から通勤していた人たちが、子供の独立などを機に都心に戻ってきているのである。

だが、彼らが中国人と同じようなハインドの住居を求めているかと言えば、そうではない。1LDKでかまわないのである。そして彼らに続く世代には、都心回帰する余裕がない。都心回帰の流れは、間もなく頭打ちなのである。

(中略)今はキャッシュを温存しておいてバブルが完全に崩壊してから買えば、今よりずっと割安で買うことができるはずだ

(P85-86/第1部)

※中国事情に詳しいジャーナリスト中島恵氏は、著書のなかで、中国人富裕層が海辺に住みたがる理由として「海辺は風水的に見て運気がよいだけでなく、窓から海の景色が見えるのは気持ちがいい」を掲げていたのだが……。

『日本の「中国人」社会』富裕層のマンション選び

日本に残された成長余力は、「土地ボーナス」しかない

容積率を緩和して「土地ボーナス」を開放すると、必然的に建て替えブームが起きる。その開放に全力を尽くすべきという大前氏の提案。

建て替えブームが起きる

(前略)このようにして容積率を緩和して「土地ボーナス」を開放すると、必然的に建て替えブームが起きる。容積率が2倍になったら大半の人が建て替えるので、個人金融資産1835兆円と企業の内部留保463兆円が出動し、一気に景気が良くなるだろう。(中略)

 その結果、何が起きるのかといえば、安倍政権が重要課題の一つに掲げている地方創生とは逆の「都心回帰」「東京一極集中」である。
 だが、世界中で地方も含めて全国が一斉に経済成長を続けた例はないし、都心に高層マンションが増えれば、住宅の価格や賃貸料が安くなり、職住接近も進んで便利になる。ゴミゴミしている都心は嫌だから日当たりの良い家がある郊外に住みたいという人も、今よりずっと安く不動産が買える。二つの家を持ち、週末だけ郊外に住む生活も可能になる。

 規制でがんじがらめになった日本にアベノミクスを導入しても、経済はピクリとも動かない。日本に残された成長余力は、「土地ボーナス」しかないことを理解し、その開放に全力を尽くすべきなのである。

(P230-231/第3部)

※首都大学東京の饗庭伸教授は「容積率緩和などの規制改革で民間主導のまちづくりを進める狙いも絵に描いた餅に終わり、不動産会社は(再開発時に利益を見込みやすい)高層マンションしか造れなくなってしまった」と指摘。容積率緩和で「タワーマンション先進地域」になったのは東京都中央区。

不都合な真実が浮き彫り!『限界都市 あなたの街が蝕まれる』 

無電柱化は立派な「成長戦略」だ

無電柱化を実現できるか否かは、地方自治体が国任せにせず、責任感を持って自主的に取り組むかどうかで決まるという。

無電柱化は立派な「成長戦略」だ

(前略)そもそも無電柱化は街の景観を良くして不動産の価値を上げるのだから、これは立派な「成長戦略」だ。

アベノミクスでも「第3の矢」(民間投資を喚起する成長戦略)として策定した「日本再興戦略」の中に無電柱化の推進を盛り込んでいるが、その目的は「観光地の魅力向上等を図るため」となっている。

しかし、無電柱化の本来の目的は、その街に住んでいる人々の資産価値を上げることや安全や防災にある。無電柱化を実現できるか否かは、地方自治体が国任せにせず、責任感を持って自主的に取り組むかどうかで決まるだろう。

(P236/第3部)

※都も無電柱化を積極的に進めているが、なかなか進んでいない。

東京の無電柱化|東京都建設局

本書の構成

3部構成、253頁。

  • 第1部 新聞ではわからない「株価と為替と景気」の新常識
  • 第2部 新しい「世界経済」と「日本経済」への視点
  • 第3部 「2020年代」のための成長戦略

経済を読む力

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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