不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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衆院・災害対策特別委「高層マンションの防災対策」吉田とも代氏(維新)

衆院・災害対策特別委員会において5月25日、吉田とも代子 衆議院議員(維新)が高層マンションの防災対策を取り上げていた。
ネット中継録画をもとに、整理しておいた(約5千文字)。

※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

高層マンションの防災対策についての国の取組

吉田とも代子 衆議院議員(維新)
吉田とも代 衆議院議員
(維新、1期、 元丹波篠山市議会議員、神戸松蔭女子学院大学短大卒、48歳)

吉田:高層マンション防災についての取り組み?

日本維新の会の吉田とも代と申します。質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。谷大臣、各省庁の皆様、よろしくお願いいたします。
それでは質問に移らせていただきます。


2013年に内閣府が公表した報告書「首都直下型地震の被害想定と対策について」によりますと、30年以内に70%の確率で起こるとされる首都直下型地震は、首都圏や日本全体にどのような被害を発生させるのか、様々な観点から対策を講じていかなければなりません。


東京都が2022年に公表した首都直下型地震の新たな被害想定では、マグニチュード7.3の都心南部直下型地震が発生した場合、死者は6000人超、建物被害は約19万棟、避難者は約300万人に上ると算定されています。


このような中、新たな課題として挙がっているのが、高層マンションのリスクです。2022年3月末時点による全国の建設・計画されている超高層マンション、20階建て以上は約11.2万戸に達することが判明しました。2021年3月、前回調査時と比べ、74棟17,211戸増えています。


このように増加している高層マンションの住民が一斉に避難をすれば、避難所の収容能力を超える可能性も多くあり、また高齢者や障がい者に優先的に避難所に入ってもらうことから、在宅避難のための備えが重要だと言われています。


高層マンションが多い自治体では、高層マンション防災対策ハンドブックなどを作成していますが、エレベーターが動かない場合が想定されるなど、マンション特有の問題もあり、飲み物や食料を1週間から10日ほど備蓄するなどが必要です。また、各マンションでは管理組合が自主防災組織を設けている場合もあります。


国として、こういった新しい形態、マンション防災についての取り組みについて、ご見解をお聞かせください。

内閣府 政策統括官:南海トラフ検討の中で、高層マンションにおける防災対策のあり方についても検討、その結果を首都直下地震対策にも生かしてまいりたい

内閣府 榊 政策統括官
榊真一 内閣府 政策統括官(建設省88年入省、東大法卒、58歳)

お答えを申し上げます。高層マンションの防災対策につきましては、消防法の規定に基づき、マンションの管理組合等が消防計画を作成し、避難に必要な設備を維持・管理するとともに、計画的に避難訓練を行うこととされているところであります。


一方、大規模地震発生時には、高層マンション特有の課題として、非常階段等に多数の居住者が殺到し、転倒等による二次災害が発生する恐れがあるほか、停電や断水、エレベーターの故障などが長引いた場合、特に高層階で暮らす高齢者等は生活を継続することが困難となる場合があるといったことが考えられております。

また、委員ご指摘のとおり、非常に多くの住民が一斉に避難所へ避難した場合には、避難所があふれるといった課題も想定されるところです。


このため、例えば東京都におきましては、停電時における水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の電源を確保するほか、居住者が共同で行う様々な防災活動によって災害時においても生活を継続しやすい「東京とどまるマンションの登録制度」といった取り組みが行われていると承知をしております。


内閣府といたしましても、現在進めております南海トラフ巨大地震に関連した新たな被害想定や防災対策に関する検討の中で、高層マンションにおける防災対策のあり方についても検討し、その結果を首都直下地震対策にも生かしてまいりたいと考えております。

吉田:住宅避難に対する備えの国民への周知徹底、広報を

ただいま縷々ご紹介をいただきましたけれども、まずはその都心部の取り組みかもしれませんが、知見を得た上で、今後は東京都心部や湾岸エリアだけではなく、地方の中核都市でも超高層大規模開発や複合再開発プロジェクトなど数多く控えており、こういった自治体への取り組み強化を促すことが重要であります。


また、高層マンションにおいても、現在の建築基準法を遵守している限り、倒壊の恐れは低いということですから、地震は大きな被害がない限り、部屋にとどまるという基本に立ち返り、住宅避難に対する備えの国民への周知徹底、広報をお願いしたいと思います。

