港区議会「23年第1回定例会」予算特別委員会(3月8日)で、羽田新ルートに関して、4人の議員の質疑応答があった。
ネット中継録画をもとに、質疑応答(約3千300文字)を可視化しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
やなざわ亜紀 議員(自民)
(自民党、区議3期、元資生堂社員、香川大学法学部卒、41歳)
やなざわ:航空部門以外の、他の省庁にも港区の考えを伝える
まず、羽田空港機能強化について伺います。今定例会の我が会派の代表質問にも取り上げさせていただきましたが、北風の時期で静かな日常が続いておりましたので、暖かくなるにつれてこれから南風が増えるのか、港区上空を飛行する機体の数に、「また、アレが始まるのか」と重く暗い気持ちになってしまう方が多くいらっしゃいます。
国交省は固定回避に向けた第5回目の検討会を開催したようですが、航路の具体的な開示には至っておらず、区民の不安はより深まるものと感じます。「旋回をするのが港区上空であったら」というような、意味のない検討に心配をする声も届いてきており、当初より要請している地方空港の積極的な活用もしっかりと検討すべきであると考えます。
そこで、これまで国交省の航空部門とだけやり取りをしておりましたが、そちらに任せきりにせず、観光は我が国にとっても大切な経済効果を生むものであることから、航空部門以外の、国交省の観光部門や地方活性化については総務省をはじめとする他の省庁にも港区の考えを伝える時期を考えますが、いかがでしょうか。
区長:観光や地域振興を所管する省庁が連携し、(略)検討を進めるよう求めてまいります
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、70歳)
まず、羽田空港機能強化についてです。区はこれまでも国に対して地方空港の更なる活用、海上ルートの活用、今後の航空技術の進展に伴う新たな取り組みなど、羽田空港の飛行経路に係る様々な運用等を検討するよう要請してまいりました。
地方空港の活用により、多くの観光客が訪れることで地域経済が活性化し新たな雇用が生まれるなど、地方の発展につながることが期待できます。今後、国に対し、新飛行ルートの固定化回避に向けては航空部門だけではなく、観光や地域振興を所管する省庁が連携し、地方の発展を視野に入れて検討を進めるよう求めてまいります。
阿部浩子 議員(みなと政策会議)
(立憲民主党、区議5期、元衆議院議員秘書、昭和女子大卒、55歳)
阿部:区民の声を聞くためにアンケート調査を実施
次に、羽田空港新ルートについてです。2020年から羽田空港新ルートになって3年が経とうとしています。
コロナ禍で飛行機の便数は減少したものの、今後は従来の計画通りに増えていくと予想されます。新ルートの問題はこの計画が発表されたから、またみなと政策会議として、常に取り上げてきました。令和4年第2回定例会では区民の皆様の請願が採択され、港区から国土交通省に対し住民説明会を開催されるように要請し実現を求めています。
品川区では来年度、15歳以上の区民約36万人を対象に羽田空港新ルートについてのアンケートを実施するそうです。9,800万円の費用を予算案に盛り込んだとのことです。港区としても、区民の声を聞くためにアンケート調査を実施し、その結果を持って国土交通省に申し入れを行うべきです。
固定化回避検討会は5回にわたって行なっていますが、将来的に都心ルートが海上ルートに戻るのか全く先が見えません。米軍ヘリポート同様、区民の安全安心という観点からも、区として、アンケートなどをはじめとして、固定化回避できる取り組みを行うべきと考えますが、区長のお考えをお聞きいたします。
区長:ご提案のようなアンケート調査を行うことは考えておりません
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、70歳)
次に、羽田空港新ルートの固定化回避についてのお尋ねです。区では日頃から寄せられる騒音や落下物の不安などの区民の声や、昨年度区で行った意見募集でのご意見を全て国に伝えております。
こうした多くの区民の声を踏まえ、区は、新飛行ルートの運用開始当初から一貫して国に対し、海上ルートの活用や地方空港の活用等による飛行ルートの分散化により固定化を回避するよう求めており、今後もこの姿勢は変わるものではありません。
このためご提案のようなアンケート調査を行うことは考えておりませんが、引き続き国に対し、区民の声をしっかりと伝え、新飛行ルートの固定化回避を強く求めてまいります。
池田たけし 議員(公明)
(公明党、区議2期、元医療業界社員、帝京大卒、64歳)
池田:羽田新飛行経路の固定化回避に向けた区の取り組み?
