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金融政策では、住宅需要を底上げできない

日本銀行金融研究所所長などを歴任した翁邦雄氏による最新刊『金利と経済――高まるリスクと残された処方箋』ダイヤモンド社(2017/2/17)を読了。

マイナス金利の功罪や、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の行く末を理解したくて読み始めたのだが、専門的な内容の多くが専門的に表現されているので、読みこなすのに苦労した。

このブログの読者にとって、金融政策論に興味を持つ方は多くないだろう。なので、本書で触れられていた金融政策と住宅投資のくだりのみ、抜粋しておこう。 

金融政策では、住宅需要を前倒しすることはできても、底上げすることはできない

金利が下がっても、住宅需要の先食いにしかならないという指摘。

金利政策で住宅投資が増えるのは、金利低下がエコポイントのように需要を前倒しさせる効果がある場合だ。しかし、金利低下が、需要前倒しに有効だったとしても、それは、後年の需要を減らす効果をもつ。
金融政策では、住宅需要を前倒しすることはできても、底上げすることはできない。長期的に建てられるべき家の総数は人口動態や家族形態、家屋の耐久性などに規定され基本的には金利では増やせない。他方、日本では近年、空家率の上昇に関心が集まっている。その長期予測はいくつかあるが、いずれをみてもかなりのテンポでの上昇が避けられない。

「第7章 「イールドカーブ・コントロール」の行方」P175

 

金融政策による住宅需要の前倒しは、網の目を細かくして幼魚、稚魚まで取りつくす漁法と同じだという比喩。

人口減少のなか空家率が上昇している日本において、金融政策でどんどん需要を前倒しして現在の需要不足を埋めていこうとすれば、網の目を細かくして幼魚、稚魚まで取りつくす漁法の改善が水産資源を先細りさせるように、将来の住宅需要を減らし、自然利子率を下げていくだろう。
金融政策手法を改善し、実質金利を低下させることで需要を前倒しできるとしても、その効果が発揮されれば発揮されるほど、自然利子率が低下するという悪循環により、インフレの加速が必要になる。日銀のように予想インフレ率を上げて実質金利を下げようとすれば、結果として2%のインフレ目標はどこかで破綻する

同P176 

本書の構成

全262ページ。

  • 第1章 金利とは何か
  • 第2章 バブルとデフレ、どちらをとるか
  • 第3章 長期停滞が懸念される理由
  • 第4章 自然利子率がマイナスの場合の金融政策
  • 第5章 マイナス金利政策の登場
  • 第6章 「マイナス金利」追加の功罪
  • 第7章 「イールドカーブ・コントロール」の行方
  • 第8章 「財政政策の時代」と金融政策

金利と経済』(ダイヤモンド社)

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