緊急地震速報の発表基準に長周期地震動を追加したことについて

吉田:長周期地震動、どのような取り組みを実施しているのか

この高層マンションですが、実際にタワーマンションで脅威となりますのが、周期の長い揺れが続く「長周期地震動」と呼ばれるものです。周期によって建物の揺れが大きく変わります。


この被害が相次いだのが、2011年に発生した東日本大震災です。この時、最も大きな揺れが記録されたビルが震源地から770キロ離れた大阪で、高さ250mの大阪府の咲洲庁舎でした。揺れが10分以上続き、最上階の揺れ幅は最大で3m近くに達したそうです。


気象庁は今年2月より緊急地震速報に長周期地震動が追加され、4段階で警戒を呼びかけることになりました。


この緊急地震速報の長周期地震動の認知度や長周期地震動に対して、どのような取り組みを実施しているのか、気象庁並びに内閣府に伺います。

気象庁 地震火山部長:各種媒体を活用し、普及啓発に努めている

気象庁青木地震火山部長
青木元 気象庁地震火山部長(気象庁83年入庁、気象大学校卒)

首都圏をはじめ、我が国には多くの高層ビルがあることから、通常の短周期のガタガタとした短周期の揺れに加えて、周期が数秒以上のゆっくりとした揺れである長周期地震動による影響も懸念されています。


委員、ご指摘の通り、本年2月から大きな長周期地震動が予想された時にも緊急地震速報を発表するよう改善したところです。


この緊急地震速報に長周期地震動を追加したことについても、気象庁としてはホームページやリーフレット等の各種媒体を活用し、普及啓発に努めているところであり、今後も関係省庁と連携の上、長周期地振動に関する普及啓発にしっかりと努めてまいります。

内閣府 政策統括官:建築物の構造躯体の対策などについても検討予定

お答え申し上げます。委員、ご指摘の通り、東日本大震災では地震の揺れの周期が長くなる長周期地震動により、高層ビルなどが大きく揺れ、壁や柱の損傷、家具の転倒などによる負傷などの被害が発生しました。

このため、同様の被害が発生しないよう、内閣府ではまずは南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動について、平成27年に3大都市圏における高層建築物の揺れの推計や建築物の構造躯体の対策などの検討を行ったところです。


その上で、首都直下地震に関しましても、南海トラフ地震より震源が首都圏に近い相模トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動について詳しい調査検討を行うため、平成28年1月に有識者による検討会を設置し、検討を重ねてきております。


これまで地盤の構造などの調査検討については概ね完了し、現在、関東地域における長周期地震動による地表の揺れを推定するため、過去の地震の記録との比較検証を行いながら、地盤構造モデルの構築などを進めております。モデルを構築した後には、高層建築物の揺れの推計や建築物の構造躯体の対策などについても検討する予定であり、引き続き、しっかりと検討を進めてまいります。

吉田:緊急地震速報が出た時に自動で最寄りの階に停まるエレベーターも官民連携で普及させていく必要がある

怪我をしないため、また命を守るため、平時からの対策、家具の固定や揺れた時の対策なども大切かと思います。

先ほど、エレベーターの話、ご紹介いただきましたけれども、多くのエレベーターでは揺れを感知した場合に近くの階に速やかに停まる仕組みが導入をされてきていますが、それでは遅いことがあります。


緊急地震速報は揺れる前に発動しますので、このことをしっかり理解していることで、速報を受けたらすぐにボタンを押し、エレベーターに閉じ込められないように自分で身を守っていくことができます。また、緊急地震速報が出た時に自動で最寄りの階に停まるエレベーターも官民連携で普及させていく必要が国民の安心のためにはあるのではないかと考えます。

首都直下地震を想定した火災対策

吉田:政府としての火災対策?

