港区議会の「18年第4回定例会」本会議一般質問(11月29日、30日)で、羽田新ルートに関して、大滝実議員(共産党)、兵藤ゆうこ議員(みなと政策会議)の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約4千500文字)しておいた。
※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」をお読みください。
大滝議員(共産)
大滝実議員(共産、区議3期、春日部工業高卒、69歳)
大滝:予定航路下の住民に対しては小学校区ごとに説明会を開くこと
「羽田空港への新飛行経路案の撤回」についてです。
今月21日に「港の空を守る会」が記者会見し、航路下住民アンケートの実施結果について発表しました。航路下の住民等が計画を理解しているかどうかを把握するため、アンケートを実施したと述べました。
約3万8千戸に配布し、11月19日現在1,344通の回答があったとのこと。
結果は、「この計画をご存じでしたか?」の問いに、「内容を含めて知っている」は37.2%、「聞いたことはあるが、内容はよく知らない」が43.7%、「全く知らない」が17.9%で、6割以上の方が計画を知らないということです。
「この計画に対してどう思いますか?」の問いに、「中止して欲しい」84.6%、「不安」34.3%、「賛成」1.3%、「いずれとも言えない」1.7%です。
約85%の方が「中止」を求めています。「賛成」はわずか1.3%と極めて少数でした。
「中止してほしい」「不安」と答えた理由は、「騒音」91.3%、「落下物の危険」82.4%、「墜落の危険」69.7%、「資産価値の減少」48.9%、です。
国交省は12月から第5次の説明会を開催することを発表し、区内でも1月に2会場で開く予定ですが、相変わらずオープンハウス型です。しかも一部報道では第5次で終わる方針としています。
国交省は区長、区議会が度々要求してきた教室型説明会を開かず、オープンハウス型の説明で終わりにしようとしています。こんなことが許されていいのでしょうか。
一方的な情報提供だけで、「丁寧な説明をした」として計画を強行するなどあってはなりません。そのため、
- 内全域での説明会開催とともに、予定航路下の住民に対しては小学校区ごとに説明会を開くこと、その際、全戸への案内配布、教室型の説明会、参加者や質問者への制限をしない、質問への要を得た回答など、事前に文書で申し入れること
- 航路予定下で示された「中止して欲しい」という圧倒的な声を国交省に届けること
- 区長は区民の理解が得られていない現状からも計画の撤回を申し入れること
答弁を求めます。
議長に質問します。議会の学習会で国交省は「住民の理解が得られていないという認識であり、教室型の説明会は検討する」と発言していました。議会が度々要求している教室型の説明会を開くよう申し入れること。答弁を求めます。
武井雅昭 港区長(無所属、4期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、65歳)
区長:国土交通省へ事前に文書で申し入れてまいります
「羽田空港への新飛行経路案の撤回」についてのお尋ねです。
まず、「区内全域等での説明会の開催と、その際の対応を国に申し入れること」についてです。羽田空港の新飛行経路につきましては、区が国に対し教室型説明会の開催を強く求めてきた結果、4か所において区民等を対象とした教室型説明会が実現をいたしました。
今後とも航路下の小学校区など、区内全域で教室型説明会を開催することや周知方法を工夫すること、また説明会においては区民の意見や質問等への丁寧な説明を行うことについて、国土交通省へ事前に文書で申し入れてまいります。
次に、「『中止して欲しい』という声を国土交通省に届けること」についてのお尋ねです。
区はこれまでも国に対して、羽田空港の新飛行経路案については区民等へのきめ細かな情報提供を行うとともに、ご意見等を真摯に受け止め、十分に納得を得たうえで検討を進めるよう強く申し出てまいりました。
今後も引き続き区民等のご意見について国土交通省に伝えてまいります。
次に、「計画の撤回を国に申し入れること」についてのお尋ねです。
羽田空港の機能強化に関する計画については、国の責任において区民等に丁寧な説明を行い、十分な理解を得て検討進めるべきものと考えております。
区は「計画の撤回を国に申し入れること」は考えておりませんが、今後とも区民の安全と生活環境を守る立場から、区民へのきめ細やかな情報提供を行うことなど、引き続き国へ要請をしてまいります。
議長:各会派の皆さんにご相談してまいります
池田こうじ議員(自民、区議3期、社会福祉法人理事長、慶應院卒、54歳)
ただいまの共産党議員団を代表しての大竹実議員のご質問にお答えいたします。
「羽田空港への新経路案に関する教室型説明会の開催を国に申し入れること」についてのお尋ねであります。
申し入れすることにつきましては、各会派の皆さんにご相談してまいります。よろしくご理解いただきたいと思います。
大滝:撤回を国交省に申し入れをしてほしい
羽田空港への新飛行経路案についてです。
「教室型説明会について」ですけれども、先程の答弁では「4か所やりました」ということだったわけですけれども、その後のいわばオープン型の説明会という形で、教室型説明会をやったとしても4か所で、しかも様々な制限があったというような状況だったんです。
ところが、品川区では第5フェーズの説明会、これから計画している第5フェーズの説明会とは別に教室型の説明会を12月中に13か所で開くことを調整しているというふうにもう聞いています。
ですから、そういう意味では港区でも先ほど言いましたように、航路下あるいは全地域も含めて教室型の説明会を品川はどういうことでこれだけのことができたのかよく調査をしていただいて、必ずこの全地域での教室型での説明会を開くようにぜひ申し入れをしてほしいということです。
