羽田新ルートを通る航空機が数分間だけ飛行する「横田空域」とは具体的にどこなのか?
「首都圏詳細航空図」のデータをもとに、「羽田新ルート・グーグルマップ」に横田空域を落とし込んでみた。
羽田新ルート、米側合意得られず(読売)
米軍横田基地が管制権を持つ空域を一時的に通過することについて、米国側の合意が得られていないことを伝える読売の記事。
国際線増便する羽田新ルート、米側合意得られず
羽田空港発着の国際線を増便するため、東京都心上空を飛行させる新ルートを巡り、米軍横田基地が管制権を持つ空域を一時的に通過することについて米国側の合意を得られていないことがわかった。(中略)
新ルートを通る航空機は、横田基地が管制権を持つ「横田空域」を数分間だけ飛行することになる。関係者によると、政府は、横田空域の通過やその間の航空管制を日本側が担うことを米国側に要望していたが、合意を得られず、現在も交渉が続けられているという。(以下略)
(読売新聞 10月4日)
羽田新ルート計画がこのまま頓挫してしまうのか、あるいは政権の”粘り強い交渉力”によって、来年4月の統一選挙前までに”解決”するのか。
安倍総裁の3選決定後、秋の臨時国会開催前という絶妙なタイミングで、政府関係者から伝えられた情報であるというのがなんとも怪しい。
このあたりの怪しさについては、「なぜNHKはこのタイミングで報道したのか?」を参照。
「首都圏詳細航空図」をアマゾンで購入
新ルートを通る航空機が数分間だけ飛行する「横田空域」とは具体的にどこなのか?
ネットでググってみると、横田空域のおおまかな位置は分かるものの(次図)、正確な位置情報までは得られない。
しかたがないので、アマゾンで「首都圏詳細航空図」を注文。2,916円 (;_;)
新聞見開きの倍の大きさの地図が1枚送られてきた(写真)。
高い建物やヘリポートの位置が記号で記載されていたり、航空制限(上限高度・下限高度)情報が数字で記載されている。
南北方向に走っている太い線が横田空域の境界線。境界線の左側には「YOKOTA VFR RADAR ADVISORY SERVICE AREA」と記されている。
(首都圏詳細航空図)
横田空域を可視化
アマゾンで購入した「首都圏詳細航空図」から横田空域の境界線の座標を拾い、以前作成した「羽田新ルート・グーグルマップ」(羽田新飛行ルート直下の地域かどうか、簡単に知る方法)に落とし込む。
そうして完成した、横田空域の境界線付きの「羽田新ルート・グーグルマップ」が次図。
羽田新ルート・グーグルマップ
※実際の同マップには横田空域の境界線は表示されるが、ピンク着色エリアは表示されない
上図をもとに、23区の行政区画の境界線を入れて分かりやすく表示したのが次図。
板橋・練馬・中野区上空を通過するルートの一部が横田空域に含まれていることが確認できる。
羽田新ルート変更の可能性
難航している日米交渉を打開するために、羽田新ルートの位置を変更することは可能なのか?
横田空域を避けるためには、現在設定されている新ルートをもう少し東側に移動させる必要がある。ただ、あまり東側に寄せすぎると、滑走路に侵入する前に大きく旋回する必要があるし、皇居や国会議事堂の上空を飛行することが許されるのかという問題もある。
このように素人的に考えても、横田空域を避けて新ルートを東側に移動させることは難しそうだ。
では、横田空域を通過する間の航空管制権を在日米軍が日本側に引き渡すかといえば、これはこれで難しいということなのだろう。
今回の件で、戦後70年以上も経過しているのにいまだ首都圏の上空は米軍に支配されているという、不都合な真実が広く国民に知れ渡ることとなるのか……。
【追記】横田空域の管制権、一部日本移譲…米軍と合意へ
(前略)協議の結果、米軍は旅客機の通過時間帯を午後の短い時間に限ることなどを条件に、日本側の管制を容認する方向となった。五輪終了後も、日本側が管制を続ける見通しだ。
(読売新聞 18年11月4日)