首都圏の新築マンションの価格は現在、高止まりしていて庶民にはなかなか手が出ない状況が続いている(首都圏新築マンション市場動向(7月)|高くて売れない状況継続中)。
一体この先どうなるのか?
業界関係者のバイアスの掛かった意見は話半分に聞いておくとして、ここは比較的中立的な立場にある銀行の意見に耳を傾けてみてはどうだろうか。
メガバンクの調査部門が出している直近のレポートのなから、新築マンションの価格見通しに言及している部分を拾ってみた。
【みずほ】価格の高止まりがメインシナリオ
みずほ総合研究所の調査リポート「みずほインサイト」に17年4月24日付けで掲載された、経済調査部エコノミスト佐藤高氏「マンション価格が下がらない原因 3つの要因から価格高止まりが続く見通し」(PDF:363KB)より
3.マンション価格は横ばいで推移する見込みだが、金利動向に注意
(略)首都圏・近畿圈の新築マンション価格はしばらく現状水準で高止まりするとみた方が良いだろう。
このように、価格の高止まりがメインシナリオだが、今後金利が上昇した場合には価格下落圧力が強まる局面もありえることには留意が必要だ。
国内金利は依然低水準ではあるものの、米国の金利上昇などを受けて、昨年の最低水準からは脱している。金利がさらに上昇していった場合、借入金の利払い負担増加による不動産業者の収益圧迫や、住宅ローン金利上昇によるマンション購入意欲の一段の低下などにより、(1)(デベロッパーの業績回復)、(2)(在庫調整圧力の弱さ)の状況が崩れ価格下落が起こる可能性がある。
また、(3)(建設コストの増加)についても、建設需要の減退から建設資材や地価の下落につながるようであれば、デベロッパーによる値下げ余地も高まると考えられる。
日銀が現状程度の金利水準を維持すべく金融緩和を進めているため、急激な金利上昇の可能性は小さいが、マンション価格の下振れ要因として金利動向には注視しておく必要があるだろう。(P4)
【三井住友】需要に見合う価格に相当程度調整される
三井住友信託銀行「調査月報」2017年2月号に掲載された、産業調査第三チーム 深山 敬大氏「新築マンションの販売不振に長期化の懸念」(PDF:657KB)より
(略)したがって、筆者は新築マンションについては、価格を少々引き下げる程度では売れ行きは回復しないと予想している。
もっとも、売れ行きの低迷が半永久的に続くとも考えていない。2016 年に続き、2017 年の販売不振が続けば、不動産各社の財務負担が一層増すこととなる。2018~2020 年には複数の大規模プロジェクトの竣工が計画されており、今後、不動産各社は多額の資金を必要とする。かかる中、新築マンション販売も滞れば、財務バランスの悪化度合いが大きくなる。そのため、販売価格が需要に見合う価格に相当程度調整されることで、売れ行きは相応に回復するとみている。(P6)
【三菱東京UFJ】新築マンション18 年度は僅かに上昇
三菱東京UFJ銀行の「産業レポート」のうち、17年2月付けの「2017年度業界見通し」(PDF:3.2MB)に「20.不動産」として、2017年度以降の分譲マンションの動向が記されている。
(略)供給戸数は、2018 年度こそ消費税増税に伴う駆け込み需要を捉えるべく増加するものの、期末分譲中在庫が増加するなか、デベロッパーは供給に一層慎重になるため、基調としては減少が続く見通し。
発売価格は、消費税増税に伴う駆け込み需要を捉え 2018 年度は僅かに上昇するものの、建築費が引き続き上昇するなか、値下げ販売は難しく、総じて横這い程度で推移する見通し。(略)(P106)
まとめ
メガバンクの調査部門は、価格が高止まりの状況が続くとみているようだ。
- 【みずほ総研】価格の高止まりがメインシナリオ。マンション価格の下振れ要因として金利動向には注視しておく必要がある。
- 【三井住友】2018~2020 年には複数の大規模プロジェクトの竣工が計画されており、販売価格が需要に見合う価格に相当程度調整されることで、売れ行きは相応に回復するとしている。
- 【三菱東京UFJ】発売価格は、消費税増税に伴う駆け込み需要を捉え 2018 年度は僅かに上昇するものの、総じて横這い程度で推移。