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質問主意書|横浜市の地震被害想定は古い、神奈川県と不整合

第203回国会(20年10月26日~12月5日)の衆議院の質問主意書83件のなかに、65番目として空き家に係る次の質問主意書が埋もれている。

早稲田夕季 衆議院議員(立憲民主党)が11月30日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

早稲田夕季
早稲田夕季 衆議院議員(1期、立憲民主党、 早大法卒、62歳)

国は防災基本計画において、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を想定し、対策を推進する」旨を規定しているところ、横浜市は最大クラスの地震として東日本大震災以前に行った想定を基礎とした「元禄型関東地震」を採用し、そのデータを基に、市内の18区毎に物的・人的被害及び経済被害の予測を行い、横浜市地震被害想定調査報告書として2012年10月に公表している。他方、神奈川県は最大クラスの地震として東日本大震災以後に行った想定を基礎とした「大正型関東地震」を採用し、そのデータを基に、同じく横浜市内十八区毎の物的・人的被害及び経済被害の予測を行い、神奈川県地震被害想定調査報告書として2015年3月に公表している。


この二つの報告書を見比べてみると、例えば栄区でいえば、建物の全壊棟数が市の想定で670棟に対して県の想定は4,740棟、18時に発災した場合の死傷者数は市の想定で515名に対して県の想定は3,060名、1か月後の避難者数は市の想定で4,963名に対して県の想定では4万3,110名となっており、実に6倍から8倍の開きとなっている。


そして両者は、横浜市内の被害想定についてこのような差異を調整することなく、それぞれに防災計画と地震防災戦略を策定し、公表している。

県の地震防災戦略においては、大正型関東地震の死者数を概ね半減することを減災目標として各種行動計画を策定している一方で、市のそれ(横浜市地震防災戦略)においては、元禄型関東地震の死者数を半減することが減災目標と設定され各種行動計画が策定されている。


さらには2019年4月、改正災害救助法の施行により、内閣総理大臣は横浜市を救助実施市に指定し、これにより救助の実施主体が神奈川県から横浜市に変更されたところであるが、6分の1から8分の1の被害想定しか行っていない横浜市に救助の実施主体が変更されたことで、救助や避難に必要な物資の備蓄や供給、あるいは避難所の設置や応急仮設住宅の供与などの数量が減ってしまうのではないかとの不安が市民の一部にある。

このような状況を踏まえ、以下質問する。

問1:政令市が被害想定を都道府県より小さく見積もっている場合、必要となる物資の備蓄や供給、あるいは避難所の設置や応急仮設住宅の供与などの数量が減らされることはないか

改正災害救助法による救助実施市の指定は、広域の大規模災害に際し、都道府県が救助実施市以外の市町村における救助に注力できることを狙いとしていると承知しているが、政令市が被害想定を都道府県より小さく見積もっている場合、救助実施市に指定されることで、市の防災計画や地震防災戦略に基づいて実際に行われるところの市民の救助や避難に必要となる物資の備蓄や供給、あるいは避難所の設置や応急仮設住宅の供与などの数量が減らされることはないか

法制度上の一般論として、政府として承知しているところをあきらかにされたい。

答1:災害救助法に指定されることによって、その数量が制限されることはない

お尋ねの「数量が減らされる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、災害が発生した場合に備えた物資や資材の備蓄については、災害対策基本法昭和36年法律第223号)第49条の規定に基づき、都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。の判断で実施されていると承知しているところ、災害救助法昭和22年法律第118号)第2条の2第1項に規定する救助実施市(以下「救助実施市」という。に指定されることによって、その数量が制限されることはないものと考えている。


また、同法による救助は、事前に特定の災害を想定して行うものではなく、発生した災害の程度、態様等に応じて行うものであり、救助実施市に指定されることによって、救助として、災害が発生した場合に備えた物資や資材を供給する量や、避難所及び応急仮設住宅を供与する数量等が制限されることはないものと考えている。

問2:横浜市においても、県の被害想定と整合性を持たせるべき

災害救助法第2条の3に基づき、神奈川県による連絡調整機能が働くことで、質問1で述べたような行政サイドの備えについての懸念は当たらないとしても、横浜市栄区が配布している震度分布予測マップが、区民に最大クラスの地震の可能性を周知していないこととなるなど、市民自身が自助や共助で災害に備えるにあたり、県と市で想定震度や被害想定が大きく異なることは、望ましいことではない。


横浜市と神奈川県の被害想定が大きく異なる原因は、異なる過去の地震データを使用していることにある

国が防災基本計画において自治体に求めている「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震」は、知見の蓄積に応じて適時に更新されるべきで、政令市の防災計画における想定地震と道府県の地域防災計画との異同を全国的に調べたところ、多くの救助実施市で府県と調整されており、京都市、岡山市、福岡市などでは同じ地震データを採用していることも明らかになった。


横浜市においても、より最新の知見であるところの神奈川県が想定する「大正型関東地震」とその地震データを採用し、地震被害想定調査をし直して、県の被害想定と整合性を持たせるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