さて、本年は関東大震災から100年の節目の年を迎え、国内最大規模の防災イベント「防災推進国民大会」を関東大震災の震源地、神奈川において開催されると伺っております。


この関東大震災では火災が主因で10万人超がお亡くなりになりました。現在、政府の中央防災会議で、例えば首都直下地震で国は約2万3000人と想定される死者のうち7割に当たる16000人が火災によるものとしています。風が強い冬の夕方の地震が起きた場合を想定しているそうですが、出火件数は最悪の場合200件同時多発的に発生します。

政府としての火災対策についてお伺いいたします。

内閣府 政策統括官:延焼等の危険性の高い木密市街地の整備改善など

お答え申し上げます。平成25年の中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループの最終報告におきましては、首都直下地震による死者及び全壊・消失した建物の約7割が火災によるものとされており、環状6号線から8号線沿線等に広範に連担しております。

木造住宅密集市街地などを中心に大規模な延焼火災により、最大約41万棟が焼失する恐れがあるとされております。


国におきましては、首都直下地震が発生した際、火災による被害をできるだけ小さくするため、自治体などとも連携し、延焼等の危険性の高い木造密集市街地の整備改善や、地震の揺れを感じたら自動消火する装置を備えた電気器具の普及等による出火の防止、発災等の速やかな初期消火などの対策を進めてきているところです。

引き続きこうした対策を推進することにより、火災被害の軽減に努めてまいります。

吉田:燃えない街を作るためには住民の意識の醸成と国とも連携をした施策の後押しが必要

多くの住宅が密集する地域を抱える都市部では、さらに火災対策が重要になります。

東京都は、建て替えの相談を受ける専門家の派遣や古い木造住宅の撤去の補助、建て替えた場合は固定資産の減免などをしてきました。ただ、助成をすれば建て替えが進むわけではなく、燃えない街を作るためには住民の意識の醸成と国とも連携をした施策の後押しが必要と考えます。

各自治体が行う密集市街地対策に対する国の支援事業の状況

吉田:まちなか防災空地事業、進捗状況?

火災について別の観点からも考えてみます。
近年、深刻な社会問題となっているのが空き家の増加問題です。政府調査によれば、1998年は182万戸、2018年は310万戸と居住目的のない空き家はこの20年で約1.9倍と増加し続けており、2030年には470万戸と推計されています。


そのような中、防災・居住環境上の課題を抱える密集市街地において、防災空き地事業を実施する自治体が増加をしています。神戸市は密集市街地において、安全・安心・快適なまちづくりの推進として「まちなか防災空地事業」を実施しています。


事業の流れとしては、土地所有者、まちづくり協議会、神戸市の3者で協定を結び、神戸市が無償で土地を借り受け、土地使用賃貸契約を締結し、固定資産税等が非課税になります。

そしてその土地を「まちなか防災空地」として整備をし、維持管理をしてもらうものです。その際、老朽建物がある場合は建物除去費用、「まちなか防災空地」の整備に要する費用は上限はあるものの補助が受けられます。


災害大国日本において、自治体の取り組みだけに任せるのではなく、国もこういった施策の後押しをすることが求められていると思います。すでに事業として行っているという話ですが、その進捗状況をお聞かせください。

国交省 大臣官房 審議官:R4年度末現在、全国61の自治体、141地区

国土交通省 石坂 大臣官房 審議官
石坂聡 国交省 大臣官房 審議官
(建設省89年入省、東大工学部卒、56歳)

お答えいたします。密集市街地の整備改善を進めることについては、重要な課題と認識しております。このため、防災安全交付金等を活用しまして、避難路となる道路の整備に加えて、老朽建築の除却、これは空き家の除却も含めますけれども、そういった対策、さらに避難や消防活動の場となる防災広場の整備など、地方公共団体などの取り組みを支援しているところでございます。


令和4年度末現在では、全国で61の自治体、141地区において、こうした取り組みを進めているところでございます。先生ご指摘の神戸市などによる住民と連携した空き地や空き家を活用した防災広場として整備する事業に取り組んでおりますけれども、非常に有効な仕組みでございますので、国としても事例の横展開、取り組みへの支援を行ってまいりたいと考えております。

吉田:自治体に積極的に整備事業の促進を

防災空き地・空き家対策、ダブルのメリットを目指して、今後も自治体に積極的に整備事業の促進を促していただけるようお願いいたします。私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。

雑感(ヨイショ質問…)

吉田とも代氏(維新)が取り上げた高層マンションの防災対策は、首都圏のタワマン住民にとって関心の高いテーマである。ただ、目新しい内容は特にない。

質問内容は与党議員がしそうなヨイショ質問になっている。実効的な政策提言もなければ、鋭い指摘もない。

まるで政策秘書に書いてもらった原稿を棒読みしているかのような雰囲気である。「緊急地震速報」と言うべきところを何度も「緊急事態」と読み間違えるし(上記文章では誤読部分は割愛した)。維新1期議員の質の問題なのか……。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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