大手不動産会社は広告にどの程度のお金をかけているのか。
大手不動産5社の有価証券報告書(EDINET)に公開されているデータをもとに可視化分析してみた。
※投稿21年9月2日(更新24年9月12日)
売上高、広告宣伝費・率の推移(09年度~)
売上高:三井不動産がダントツ
不動産会社は広告にどの程度のお金をかけているのか。
まずは、大手不動産5社の有価証券報告書から「売上高」と「広告宣伝費」を拾い上げ、広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)を可視化してみる。
過去15年間(09~23年度)の5社の売上高の推移を可視化したのが次図。
三井不動産がダントツで、11年度以降増加し続けて23年度は2.4兆円。
※売上高は、マンション分譲に限らない。
広告宣伝費:東急不動産HD以外、減少傾向
過去15年間(09~23年度)の5社の広告宣伝費の推移を可視化したのが次図。
東急不動産HD以外は、ここ数年減少傾向が見られる。
住友不動産は、20年度以降、それまでの200億円超から5割以上カットされ100億円を下回っているのが目立つ。
※広告宣伝費は、マンション分譲に限らない。
広告宣伝費率:野村不動産HDがダントツだが
過去15年間(09~23年度)の5社の広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)の推移を可視化したのが次図。
野村不動産HDがダントツだが、14・15年度の4.0%をピークに減少傾向が見られる。
「BtoC率」と「広告宣伝費率」の関係
三井不動産は売上高はダントツだが、広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)は5社のうち2番目に低い。同社は、広告宣伝費があまり要しないオフィスビルや商業施設の賃貸事業なども展開しているからだ。
大手不動会社の事業は、マンションの分譲だけに限らない。オフィスや商業施設等の賃貸、ホテルやフィットネスクラブの運営、都市開発事業や海外事業など、広範囲にわたる事業が展開されている。
そこで、各社の事業セグメントも念頭に、さらに詳しく分析してみよう。具体的には各社の事業セグメントのうち、BtoCに該当しそうな事業に着目し、可視化分析することにした。
※BtoC(Business to Consumer)とは、企業(business)が一般消費者(Consumer)を対象に行うビジネス形態のこと。
各社の事業セグメントの内訳(23年度)
23年度の不動産大手5社の事業セグメントをザックリとBtoB(鶯色)とBtoC(オレンジ色)に仕分けてみた(次表)。
※公開された各セグメントのデータには、BtoBとBtoCが多少混在している可能性があるが、ザックリと把握するうえでは良しとした。
売上高・BtoC率の比較(23年度)
上表を元に振り分けたBtoB・BtoC別の売上高と、BtoC率(全売上高に占めるBtoCの割合)を次図に示す。野村不動産HDのBtoC率が頭一つ飛び抜けている(46.8%)。
「BtoC率」と「広告宣伝費率」の関係(23年度)
さらに横軸を「BtoC率」、縦軸を「広告宣伝費率」としてグラフを描いてみた。
BtoC率が高いほど広告宣伝費率が高くなる傾向が読み取れる。顧客に近いビジネスほど広告宣伝費を投下する割合が高くなるということなのだろう。
「BtoC率」「広告宣伝費率」の経年変化(15年度~)
過去9年間(15~23年度)の5社の「BtoC率」「広告宣伝費率」の変化を可視化したのが次図。
両者の相関は低くないことが確認できる(相関係数0.74)。
上図から以下が言えるのではないか。
- 大手不動産会社の広告宣伝費は、売上高の1~4%程度
- BtoC率が高いほど広告宣伝費率が高くなる(顧客に近いビジネスほど広告宣伝費を投下する割合が高くなる)