次に、羽田新飛行経路について伺います。羽田空港機能強化は、国際競争力の強化や外国人旅行者の来訪を加速することで地域の創生や日本全体の経済の成長を促進させるなどのため、2020年3月より新飛行経路の運用が開始されて丸3年が経過しました。
新型コロナ感染症の国内外の感染状況も次第に落ち着きを見せ始めており、社会生活にも変化が現れ、日本でもマスクを外すことが個人の判断に委ねられる時期が訪れようとしています。街中では外国人観光客の姿も今までより多く見かけるようになってきており、当然ながら旅客機の発着便数も増便されていると思います。
羽田空港機能強化の飛行ルートの開始により、西麻布で約750m、高輪付近で約600mの高度で着陸態勢に入る旅客機。その航路下に日々暮らす私たち港区民は、騒音や近づく機影などのために空を見上げる回数も増え、航空機からの落下物への不安感は消えることはありません。
私ども公明党は、友党である自民党と地域住民の皆さんの代表とともに固定化回避などについて、国土交通省の担当課との意見交換の場を設けさせていただいております。今後もこのような自由で活発な意見交換の場を継続して持ち、地域住民の声、その想いを直接届けてまいりたいと考えます。
武井区長からも、国土交通省に対し、今後さらに航空技術の革新に伴っての新たな取り組みや他の空港を活用しての飛行ルートの分散化、海上ルートの活用などといった固定化回避のための様々な運用を駆使した具体的な検討を進めていただきたいとの要請も行っていただきました。この要請に対する真摯な検討での努力ある実行が待たれるところです。
現在、羽田新航路の固定化回避に関わる技術的方策検討会において、新飛行経路の固定化回避に向け、最新の技術を活用した飛行方式の検討が行われております。このルートが実際にどこを飛行するのか、そしてその影響はどのようであるのか、などのいち早い情報の提供・説明を区民は待っております。
質問は、地域住民の不安を払拭するため、羽田新飛行経路の固定化回避に向けた区の取り組みについてお伺いいたします。
区長:固定化回避の検討を加速するよう強く要請をしてまいります
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、70歳)
次に、羽田新飛行経路についてのお尋ねです。区には日頃から騒音や落下物など区民から不安の声が寄せられております。区は区議会とともに、これまで国に対して海上ルートの活用、地方空港の活用等による飛行ルートの分散化、落下物対策の強化などの要請を行ってまいりました。
また、独自に騒音測定を行い、その結果を国に示し、さらなる騒音対策や固定化回避の検討などに活用するよう伝えております。
引き続き国に対し、検討会の進捗状況等について区民への丁寧な情報提供を求めるとともに、固定化回避の検討を加速するよう強く要請をしてまいります。
福島宏子 議員(共産)
福島宏子議員(共産党、区議1期、聖徳学園保育士専門学校卒、保育士、56歳)
福島:海上ルートに戻すことを国に強く要請すること
「STOP!!羽田低空飛行について」です。
これまで5回しか開かれていない固定化回避に係る技術的方策検討会での到達点について、「2つの飛行方式についての安全性の評価に取り組んでいる」との答弁でした。急旋回を伴う飛行方式や世界では類を見ない同時進入という、今以上に危険な着陸です。飛行機が飛ぶ空の上の話で、飛行機の下で生活する住民のことなどまったく考えていません。
区民はこの騒音や落下物の危険から一刻も早く回避されたいと願っています。固定化回避ではなく、都心上空、とりわけ港区上空を飛ばない飛行ルートの検討、海上ルートに戻すことを国に強く要請すること。答弁を求めます。
区長:固定化回避に向けた検討を一層加速するよう強く求めてまいります
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、70歳)
次に、羽田低空飛行についてのお尋ねです。区は、羽田新飛行ルートの固定化を回避し区民の不安を解消するため、これまでも国に対し、海上ルートの活用や今後の航空技術の進展に伴う新たな取り組み、地方空港の活用による飛行ルートの分散化などを求めてまいりました。
引き続き固定化回避に向けた検討を一層加速するよう強く求めてまいります。
雑感(生産性の乏しい予定調和型の質疑応答)
各会派とも自らの主張を述べ、区長は役人が作成した原稿を棒読みするだけの、なんとも生産性の乏しい予定調和型の質疑応答であった。
あわせて読みたい