大手不動産会社は広告にどの程度のお金をかけているのか。
大手不動産5社の有価証券報告書に公開されているデータをもとに可視化分析してみた。
※中堅7社編も参照ください。
広告宣伝費率、野村不動産HDがダントツだが減少傾向
不動産会社は広告にどの程度のお金をかけているのか。
まずは、大手不動産5社の有価証券報告書から「売上高」と「広告宣伝費」を拾い上げ、広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)を可視化してみる。
過去12年間(09~20年度)の5社の売上高の推移を可視化したのが次図。
三井不動産がダントツで、11年度以降増加し続けて20年度は2挑円を突破。
過去12年間(09~20年度)の5社の広告宣伝費の推移を可視化したのが次図。
東急不動産HD(ウェルネス事業やハンズ事業も含まれている)以外は、ここ数年減少傾向が見られる。
※広告宣伝費は、マンション分譲に限らない。
過去12年間(09~20年度)の5社の広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)の推移を可視化したのが次図。
野村不動産HDがダントツだが(3~4%)、15年度をピークに減少傾向が見られる。
野村不動産HD、BtoC率が頭一つ飛び抜けている(20年度)
野村不動産HDだけが広告宣伝費をたくさん掛けているのかというと、必ずしもそうではない。三井不動産や住友不動産、三菱地所などは、広告宣伝費があまり掛からないオフィス賃貸事業なども展開しているからだ。
各社の事業セグメントも念頭に、さらに詳しく分析してみよう。
20年度の不動産大手5社の事業セグメントをザックリとBtoB(鶯色)とBtoC(オレンジ色)に仕分けてみる(次表)。
⇒拡大
上表を元に振り分けたBtoB・BtoC別の売上高と、BtoC率(全売上高に占めるBtoCの割合)を次図に示す。野村不動産HDのBtoC率が頭一つ飛び抜けている(45.3%)。
さらに横軸を「BtoC率」、縦軸を「広告宣伝費率」としてグラフを描いてみた。
BtoC率が高いほど広告宣伝費率が高くなる傾向が読み取れる。顧客に近いビジネスほど広告宣伝費を投下する割合が高くなるということなのだろう。
以上は20年度のデータ。新型コロナの影響がどの程度あったのかも見極めるために、時間軸をもう少し広げて見てみよう。
「BtoC率」「広告宣伝費率」の経年変化を可視化
過去6年間(15~20年度)の5社の「BtoC率」「広告宣伝費率」の変化を可視化したのが次図。
両者の相関は結構高いことが確認できる(相関係数0.75)。
上図から以下が言えるのではないか。
- 大手不動産会社の広告宣伝費は、売上高の1~4%程度。
- BtoC率が高いほど広告宣伝費率が高くなる(顧客に近いビジネスほど広告宣伝費を投下する割合が高くなる)。
- 野村不動産HD
「BtoC率」「広告宣伝費率」ともに減少傾向にある(住宅事業から都市開発事業などに軸足を移しつつある)。 - 住友不動産・三井不動産
他の3社と比べて広告宣伝費を多く使っている(ピンクの破線よりも上に分布している)。 - 三菱地所
5社の中で広告宣伝費の割合が最も小さい(ピンクの破線よりも下に分布している)。広告宣伝費にムダにお金をかけるより中身で勝負している!?
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