大韓航空KAL2106便(羽田発ソウル行)は5月20日09時40分頃、羽田新ルート(北風時ルート)運用時、羽田空港離陸直後にルートを逸脱して都心部を北上した。
フライトレーダー24のデータを元に、当時何が起きていたのか可視化してみた。
※投稿24年5月24日(追記24年5月27日)
- 大韓航空KAL2106便、本来のルートを逸脱して離陸
- 大韓航空KAL2106便の飛行ルート(Googleマップ)
- 大韓航空KAL2106便、東京タワーの真上を通過してしまう
- 【追記】パイロットは管制官の許可を取っていた
大韓航空KAL2106便、本来のルートを逸脱して離陸
大韓航空KAL2106便(羽田発ソウル行、エアバスA321)は5月20日(月)09時40分頃、羽田新ルート(北風時ルート)運用時、羽田空港離陸直後にルートを逸脱して都心部を北上した(次図)。
本来であれば、離陸直後に右に旋回し、荒川沿いを北上したあと荒川区上空を抜けていく。
Flightradar24の航跡図にピンクの文字を加筆
国交省が運営しているサイト「羽田空港飛行コース」で当日09時台の航跡図を見てみると、1機だけ荒川沿い北上ルートとは異なるルートを飛行していたことが確認できる。
大韓航空KAL2106便の飛行ルート(Googleマップ)
Flightradar24に記録されている大韓航空KAL2106便の「時刻」「飛行高度」「緯度経度」情報をGoogleマップに落としてみた(次図)。
大韓航空KAL2106便は9時39分に離陸し、海の森公園上空で左に旋回し、東京タワーの上空を飛行したあと、新宿区⇒板橋区を通過していった。
大韓航空KAL2106便(2024年5月20日) - Googleマップ
大韓航空KAL2106便、東京タワーの真上を通過してしまう
大韓航空KAL2106便が東京タワー近くを通過したときの拡大図を次に示す。
同便は、東京タワーの上空約1,500mを通過している。
Flightradar24のデータを元に、大韓航空KAL2106便と東京タワーの位置関係をグラフに描いてみた(次図)。
東京タワーの真上を1,200m離れて飛行することは、素人目には危険とまでは言えないように思える。
でも、今年4月のターキッシュエアラインズTK198便が着陸ルートを誤進入した事案や昨年9月のターキッシュエアラインズ199便が誤ルート離陸で東京タワーに接近した事案など、最近のトラブル報道が目につくのは、ハインリッヒの法則的(1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハットが隠れているというもの)にはよろしくない。
【追記】パイロットは管制官の許可を取っていた
※24年5月25日追記
なぜ大韓航空KAL2106便は、本来の荒川北上ルートを飛行しなかったのか。
じつは、航空交通管制(ATC:Air Traffic Control)が聴けるサイト「LiveATC.net」のアーカイブで当時の管制官と大韓航空KAL2106便のパイロットのやり取りを視聴することができる(次図)。
具体的なやり取りを傍受することは問題ないが、通信内容を文字起こしして公開することについては、日本では電波法59条(秘密の保護)に抵触する可能性があることから(過去に同法により処罰された例はないので、実際的に問題ないという情報もあるが)、要点のみ言えば次の通りだ。
パイロットは天候を理由に進行方向を変更する必要がある旨を管制官に伝え、管制官はそれを承認していたのである。
ちなみに、本件事案が発生したときの羽田の気象状況としては、東北東の風が一時的に強くなったようだ(次表)。
ただ、東北東の風が一時的に強くなったのであれば、離陸中の大韓航空KAL2106便にとっては向かい風になるので、なぜ左に旋回したのかは不明(横風を受けることになってしまう)。
羽田 2024年5月20日(10分ごとの値)|気象庁
※追記24年5月27日
世界中の気象状況を可視化しているサイト「earth」の過去データを元に、5月20日10時の羽田周辺の風速・風向につき、地上・高度500m・1000mを動画にまとめてみた(動画)。
高度によって風向・風速が異なることが確認できる。
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