旅客機から、重さ約4キロのパネルが落下し、大阪市北区で走行中の乗用車の屋根を直撃したというニュース。
過密都市東京の上空に設定されている「羽田新飛行ルート」を飛ぶ航空機からの落下物が気になる方も多いのではないか?
- 旅客機の部品が落下、走行中の車を直撃(日経)
- 国交省「・・・などの対策に全力で取り組んでいます」
- 政府答弁書は漢数字の羅列で分かりにくい…
- 政府答弁書をもとに15年度データを可視化分析
- 雑感
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旅客機の部品が落下、走行中の車を直撃(日経)
旅客機から、重さ約4キロのパネルが落下し、大阪市北区で走行中の乗用車の屋根を直撃したという。
旅客機の部品が落下、走行中の車を直撃 大阪市内
国土交通省関西空港事務所は24日、23日午前に関西国際空港を離陸したオランダ・アムステルダム行きの旅客機から、重さ約4キロのパネルが落下し、大阪市北区で走行中の乗用車の屋根を直撃したと発表した。けが人はいなかった。(以下略)
(日経新聞 9月24日)
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する「新飛行ルート問題」。
航空機からの落下物が気になる方も多いのではないか?
国交省「・・・などの対策に全力で取り組んでいます」
国交省が運営しているサイト「羽田空港のこれから」に掲載されている「安全性に関する方策」(3.7MB)によれば、航空会社への指導や、航空メーカーへの働きかけに、全力で取り組んでいるという。
国土交通省では、落下物が発生しないよう、航空会社への点検・整備徹底の指導、航空機メーカーへの設計・製造・整備マニュアルへの反映の働きかけなどの対策に全力で取り組んでいます。
「全力で取り組んでいる」と言われてもなぁ……。
落下物は過去10年間で、成田周辺で21件、羽田周辺で0件。都内では被害が発生したことはないという。
Q2 過去に問題等は起こっていないのでしょうか。
過去10年間の発生件数は、成田空港周辺では21件(部品14件、氷塊7件)、羽田空港周辺では0件となっています。
たとえば、東京都内において現在も羽田空港経路下にある江戸川区において、落下物の被害等が発生したことは過去にありません。
(「安全性に関する方策」P82)
上記Q2では、落下物が都内で何件発生しているのか答えていない。
落下物はどれくらい発生しているのか?
政府答弁書は漢数字の羅列で分かりにくい…
じつは、民進党の長妻議員から2016年11月10日付で、「航空機からの落下物に関する質問主意書」が提出されている。
11月14日付の政府答弁書により、全国での航空機落下物は過去10年で437件あったことが分かる。 年平均44件。
(略)本邦航空運送事業者(以下「本邦航空運送事業者」という。)等は、国土交通大臣に対し、面積が1000cm2以上又は重量が1kg以上の機体部品の航空機からの脱落を確認した場合には報告しなければならないこととされており、(中略)「この報告によると、全国で航空機落下物の事案は何件あるのか、過去10年の件数をお示し願いたい」とのお尋ねについては、同法第111条の4及び第134条の規定に基づき、機体部品の脱落を確認した場合の報告が開始された平成21年4月1日から平成28年10月31日までに、同大臣が、本邦航空運送事業者等から受けた報告(以下「機体部品脱落の確認報告」という。)の件数は、437件である。(以下略)
さらに、答弁書は平成27年度(2015年度)の落下物の詳細(名称、大きさ、重量、落下場所、落下した日付、脱落を確認した日付)についても、記されている(次図)。
せっかくの答弁書なのだが、漢数字の羅列なので、どのような事態が発生しているのか、サッパリ分からない。
また、この答弁内容をマスコミが噛み砕いて報道した形跡もなさそうだ。
そこで、「国難突破解散」で忙しい政治家やマスコミに代わって、可視化分析してみた。
政府答弁書をもとに15年度データを可視化分析
2015年度に全国で航空機からの落下物が報告されたのは54件。
落下物が最も多い7月は3日に1回
落下物が確認された月別の内訳を次図に示す。
最も多かったのは7月の10回。3日に1回の頻度である。
落下物で最も多いのは「レンズ」
落下物のランキングを次図に示す。
落下物で最も多かったのは「レンズ」の10件(平均重量293g)。次に多かったのはパネルの5件(平均重量268g)。
1kg超の落下物3件
落下物の重量の内訳を次図に示す。
100g以下の落下物が最も多く17件。1kgを超えていた落下物は3件(8kg、5kg、1.8kg)。
だから今回、大阪市北区西天満の路上に落ちてきた4kgのパネルは稀なケースといえるのかもしれない。
春・冬に落下物が多い!?
以上の3つの図を1枚で表現したのが次のグラフ。
横軸が「脱落を確認した日」、縦軸が「落下物重量」、円の大きさが「落下物の概算面積(=縦×横)」を示す。
春と冬に落下物が多いように見えるのは、気候のせいなのか、たまたまなのか……。
【メモ】
- 上図で目立つ11月の大きな落下物(縦約300cm、横約30cm、約5kg)は、「ムンバイ空港内」が「落下場所」とされている(日本を飛び立った飛行機が国外で物を落とした分も含まれているようだ)。
- 答弁内容をみると、「落下場所」と「落下日付」が「不明」で、「脱落を確認した日」のみが記されているケースが多い。着陸後の検査で落下事実に気が付いたということなのであろう。
雑感
政府答弁書のデータから、航空機からの落下物は、年間40~50件程度であることが確認できた。しかもそれらは、日本の土地に落ちているとは限らない(海上であったり、外国の地であったり)。
羽田新飛行ルートの運用が開始されると、過密都市での落下物は増えることなるが、大した数にはならなさそうだ。
過密都市での落下物による事故は悲惨な結果を招く可能性が高いが、一個人にしてみればそういった事故に遭遇する可能性は10億円の宝くじに当選する確率よりもはるかに低いので、心配しても仕方がない。
むしろ、頻繁かつ広範囲に影響を及ぼす騒音問題のほうを気にしたほうがいいだろう。