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闇民泊の全体像は共有化されているか?

「民泊サービス」のあり方に関する検討会の議論を踏まえ、「 民泊サービス」の制度設計のあり方について(最終報告書案)が6月20日公開された。

今後、同報告書案をもとに、民泊新法案と旅館業法改正案が作成され、今年度中の国会提出を目指すとされている。

※最終報告書案のポイントについては、「「民泊の制度設計のあり方について(最終報告書案)」を読む」をご覧ください。

 

某マスメディアから「現在迷走している民泊制度」について照会がきたので、筆者の現在の問題意識をザックリと整理しておいた。


ざっくり言うと


【問題意識1】闇民泊の全体像は共有化されているか?

そもそも議論の前提となる闇民泊の全体像は関係者の間で共有化されているのだろうか?

マスコミ報道では、たとえば「エアビーへの登録物件は世界で200万件を超え、日本国内では3万5千件(産経 5月27日)」といったように、概数は伝えられるものの、それ以上突っ込んだ数字は出てこない。

 

全国のAirbnbの最新の登録件数の内訳は次表の通りである。

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AirLABOサイトの6月20日現在のデータを筆者が集計)

 

全国でAirbnbに登録されている物件は全部で約3万8千件(6月20日現在)。そのうちの4分の3が1都2府の物件である。

建物タイプ別にみると、マンション・アパートは全体の約7割を占めている。一軒家は約2割に過ぎない。

 

これらの数値を踏まえると、都市部のマンションにおける民泊問題の解決に注力する必要があることが分かる。

 

上表をもっと分かりやすく可視化したのが次図。 

民泊問題とは都市部のマンションにおける闇民泊問題であることが一目瞭然であろう。

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【問題意識2】宅建業者の介在で、オモテナシから遠ざかる日本の民泊

民泊問題とは都市部のマンションの闇民泊の問題であるから、ここでは都市部のマンションに多い「家主不在型」の民泊について考えてみる。

最終報告書案では、「適正な管理や安全面・衛生面を確保する」ために、「家主不在型」の民泊については、住宅提供者(=ホスト)が管理者(=宅建業者)に管理を委託することを義務づけようとしている。

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宅建業者が介在することで、マンション住民の安全・安心が本当に確保できるのだろうか?

ホスト(住宅提供者)に宅建業者への委託を義務づけることは、ホストの収益性を悪化させることになるので、今後の動きとしては主に次の3つのケース(とその組み合わせ)が考えられる。

  1. 収益性が確保できなくなるに”にわか大家”は民泊から撤退する
  2. 一部の”にわか大家”は違法なままに民泊を継続する
  3. 収益性を確保できる業者だけが合法的な民泊事業を拡大する

「家主不在型」の民泊に宅建業者を介在させることは、業者主体の合法民泊の拡大につながりそうだ。

「家主居住型(ホームステイ)」ではなくて、「家主不在型(投資型)」が拡大する日本の民泊。

オモテナシから遠ざかる日本の民泊。

※宅建業者への委託義務化の背景については、「民泊の”全面解禁”で潤う賃貸不動産業者、安全・安心が脅かされる住民」ご参照。

 

【問題意識3】外国に拠点のある民泊仲介業者に民泊新法を遵守させられるか?

ホストに宅建業者への委託を義務づけようにも、外国に拠点のある民泊仲介業者に民泊新法を遵守させることができるのだろうか?

最終報告書案では「外国法人に対する取締りの実効性確保のため、法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにすることを検討すべきである」というべき論に留まっている。

本家Airbnbをたたいているうちに、すでに中国版Airbnbは勢力を伸ばし始めている(次図)。

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異変!中国版Airbnb登録件数が増加する一方で、本家Airbnb登録件数は初の減少」より

 

外国の民泊仲介サイトに無視された「京都市民泊実態調査」」といった実態を踏まえると、違反者名の公表だけでなく、より強力な罰則規定とその実効性が確保されなければ、闇民泊の抑制は難しそうだ。

 

【問題意識4】外部不経済に依存している闇民泊

マンション住民にとって、「旅館・ホテル業界vs民泊」の議論はどうでもいい話だ。

ただ、宿泊施設不足で、ホテルの予約が取りにくいとか、宿泊料金が上がっているといった問題は、ビジネスパースンとしては無関係ではないので、問題意識を整理しておこう。

現在の安くて予約しやすい現在の民泊は、手放しで喜べる状況にあるのか?

安価の源泉は外部不経済に依存している結果なのだ。

具体的にいえば、騒音被害や不適切なゴミ処理といったゲストによる迷惑行為に係る費用や、安心・安全設備が設置されていないことによる事故・事件の発生回避費用(治安対策費用)に対して、ホストは負担していない(次図)。

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では誰が負担しているのかといえば、税金で賄われているのである。

だから、一見安く見える民泊の宿泊費は、実は市民の税金で賄われているのである。

外部不経済に依存した闇民泊を市場から退散させるべく、既存の旅館・ホテルとの公平な競争条件(イコール・フッティング)を確保したうえで、ブラックな闇民泊をホワイト化し、価格とサービスを競争させることが望まれる。

闇民泊をホワイト化(匿名性の排除)することは、犯罪(テロを含む)の温床の芽を摘むためにも必要である。

 

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