羽田新飛行ルートに係る落下物の問題。
昨年12月の 国会衆議院「国土交通委員会」で公開されなかった、まぼろしの「落下物想定パネル」を入手したので紹介しよう。
「国土交通委員会」で公開されなかった…
羽田新飛行ルートに係る落下物の問題。
昨年12月の 国会衆議院「国土交通委員会」において、鹿明博議員(立憲民主党・市民クラブ)がこの問題を取り上げていたという。
「羽田新ルート|衆院「国土交通委員会」質疑全文」より
成田空港周辺の落下物を羽田新飛行ルートに当てはめたらどうなるのか。想定パネルを作ったのだが、委員会で提示するのは相応しくないと言われて提示できなかったという。
実はきょう、パネルをつくって、成田空港で過去落ちていた落下物の空港からの距離を、では、今度の羽田の新ルートに合わせてみたらどのあたりに落ちるのかというパネルをつくったんですが、それは想定のものだから示すのはふさわしくないということで、掲示するなと言われたのできょうは持ってきませんでしたけれども、それを見ると、明らかに人口が密集しているところの上に落ちているわけですよ、成田空港でいうと。
つまり、離発着、特に着陸をする、タイヤがおりてからだから、空港に近いところに落ちている割合が多いわけです。というか、ほとんどそうなんですよ。
まぼろしの「落下物想定パネル」
今回その、まぼろしの「落下物想定パネル」を入手したので、紹介しよう。
(国土交通委員会パネル資料 立憲 初鹿明博議員 (出典 国土交通省資料から国土交通調査室作成))
⇒拡大(PDF:1.8MB)
同パネルを紹介するにあたり、誤解されないよう次の文言を添えるように言われている。
あくまでも、成田空港近辺で落下物が発見された地点の空港からの距離を機械的に新ルートに当てはめたもので、この通りに落ちてくる訳ではない。
落下物の大きさや形態、風の強さなどで実際には飛行ルートから外れて落下することもある。
落下物は空港から6~8km付近に多い
同パネル右側の表によれば、落下物は部品や氷塊など、過去11年間で、成田空港周辺で21件発生していることが分かる。
成田空港からの距離ごとに落下物の件数を可視化したのが次図。
6.1~8km付近に落下物が多い。
同パネルの左側の図を見やすく描き直してみたのが次図。
渋谷と品川で合計20件の落下物がA滑走路到着ルートとC滑走路到着ルートにそれぞれ描かれている。
雑感(落下物よりも騒音)
けっこうインパクトのある図だが、じつは落下物の発生件数には成田空港と羽田空港の発着回数の違いが考慮されていない。
発着回数の違いを考慮するとどうなるのか、以下試算してみよう。
成田国際空港株式会社のサイト「空港の運用状況」によれば、 成田空港の年間発着回数は年々増加し、2016年度は過去最高の245,705回に達している(次図)。
成田空港周辺で落下物21件が発見された2007~2016年度の平均年間発着回数は約21万回(209,854回)。
一方、羽田新飛行ルートが運用されると年間発着回数が3.9万回増加する。
この成田空港と羽田空港の年間発着回数の違いを考慮すると、成田空港周辺で発見された落下物21件は、羽田新飛行ルートにあてはめると3.9件(=21件÷21万回×3.9万回)まで減少する。
11年間で約4回の落下物。極めて低い発生確率。成田空港周辺と比べて、新宿・渋谷の昼間人口密度がはるかに高いことを考慮しても、発生確率が低いので実際の影響は大きくないのではないか(事故が発生したらマスコミは大きく報じるかもしれないが)。
被災する人には大変気の毒だが、落下物の可能性がゼロではないからといって、過密都市東京の上空を飛んではならないという判断は合理的とは言えない。たとえて言うならば、高速道路でトラックから荷物が落ちて後続車が被災する事故が発生しているから、トラックは高速道路を走ってはならないと主張しているようなものではないか。
羽田新飛行ルートについては、極めてまれに発生する落下物よりも、長時間にわたって大勢の市民に影響を及ぼす騒音のほうが議論すべきポイントだと思う。
詳しくは、「いまそこにある危機!都心が飛行騒音で汚染される」ご参照。