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認知症は生きていても“法的な死”『日本一シンプルな相続対策』ワニブックス

牧口 晴一 税理士による『日本一シンプルな相続対策』(ワニブックス)を読了。

認知症になると、銀行口座が凍結されて自分の預金が引き出せず、施設入居の一時金のための自宅売却もできないという情報はもっと知られていい。

死んだ後の相続ではなく、認知症になる前に重点を置いた相続税対策の指南本。認知症の予備軍であるシニア世代だけでなく、そのような親を抱えた現役世代にも強くおススメしたい1冊。

朱書きは、私のメモ。


もくじ

認知症は生きていても“法的な死”になる

空き家問題の本当の原因は、生前に起きているという指摘。

認知症は生きていても“法的な死”になる

(前略)核家族化が進み、特に”妻”の意識も変化しました。相続人の権利意識も高まり、相続で受ける財産に目が向きます。生前に家族が預金を引き出すことに対して、他の相続人が「勝手に使い込んだ!」と争いになるため、銀行ももめ事に巻き込まれたくないため、引き出しに厳しくなりました。住まなくなった「実家」も同様で、司法書士も本人の売る意思確認義務があるのですが、認知症ではそれも叶わず、不動産屋さんも法務局も受け付けませんから、売れずに廃墟化か進み、全国的に空き家が問題化しました。

世の中では相続で空き家が増えていると認識していますが、本当の原因は生前に起きているのです。

(P25/第1章 認知症で財産凍結 預金も出せず自宅も売れない!)

※都内で65歳以上の世帯の約7割・約90万戸(≒単身44万世帯+夫婦のみ43万世帯)が空き家予備軍(次図)。

都内の「空き家予備軍」約90万戸
都内マンション等の空き家は戸建ての3倍!」より

「家族信託」の費用…結局は安上がり

成年後見人制度は、アリ地獄。家族信託ならば最低6万円で済ませられる、というのが本書のキモ。

「家族信託」の費用…結局は安上がり

(前略)手間と安全性を考えれば、家族信託の専門家に依頼した方がよいに決まっていますが、実はここが悩みどころです。

成年後見人制度のアリ地獄に陥るよりは遥かに安いのですが、まだその意識が醸成されていないため、専門家費用に対して「高い!」というイメージが先にきているようです。

私のお客様でもそうです。そうこう迷っているうちに手遅れになっています。

費用面で躊躇する方は、ご自身の手間をかければ、できなくはありません。
手遅れになるよりは、と考え苦肉の策として、自分で行う方法を考えたのです。
最低6万円ほどの登記の費用等だけで可能です(第3章参照)。

それでも、専門家による認知症への対策の家族信託は徐々に増えてきました。

(中略)

それに対して、成年後見制度は伸び悩んでいます。つまり、庶民はちゃんと良し悪しを嗅ぎ分けて合理的な選択をしているのです。

(P66-67/第2章 認知症前に「家族信託」で“事前相続”)

※成年後見人制度は、アリ地獄。悪徳弁護士に死ぬまでお金をむしり取られる制度であることはほとんど知られていないのではないか。

老親介護の予備軍は必読!『成年後見人制度の闇』飛鳥新社

直後の手続きは知らなくても大丈夫!

「医師からもらった「死亡診断書」は、直ぐにコンビニに走ってコピーを5部取る」これだけの知識で十分だという。

直後の手続きは知らなくても大丈夫!

医師からもらった「死亡診断書」は、直ぐにコンビニに走ってコピーを5部取る。
死亡直後はこれだけの知識で十分です。

手続きを早くし過ぎないことも大切です。「銀行に知らせないと!」という方が多いのですが、逆に銀行には、すぐには知らせません。銀行では知った後、直ちに預金凍結します。するとすべての支払いがストップされますから、公共料金・クレジットカード・借入金返済・携帯電話など引き落としできなかった分を振り込まなければなりません。

葬儀が終わってから、ゆるゆると口座変更の手続きをすればよいのです。もちろん、連絡の前に銀行が死亡を知れば、預金凍結されてしまいます。

義父の経験では、数か月後に年金の支払いが止まったことから銀行が知ることになり、そこで預金凍結になりましたが、罰金も何もありませんでした。(以下略)

(P206-207/第7章 死後の“面倒な手続“も心配なく)

※死亡しても銀行にはすぐに知らせない、という庶民の智恵。

本書の構成

7章構成。全230頁。

  • 第1章 認知症で財産凍結 預金も出せず自宅も売れない!
  • 第2章 認知症前に「家族信託」で“事前相続”
  • 第3章 「家族信託」の具体的なやり方
  • 第4章 「遺言書」で死後のもめ事を防止
  • 第5章 節税のための生前贈与
  • 第6章 相続税の計算
  • 第7章 死後の“面倒な手続“も心配なく

日本一シンプルな相続対策

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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