それから、もう一つは「落下物の危険の問題」ですけれども、第3回定例会の時にも国交省は昨年11月から今年5月までの主要7空港で部品欠落件数、いわば飛行機からの部品が落ちている数ですけれども、219件ということで国会答弁があったのを紹介したしましたけれども、その後3月に落下物対策総合パッケージを取りまとめて実施をするということになったわけです。
いわば落下物対策というものは強化を図っているというわけなんですけれども、その後落下物の部品欠落数はどうかというと10月までの欠落数、ですから去年11月から今年の10月まで1年間で397件と、こういうふうになっています。
引き続き毎日1個以上のものがなくなっているという現状は変わっていないんです。
この対策を打っても、国交省は「部品の落下というのはゼロにならないんだ」というふうに言っていましたけれども、その通り現実には変わっていないというのが実態なんです。
ですから、1番の安全対策というのは人口密集地域の上を飛ばないということが1番の安全対策なんで、ぜひとも区長は撤回を国交省に申し入れをしてほしいということです。
区長:安全安心(略)積極的に取り組むよう引き続き国に要請
「羽田空港への新飛行経路案の撤回」についてのお尋ねでございますが、「説明会について」ですが、国土交通省では12月15日から関係区市で第5フェーズのオープンハウス型住民説明会を開催する予定でございます。
オープンハウス型住民説明会以外にもこれまで開催した地域等も含めた全区域での教室型説明会を開催するよう改めて国に要請をしてまいります。
次に、「計画の中止を申し入れること」についてでございますけれども、区民からの騒音や落下物等を不安に思うこうした声についても様々な機会を通じて国に伝えてまいりました。
区といたしましては区民の安全や生活環境を守る立場から、区民等へのきめ細やかな情報提供を行うとともに、これらの不安の払拭に向けて安全安心や生活環境守る対策等について積極的に取り組むよう引き続き国に要請をしてまいります。
兵藤議員(みなと政策会議)
兵藤ゆうこ議員(みなと政策会議、区議1期、美容業界出身、東海大卒、51歳)
兵藤:不動産価値調査に関する国への申し入れ
「羽田空港機能強化に伴う不動産価値調査に関する国への申し入れ」についてです。
国土交通省は羽田空港増便新飛行ルート計画により、これまで住民説明会、教室型、オープンハウス型を開催してきました。
それによる経済効果について、中間時間帯の国際線が約80便から130便へと1.7倍に拡大することにより、利用者の利便性が大きく向上、経済全般、インバウンドに大きな効果があるとし、東京都への年間経済波及効果は約3,800億、税収増加は約280億円、雇用増加は2.5万人と試算しています。東京2020大会に向け、国土交通省は「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ」を踏まえた今後の首都圏空港の機能強化に関する取り組み方針について、平成26年7月まとめによると、羽田空港、成田空港ともに新滑走路を増設し、約83万回、東京2020大会以降の技術的な方策として、成田、羽田とともに約100万回にするとしています。
南風時には港区の上空、品川駅では450mを通って着陸するため、区民から羽田空港の飛行ルートの見直しを含めて反対する請願が提出され、継続審議となっています。
しかし、これまでの住民説明会で出た意見では騒音、落下物、不動産価値の下落に対する不安など、まだ納得のいく説明ができていないのではないかと考えています。
先日の区議会における説明会で、新しいところは学校病院等の騒音工事の助成対象を拡充、保育施設も新たな対象としました。
ただ、オープンハウス型説明会でも、まだまだ住民の不安は騒音問題、落下物、不動産価値下落など、納得のいく説明会ができているとは考え難い状態です。
国土交通省は「航空機騒音と不動産価値については様々な要因により決定する」とし、「航空機騒音により不動産価値が下がるといった直接的な因果関係は把握されていない」としていますが、区民の不安を払拭するために、区から国に対してきちんと因果関係を調査することを申し入れるべきと考えますが、区の見解をお伺いいたします。
区長:不動産価値との因果関係を調査、国へ要請してまいります
「羽田空港機能強化に伴う不動産価値調査に関する国への申し入れ」についてのお尋ねです。
国は、「航空機の飛行経路と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係は把握されてない」としておりますが、不動産価値との因果関係を調査することについて国へ要請してまいります。
雑感(国は不動産価値調査を実施できるか…)
「羽田空港機能強化に伴う不動産価値調査に関する国への申し入れ」(兵頭議員)に対して、区長は「不動産価値との因果関係を調査することについて国へ要請してまいります」と応じている。
もし国交省が不動産価値との因果関係調査を実施することになったら、その調査結果を公表すること自体が、新飛行ルート下の不動産価値を棄損する可能性があるのではないか……。
そうなったら、国は固定資産税の低減措置などの対策を取るのだろうか。その前に、集団訴訟を起こされるのではないのか、とか諸々のことを想像していくと、国としては不動産価値調査に簡単には応じないであろうという結論に至る。
※マスメディアが取り上げなければ、羽田新ルート問題は区民には届かない。区議会議事録の肥しとなるだけだ。弱小なこのブログメディアによる区議会質疑応答の全文書き起こし情報が少しでもお役に立てば幸甚。
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