答2:政府としても、必要な助言等を行ってまいりたい

一般的に、都道府県と市町村が、災害対策基本法第34条第1項の規定に基づき中央防災会議が作成する防災基本計画に基づき、地震防災対策の立案の基礎とするため、具体的な被害を算定する被害想定(以下「被害想定」という。)については、可能な限り整合性が確保されていることが望ましいと考えており、御指摘の「横浜市と神奈川県の被害想定」について相違がみられることについては、一義的には、神奈川県と横浜市との間で調整されるべきものであるが、政府としても、必要な助言等を行ってまいりたい

問3:神奈川県は横浜市に対して、必要な情報が市民に行き渡るよう、助言するべき

横浜市防災計画では、仮設住宅については神奈川県の配分計画に基づくこととなっていたり、神奈川県の地域防災計画においては、避難所は市町村において指定する前提で書かれており、両者の防災計画上は一定の調整が働いていることがうかがわれる。

しかし横浜市防災計画では、避難所となる施設名の記載がある一方で収容定員が公開されていないため、想定している避難者数全員を収容できるかどうか、市民にはわからない


災害対策基本法第42条第6項において、「都道府県知事は、前項の規定により市町村地域防災計画について報告を受けたときは、都道府県防災会議の意見を聴くものとし、必要があると認めるときは、当該市町村防災会議に対し、必要な助言又は勧告をすることができる。」とある。


震度や被害の想定は、地域防災計画を作成する際に基となる数値であって地域防災計画そのものではないが、この条項を根拠として、神奈川県は横浜市に対して、神奈川県が採用しているところの、最新の知見に基づく「大正型関東地震」を最大クラスの地震として採用し、地震被害想定調査をし直すことで、県と市の地域防災計画に基づく市民の災害救助上の調整、連携をより精緻なものとするとともに、地震防災戦略や区民に配布する震度分布予測マップも改定するなど必要な情報が市民に行き渡るよう、助言するべきではないかと考えるが、政府の見解を求める。

また、神奈川県が助言をしない場合、国としてどのように対応するのか。

答3:政府としても、必要な助言等を行ってまいりたい

御指摘の横浜市地域防災計画については、神奈川県知事において、災害対策基本法第42条第6項の規定に基づき、同計画の修正の報告を受けた場合にその内容の確認が行われているほか、普段から、神奈川県と横浜市との間において、同計画に記載されている個々の地震防災対策について、必要と認めた調整がなされているものと承知している。

その上で、一般的に、物資の調達や帰宅困難者対策等、被害想定を前提として作成されている都道府県と市町村の地域防災計画の記載内容について、可能な限り整合性が確保されていることが望ましいと考えており、御指摘の神奈川県地域防災計画と横浜市地域防災計画について、政府としても、必要な助言等を行ってまいりたい

問4:各自治体の財政的・人的資源上の制約による震災対策の格差はどの程度まで許容される?

東日本大震災以後に行った想定を基礎とした「大正型関東地震」を採用した地震被害想定調査報告書を神奈川県が2015年3月に公表した後も、横浜市がその最新の知見を採用して被害想定調査を行わない理由として、市の防災計画の期間がまだ数年残っていることや、市の財政的・人的資源などを勘案し、やむなく対応可能で現実的な震災対策を維持しているのではないかとの指摘もあるが、防災基本計画に明記した「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を想定し、対策を推進する」上で、各自治体の財政的・人的資源上の制約による震災対策の格差はどの程度まで許容されると考えているか


また政府は、許容される格差の幅に対する基準や、自治体の震災対策に関する監査について具体的なガイドラインの策定を検討すべきではないかと考えるが、政府の見解をあきらかにされたい。

答4:個別の実情を勘案しつつ、必要に応じ助言等を行ってまいりたい

お尋ねの「震災対策の格差はどの程度まで許容される」、「許容される格差の幅」及び「震災対策に関する監査」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、政府としては、地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護することは極めて重要であると考えており、都道府県と市町村が行う地震防災対策に関しても、個別の実情を勘案しつつ、必要に応じ助言等を行ってまいりたい

雑感(横浜市の地震被害想定は古い…)

答弁書だけでなく、質問主意書のほうも、ひとつひとつのパラグラフが長いので読みずらい。何が書いてあるのか、簡単にまとめると、こういうことだ。

横浜市の地震被害想定は古いから、神奈川県の新しい地震被害想定と整合させるべきではないのかという指摘。これに対して、政府答弁は「必要な(必要に応じ)助言等を行ってまいりたい」と3回も繰り返している。

横浜市が最新の知見を採用して被害想定調査を行わない理由として、早稲田議員は「市の防災計画の期間がまだ数年残っていることや、市の財政的・人的資源などを勘案し、やむなく対応可能で現実的な震災対策を維持しているのではないかとの指摘もある」と述べている。

横浜市民はこのような事態を知ったらどう思うだろうか。
林文子横浜市長はIR誘致に注力する余裕があるならば、横浜市民の命を守るために、防災計画の見直しに市の財政的・人的資源を割くべきではないのか……。

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