先月末の品川区長選挙では、羽田新ルート容認派の現職が4選を果たした。羽田新ルート撤回派の票が割れて、野党統一候補の佐藤氏はあと一歩及ばない結果となった(次図)。
「品川区長選挙の開票速報・結果(2018年9月30日)」より
さて、来月中旬に実施される新宿区長選挙(投票日11月11日、告示日11月4日)はどうなるのか?
現職の吉住健一区長は6月12日、区議会定例会で下村治生区議(自民)の代表質問に答え、再選を目指して立候補する意向を表明している。
対立候補は未定(10月6日現在)。
現状では現職(羽田新ルート容認派)有利
まず、過去4回の区長選挙の結果を可視化(次図)。
最初に目に付くのは、25~26%という投票率の低さだ。つまり4人のうち1人しか投票所に足を運んでいないのである。
前回(14年)の区長選挙は、中山弘子氏が3期で退任後、自公推薦の吉住健一氏(39,127票)が共産推薦の岸松江氏(24,262票)を14,865票の差で破っている。
今回の区長選挙の投票率が従前並みに低ければ、自公の推薦を受ける現職吉住健一氏が再選される可能性は極めて高い。
なぜならば、過去4回の新宿区議会議員選挙の自公の得票率は毎回5割近くを占めているからだ(次図)。
逆に言えば、対立候補が現区長に勝つためには、野党統一候補を立てたうえで、無党派層を取り込むことが必須であることが分かる。
「羽田新ルート撤回」区長誕生の可能性
現区長の吉住健一氏は羽田新ルート容認派。野党統一候補は羽田新ルート撤回を公約に掲げ、羽田新ルート周辺の有権者の票を取り込むことができれば大差で勝つことが可能だ。
筆者の独自調査によれば、新宿区内の羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は7.8万人(詳細は後述)。このうちの3割の票が得られれば2.3万人。これに野党3万票を加えると5.3万票となるので、前回の当選者吉住氏の得票数39,127票、前々回の当選者中山氏の得票数44,472票を大きく上回ることができる(次図)。
羽田新ルート周辺の有権者数8万人(推定)
羽田新ルート周辺の有権者数を推定する。
結論を先にいえば、羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は約7.8万人という推定結果となった。
以下、7.8万人を推定した手順を記しているので、時間がない方は次の見出し「羽田新ルート周辺の有権者数8万人にアピールできるか…」まで読み飛ばしても構わない。
新宿区民3割(9万人)が騒音の影響を受けることについては、先日このブログで紹介した。
「羽田新ルート|新宿区民3割が騒音の影響」より
※ピンク色のエリアは、新飛行ルート直下から水平距離で500mの範囲を示している。
「新宿区民3割(9万人)」という数字は、15年10月1日時点の国勢調査のメッシュ・データ(250mメッシュ)がもとになっている。
では、11月の区長選挙時点での、有権者数のうち何人くらいが羽田新ルートの影響を受けるのか?
15年国勢調査のメッシュデータには、総人口のほか、「20歳以上人口総数」と「外国人人口総数」も公開されている。ただ、残念ながら18歳以上の人口総数までは分からない。
そこでまず、「総人口」に占める「外国人人口総数」の割合を計算し、「20歳以上人口総数」から「外国人人口総数」の割合を差し引いたデータを「有権者数」として、羽田新ルート500m範囲のメッシュデータを集計した(次表)。
羽田新ルート500m範囲には、2015年の国勢調査時点で新宿区全有権者数の3割(7.3万人)が住んでいることが確認できた。
では、現時点では、羽田新ルート500m範囲には何人くらい住んでいるのか?
2015年の国勢調査時点7.3万人をベースに、その後の人口増と選挙権が18歳まで拡大されたぶんを補正してみよう。補正に用いたのは、新宿区HPで公開されている住民基本台帳人口(18年10月1日現在)のデータ。
最新データで補正した結果、羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は約7.8万人となった(次表)。
上表の推定根拠は次のとおり。
【羽田新ルート500m範囲の有権者7.8万人の推定根拠】
現在の羽田新ルート500m範囲の有権者数=2015年の羽田新ルート500m範囲の有権者数×人口割増(18年10月1日/15年10月1日)×18歳割増(選挙権拡大ぶん)
7.3万人×1.040×1.021=7.8万人
- 人口割増:1.040=345,722人÷ 332,324人
- 18歳割増:1.021=1+6,402人(18年10月1日18~19歳)÷309,765人(同18歳以上)
羽田新ルート周辺の有権者数8万人にアピールできるか…
「羽田新ルート撤回」を掲げて野党統一候補が当選するためには、新ルート周辺に住んでいる有権者8万人の投票率を上げ、できるだけ多くの反対票を投じてもらうことが鍵となる。
羽田新ルート周辺の有権者が住んでいる地区は具体的にどこなのか?
新宿区の町丁目レベルの行政境界マップに羽田新ルートを重ねたのが次図。
※図中の小さな文字は町丁目名を示している。
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上図をもとに、羽田新ルートが通過する地区(合計17地区)を以下に示す。
- 【好天時のみ(6地区)】
中落合1丁目、中落合2丁目、中落合3丁目、上落合1丁目、上落合2丁目、北新宿4丁 - 【悪天時のみ(6地区)】
中落合4丁目、上落合3丁目、西落合2丁目、中井1丁目、中井2丁目、北新宿2丁目 - 【好&悪天時(5地区)】
北新宿1丁目、北新宿3丁目、西新宿1丁目、西新宿7丁目、西新宿8丁目
羽田新ルート周辺の有権者7.8万人に投票所まで足を運んでもらうためには、やみくもに「羽田新ルート撤回」を叫ぶのではなく――
羽田新ルートの影響を受ける地区(17か所)を重点的に攻めるとか、「みなとの空を守る会」が港区の新ルート周辺の住民を対象に配布している「アンケート」(下図)にならうとか、的を絞った戦略が求められる。
※本試算には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。